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第27話 Under the Weeping Moon
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――ミドリ製薬、特殊総務部。
「セントウダ君、どこにいるんだろう……」
ここしばらく、コウゾウは気が気ではなかった。サトシが研究所から失踪後、足取りが掴めないからである。
「捜索命令くらい出ても、いい筈なんだが……」
サトシは「ミドリ製薬の企業秘密そのもの」だ。サトシのことが世間に知れたら、いくらミドリ製薬でもタダではすまないだろう。だから一刻も早く、居場所を突き止めないといけないはずだが。
しかし、特殊総務部はここに来て暇を持て余している。この点が、なによりも不可解であった。
「まぁ、居場所の察しはつくけど……」
コウゾウは見当がついていた。捜索命令が出ないのは、捜索命令が「出せない」のだということも。
「居場所といえば、キノシタ君もどこにいるんだろう……」
アンリはサトシを研究所から逃がしたというので、謹慎処分を受けていた。ただコウゾウは「謹慎処分を下した」ということしか聞いていない。その間は、連絡を取ることさえ禁止されている。
「部長って言っても、名ばかりなんだよなぁ。だって、ここ特総のこと、何も決められないし……。考えてもしょうがない、今日は仕事があるぞ!」
コウゾウは気を取り直し、書類の整理を始める。
「ん? なんだこれ」
書類の中に、茶封筒が紛れ込んでいた。茶封筒には、何も書かれていないが、封がしてある。誰かが、投函し忘れたものだろうか。
「今日日、やり取りはEメール使うよね……開けよう! 怪しい手紙をチェックするのも特殊総務部の仕事だ! 誰か宛の手紙でも新しい封筒に入れればいいし!」
コウゾウは自分に言い聞かせたあと、封を切る。
封筒には、手紙が一枚入っていた。
『研究所で起こった出来事でお話があります。『オニキス』で会いましょう。よろしければ、お手紙をください。連絡先は、改めて』
「これは一体……」
差し出人は不明だ。だが、差し出人は、まるでこっちの事情を知っているかのようだ。そもそも、研究所内の出来事は当然、完全秘密だ。なのに、何故知っている?
「……もしかして、俺宛?」
コウゾウがそう推測したのは、落ち合う場所に『オニキス』が指定されているからだ。『オニキス』は以前、サトシが若頭であるオグマ=ヨウヘイを始末した場所ではないか。
「火鳥会の人達、俺に用があるのかなぁ。でも、内情を知ってるとは思えないんだけど」
『オニキス』は火鳥会のシマである。……罠か? コウゾウは唸った。
「……アンドウ=ケンジ、ねぇ」
手紙を読み進めると、差し出人の名前があった。投函先の住所もある。
アンドウ=ケンジ。彼はジャーナリストである。なんでもミドリ製薬の悪事を暴こうとしているらしい。
コウゾウは、この人物に心当たりがあった。
「確か、週刊誌で見たことあるような気がするな。それにしても、よりによって俺とコンタクトを取ろうとするなんてね。命知らずなのか、それとも……」
やはり、罠か。けれど、同時に興味が湧いてきた。
研究所のことを知っているのであれば、裏で暗躍する『特殊総務部』のことも知らないはずはない。だからこそ、特総の中心人物である自分とコンタクトを取ろうとしたのだろう。
「よーし『オニキス』に行ってみるか。なんか言われたら『火鳥会の動向を探っているんです』って返せばいいし」
コウゾウは、アンドウ=ケンジに会うことに決めた。
約束の日時になったので、コウゾウは『オニキス』へと向かった。営業時間ではあったが、開店したばかりでもある。そのため、空には薄明が見える。
「にしても、あんな事件があったってのに、何事もなかったかのように営業するとは。たくましいというかなんというか」
コウゾウは看板を見ながら、感心するように呟く。
「お待たせしました。フジキ=コウジさん、ですね?」
フジキ=コウジとは、コウゾウの偽名だ。
ただでさえミドリ製薬は闇が深いのだ。挙句、評判を落とすような記事を書いているジャーナリストに会っていることが知れたら、タダではすまないだろう。用心のために、あえて偽名を使っているのだ。
「えぇ、そうです。あなたがアンドウ=ケンジさんですか?」
「はい。初めまして」
アンドウ=ケンジは中肉中背で大人しそうだ。とても、巨悪に立ち向かうジャーナリストに見えない。それがコウゾウの第一印象であった。
「立ち話もなんです。中に入りましょうか」
コウゾウがそう言うと、ケンジは「そうですね」と返す。二人は店内に入った。
店に入ると、すぐにカウンター席に案内される。客の姿はなく、バーテンダーがグラスを拭いていた。
「こちらへどうぞ」
コウゾウは案内されるがまま、カウンターに座る。
「ところで、ここで最近、事件があったらしいんですよ」
コウゾウは隣に腰かけたケンジに、こんな話を降った。
「そうみたいですね。なんでも、火鳥会の若頭が亡くなったとか」
「そこまで存じているんですか」
「ええ。ここが火鳥会のシマだということも」
ケンジは微笑みながら答える。
なるほど。そこまで調べがついているとは。さすがジャーナリストと言ったところか。
「でも、火鳥会って武闘派だという話ですよ。危ないんじゃないですか」
「ミドリ製薬ってクリーンな会社じゃないですか。そんなところが、わざわざ暴力団と関わるとは思えないんですよね」
「はははは」
「ミドリ製薬はクリーンな会社」と聞いて、コウゾウは苦笑してしまう。だが、用がないときは関わらないというのは確かだ。
だから、あえて火鳥会のシマを選んだということか。こいつは只者じゃないな。コウゾウは身が引き締まる思いがした。
「ところで、お話があるんですよね。まさか、わざわざ世間話をするために呼んだわけではないでしょうし」
「お話があるのは、フジキさんの方ですよね」
ケンジは微笑んでいたが、視線は鋭かった。それを受けて、コウゾウは真顔になる。
「……セントウダ=サトシは、どこにいる?」
「セントウダさん、ですか。ここだけの話、伊原家の元にいるみたいです」
「ああ、やっぱり」
コウゾウは合点した。
「存じてましたか」
ケンジは意外だ、と言わんばかりの反応を示した。
「そんな気はしてたんだよね。なんでかは聞かないでくれるかな。それにしても、伊原家か……」
伊原家とは、戦後の混乱期に多くの事業を手掛けて財を成したとされる。だが、その素性を知っているものは殆どいない。表向きには不動産業や金融業を営んでいるとされているが、後暗い連中とも深い繋がりがあるともいう。
「伊原家って、政界にも影響力があるとかなんとかで、『闇の支配者』って言われてるよね。もっとも、闇を暴こうとした人間は消されたって話だけど……」
そんな伊原家にサトシがいるのだとしたら、ミドリ製薬といえども手が出せない。だから捜索命令が出されなかったのだ。
「これっていうと、俺らの預かり知らないところで日本の闇がシマ争いしてるってことかな。とんでもない事に巻き込まれたね、セントウダ君」
コウゾウは独り言のように呟く。
「ところでさ、どこで手に入れたの、この情報」
これ受けて、ケンジはこう返す。
「ある情報筋です。最も伊原家に近いとされています」
「それ、信用出来る?」
「はい」
ケンジは確信を持って答えた。
「わかりました」
コウゾウはこれ以上追求しないことにした。伊原家のことは、根掘り葉掘り聞かない方がいいだろうと判断したからである。
「今日はどうも、ありがとうございました」
コウゾウは帰ろうと、席から立ち上がった。
「お話は、以上でよろしいのですか?」
ケンジはコウゾウを呼び止める。
「セントウダ君は無事だということがわかったからね。本当に、どうも……」
コウゾウはしばし、その場に立ち尽くす。しばらくして、口を開いた。
「セントウダ君の連絡先、わかる?」
***
ケンジに改めて礼を言ったあと、コウゾウは一人、『オニキス』を後にする。
「セントウダ君の安否がわかってなによりだ。おまけに、新しい連絡先までくれたし……さて、どうしたものか」
コウゾウはこんなことを考えていた――。
――研究所にて、研究員の「死亡事故」があってから二ヶ月後のことである。サトシは出動要請が出ている時以外、研究所から出られなくなっていた。
「部長。メモ帳とペン、ありますか?」
サトシはコウゾウに向かって、手を差し出す。
「持ってないの?」
「筆記用具って先端が尖ってますからね」
先端が尖っているから、持たせられないということか。書くものさえ持たせてくれないとは、死刑囚よりも酷いのではないか。そんな考えがコウゾウの頭を過ぎった。
コウゾウはサトシの顔を見る。サトシは笑顔だった。
「わかったよ。これでいいかな」
コウゾウは懐からペンとメモ帳を取り出し、サトシに渡す。
「ありがとうございます」
サトシはコウゾウから受け取るなり、ペンでメモ帳になにかを書き出した。
しばらくしたあと、サトシは礼を言いながら、コウゾウにペンとメモ帳を返した。
「もういいの?」
「はい」
サトシは相変わらず、笑顔だった。
――その日の仕事が終わると、サトシは研究所に戻された。
その姿を見送ると、コウゾウはメモ帳を開く。そこには、こう書いてあった。
『一条勇司研究員を殺しました』
コウゾウはメモをじっと見ていた。今日のサトシは笑顔だった。その笑顔からは想像もつかないような文言であった。
詳細を書いていないのは、書く時間がないからか。しかし、それだけなのだろうか? 書かないのではない、書けないのではないだろうか――。
――コウゾウは、懐からメモを取り出し、サトシが書き残したものを見ていた。
「セントウダ君。俺は頼りないけど、これでも上司だからね。これ以上、君の苦しんでる姿は見たくないよ」
コウゾウは思案しながら、帰路に着いた。
「セントウダ君、どこにいるんだろう……」
ここしばらく、コウゾウは気が気ではなかった。サトシが研究所から失踪後、足取りが掴めないからである。
「捜索命令くらい出ても、いい筈なんだが……」
サトシは「ミドリ製薬の企業秘密そのもの」だ。サトシのことが世間に知れたら、いくらミドリ製薬でもタダではすまないだろう。だから一刻も早く、居場所を突き止めないといけないはずだが。
しかし、特殊総務部はここに来て暇を持て余している。この点が、なによりも不可解であった。
「まぁ、居場所の察しはつくけど……」
コウゾウは見当がついていた。捜索命令が出ないのは、捜索命令が「出せない」のだということも。
「居場所といえば、キノシタ君もどこにいるんだろう……」
アンリはサトシを研究所から逃がしたというので、謹慎処分を受けていた。ただコウゾウは「謹慎処分を下した」ということしか聞いていない。その間は、連絡を取ることさえ禁止されている。
「部長って言っても、名ばかりなんだよなぁ。だって、ここ特総のこと、何も決められないし……。考えてもしょうがない、今日は仕事があるぞ!」
コウゾウは気を取り直し、書類の整理を始める。
「ん? なんだこれ」
書類の中に、茶封筒が紛れ込んでいた。茶封筒には、何も書かれていないが、封がしてある。誰かが、投函し忘れたものだろうか。
「今日日、やり取りはEメール使うよね……開けよう! 怪しい手紙をチェックするのも特殊総務部の仕事だ! 誰か宛の手紙でも新しい封筒に入れればいいし!」
コウゾウは自分に言い聞かせたあと、封を切る。
封筒には、手紙が一枚入っていた。
『研究所で起こった出来事でお話があります。『オニキス』で会いましょう。よろしければ、お手紙をください。連絡先は、改めて』
「これは一体……」
差し出人は不明だ。だが、差し出人は、まるでこっちの事情を知っているかのようだ。そもそも、研究所内の出来事は当然、完全秘密だ。なのに、何故知っている?
「……もしかして、俺宛?」
コウゾウがそう推測したのは、落ち合う場所に『オニキス』が指定されているからだ。『オニキス』は以前、サトシが若頭であるオグマ=ヨウヘイを始末した場所ではないか。
「火鳥会の人達、俺に用があるのかなぁ。でも、内情を知ってるとは思えないんだけど」
『オニキス』は火鳥会のシマである。……罠か? コウゾウは唸った。
「……アンドウ=ケンジ、ねぇ」
手紙を読み進めると、差し出人の名前があった。投函先の住所もある。
アンドウ=ケンジ。彼はジャーナリストである。なんでもミドリ製薬の悪事を暴こうとしているらしい。
コウゾウは、この人物に心当たりがあった。
「確か、週刊誌で見たことあるような気がするな。それにしても、よりによって俺とコンタクトを取ろうとするなんてね。命知らずなのか、それとも……」
やはり、罠か。けれど、同時に興味が湧いてきた。
研究所のことを知っているのであれば、裏で暗躍する『特殊総務部』のことも知らないはずはない。だからこそ、特総の中心人物である自分とコンタクトを取ろうとしたのだろう。
「よーし『オニキス』に行ってみるか。なんか言われたら『火鳥会の動向を探っているんです』って返せばいいし」
コウゾウは、アンドウ=ケンジに会うことに決めた。
約束の日時になったので、コウゾウは『オニキス』へと向かった。営業時間ではあったが、開店したばかりでもある。そのため、空には薄明が見える。
「にしても、あんな事件があったってのに、何事もなかったかのように営業するとは。たくましいというかなんというか」
コウゾウは看板を見ながら、感心するように呟く。
「お待たせしました。フジキ=コウジさん、ですね?」
フジキ=コウジとは、コウゾウの偽名だ。
ただでさえミドリ製薬は闇が深いのだ。挙句、評判を落とすような記事を書いているジャーナリストに会っていることが知れたら、タダではすまないだろう。用心のために、あえて偽名を使っているのだ。
「えぇ、そうです。あなたがアンドウ=ケンジさんですか?」
「はい。初めまして」
アンドウ=ケンジは中肉中背で大人しそうだ。とても、巨悪に立ち向かうジャーナリストに見えない。それがコウゾウの第一印象であった。
「立ち話もなんです。中に入りましょうか」
コウゾウがそう言うと、ケンジは「そうですね」と返す。二人は店内に入った。
店に入ると、すぐにカウンター席に案内される。客の姿はなく、バーテンダーがグラスを拭いていた。
「こちらへどうぞ」
コウゾウは案内されるがまま、カウンターに座る。
「ところで、ここで最近、事件があったらしいんですよ」
コウゾウは隣に腰かけたケンジに、こんな話を降った。
「そうみたいですね。なんでも、火鳥会の若頭が亡くなったとか」
「そこまで存じているんですか」
「ええ。ここが火鳥会のシマだということも」
ケンジは微笑みながら答える。
なるほど。そこまで調べがついているとは。さすがジャーナリストと言ったところか。
「でも、火鳥会って武闘派だという話ですよ。危ないんじゃないですか」
「ミドリ製薬ってクリーンな会社じゃないですか。そんなところが、わざわざ暴力団と関わるとは思えないんですよね」
「はははは」
「ミドリ製薬はクリーンな会社」と聞いて、コウゾウは苦笑してしまう。だが、用がないときは関わらないというのは確かだ。
だから、あえて火鳥会のシマを選んだということか。こいつは只者じゃないな。コウゾウは身が引き締まる思いがした。
「ところで、お話があるんですよね。まさか、わざわざ世間話をするために呼んだわけではないでしょうし」
「お話があるのは、フジキさんの方ですよね」
ケンジは微笑んでいたが、視線は鋭かった。それを受けて、コウゾウは真顔になる。
「……セントウダ=サトシは、どこにいる?」
「セントウダさん、ですか。ここだけの話、伊原家の元にいるみたいです」
「ああ、やっぱり」
コウゾウは合点した。
「存じてましたか」
ケンジは意外だ、と言わんばかりの反応を示した。
「そんな気はしてたんだよね。なんでかは聞かないでくれるかな。それにしても、伊原家か……」
伊原家とは、戦後の混乱期に多くの事業を手掛けて財を成したとされる。だが、その素性を知っているものは殆どいない。表向きには不動産業や金融業を営んでいるとされているが、後暗い連中とも深い繋がりがあるともいう。
「伊原家って、政界にも影響力があるとかなんとかで、『闇の支配者』って言われてるよね。もっとも、闇を暴こうとした人間は消されたって話だけど……」
そんな伊原家にサトシがいるのだとしたら、ミドリ製薬といえども手が出せない。だから捜索命令が出されなかったのだ。
「これっていうと、俺らの預かり知らないところで日本の闇がシマ争いしてるってことかな。とんでもない事に巻き込まれたね、セントウダ君」
コウゾウは独り言のように呟く。
「ところでさ、どこで手に入れたの、この情報」
これ受けて、ケンジはこう返す。
「ある情報筋です。最も伊原家に近いとされています」
「それ、信用出来る?」
「はい」
ケンジは確信を持って答えた。
「わかりました」
コウゾウはこれ以上追求しないことにした。伊原家のことは、根掘り葉掘り聞かない方がいいだろうと判断したからである。
「今日はどうも、ありがとうございました」
コウゾウは帰ろうと、席から立ち上がった。
「お話は、以上でよろしいのですか?」
ケンジはコウゾウを呼び止める。
「セントウダ君は無事だということがわかったからね。本当に、どうも……」
コウゾウはしばし、その場に立ち尽くす。しばらくして、口を開いた。
「セントウダ君の連絡先、わかる?」
***
ケンジに改めて礼を言ったあと、コウゾウは一人、『オニキス』を後にする。
「セントウダ君の安否がわかってなによりだ。おまけに、新しい連絡先までくれたし……さて、どうしたものか」
コウゾウはこんなことを考えていた――。
――研究所にて、研究員の「死亡事故」があってから二ヶ月後のことである。サトシは出動要請が出ている時以外、研究所から出られなくなっていた。
「部長。メモ帳とペン、ありますか?」
サトシはコウゾウに向かって、手を差し出す。
「持ってないの?」
「筆記用具って先端が尖ってますからね」
先端が尖っているから、持たせられないということか。書くものさえ持たせてくれないとは、死刑囚よりも酷いのではないか。そんな考えがコウゾウの頭を過ぎった。
コウゾウはサトシの顔を見る。サトシは笑顔だった。
「わかったよ。これでいいかな」
コウゾウは懐からペンとメモ帳を取り出し、サトシに渡す。
「ありがとうございます」
サトシはコウゾウから受け取るなり、ペンでメモ帳になにかを書き出した。
しばらくしたあと、サトシは礼を言いながら、コウゾウにペンとメモ帳を返した。
「もういいの?」
「はい」
サトシは相変わらず、笑顔だった。
――その日の仕事が終わると、サトシは研究所に戻された。
その姿を見送ると、コウゾウはメモ帳を開く。そこには、こう書いてあった。
『一条勇司研究員を殺しました』
コウゾウはメモをじっと見ていた。今日のサトシは笑顔だった。その笑顔からは想像もつかないような文言であった。
詳細を書いていないのは、書く時間がないからか。しかし、それだけなのだろうか? 書かないのではない、書けないのではないだろうか――。
――コウゾウは、懐からメモを取り出し、サトシが書き残したものを見ていた。
「セントウダ君。俺は頼りないけど、これでも上司だからね。これ以上、君の苦しんでる姿は見たくないよ」
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