ポータルズ -最弱魔法を育てようー

空知音

文字の大きさ
276 / 607
第七章 天竜国編

第29話 祭りの後で

しおりを挟む

 真竜祭の後、シロー達は、竜舞台脇の建物内にある貴賓室へ通された。

 天竜達とは別室だ。 
 そこで、豪華なご馳走が振舞われた。
 俺と加藤が以前食べた、メードと言う貝も出てきた。貝殻から、貝柱を切りとり、ナルとメルの皿に置いてやる。

「しこしこして、凄く美味しい」
「じゅわーって、お汁が出てくるね」

 二人は目を輝かせている。メードは、やはり焼きたての方が美味しいから、今度二人をあの店に連れていってやろう。
 料理は大量にあり、俺達だけでは食べきれそうになかった。点収納に入れ、ネアさん達へのお土産にする。
 もちろん、「付与 時間」を使い、点収納内の時間が遅く流れるようにしてある。

 食事の後、加藤、ナル、メル、イオは瞬間移動でイオの家まで送った。
 残った俺、ミミ、ポルは、大会議室に招かれている。
 部屋の中には、十人の天竜と竜人の重鎮が集められている。一段高くなった所に天竜が座り、なぜかその横に俺達が座らされる。
 俺達の前には、四種族別に五、六人ずつの竜人が座っている。

 黒竜族、青竜族の姿もあるが、全て俺が初めて見る顔である。
 黒竜族は、このメンバーだけ俺の点魔法設定をオフにしてある。そうしとかないと彼らは俺達から30m以内に入ると気絶しちゃうからね。

 ジェラードが司会となって始まった会議では、まず、天竜国「光る森」の詳しい現状報告と大まかな役割分担がなされた。
 その後、各分担ごとに別室で細部を打ちあわせることになっている。
 天竜が十人もいるのは、「枯れクズ」の除去に詳しい者、その運搬に詳しい者、水晶灯作成に詳しい者、それぞれの専門家が来ているからだ。

 大会議室から各部屋に移る段になると、ミミとポルの所に、各種族の竜人が殺到した。

「竜王様のご様子をお聞かせください」
「真竜様はどれほどにご成長なされたのか?」

 まあ、とにかくすごい勢いだ。しかも、みんな平伏しているから、ミミとポルは戸惑うばかりだ。
 しかし、なぜか俺の近くには誰も寄ってこない。
 むしろ、こちらに怯えているようにも見える。
 どうなってるんだこれは?
 ラズローがいたのでその疑問をぶつけてみる。

「ああ、天竜様から加護をもらった方までは、彼らも理解できるのですが、竜王様と対等の友人となると、ただ畏怖の念があるだけなのでしょう」

 あー、これってまずいよね。くつろげない方向に事態が進んでるぞ。

『(/・ω・)/ だから~、そこまでしてくつろぐ必要はないのですよー』

 だけどねえ、点ちゃん……まあ、ここは何を言っても突っこまれそうなので黙っておきますがね。

 「会議」と名のつくものが自分の天敵だと確信する史郎だった。

-----------------------------------------------------------------------

 次の日、史郎はジェラードから渡された封書を持ち、青竜族の役所を訪れていた。

 封書の中身が何なのかは知らない。ポンポコ商会に関係あるものだから、とにかく持っていけと言うことだった。

 以前もいた門番が、俺の姿を見るなり逃げだした。
 おいおい、それはないだろう。あなたは俺の「臭撃」に遭ってないじゃないか。

 役人が机を並べた大ホールに入っていくと、その場の空気が凍りついた。というより、皆の動きが本当にピタッと止まってしまった。
 水が滴るような音がしたので、そちらを見ると、椅子に座った青竜族の女性が泣きそうな顔をしている。
椅子の下には、広がりつつある液体が……。
 それってひどくない? 俺の姿を見ただけでお漏らしするってどうよ。

「ほう! 
 天竜祭はそのようであったか」

 声高に会話する青竜族の男性が二人、階段を降りてくる。その片方は、俺に臭い攻撃された、例のハゲおじさんだった。

「お前達、一体どうしたのじゃ……」

 そこで俺の姿に気づいたらしい。ハゲおじさんは、まっ青になると階段の下に座りこんでしまった。頭を抱え、「助けてくれ、助けてくれ」とつぶやいている。
 このままでは、らちがあかないから、点で吊りあげ、俺の前まで来てもらう。

「ひ、ひーっ」

 おいおい、そこまで怖がらなくても。

『(・ω・)ノ ご主人様ー』

 何だい、点ちゃん。

『(・ω・) この人も、竜闘に来てたから、それでじゃないの?』

 ああ、「臭撃」だけで怖がってたんじゃなかったのか。しかし、点ちゃん、あれだけの観衆の全てを分析してるなんて本当に凄いな。
 そのとき、入り口から、バタバタと足音がした。振りむくと、昨日の会議で紹介された、新しい青竜族の長だ。彼は、俺の前にさっと平伏した。

「シロー殿、この者どもが、大変な失礼をいたしました。
 ジェラード殿から、今日いらっしゃるとうかがっております。
 どうぞこちらへ」

 貴賓室に通すつもりなのだろう。俺は、その前にくつろぎを邪魔するものを撃破することにした。

「竜王様の名において命ずる」

 重々しい声でそう言い、すこしタメをいれる。もちろん、最大の効果が出るのを狙ってのことだ。

「以後、俺の前で平伏、お漏らしを禁ずる」

 できるだけ重々しく言っておいた。青竜の長が慌てて立ちあがる。俺は、ハゲおじさんを点から解放し、長の後をついていった。
 以前に通されたのとは別の貴賓室に案内される。ソファーに落ちついた俺に、長が話しかける。

「あの男をお許しください。
 彼はこの役所の長官で、シューダという男です。
 シロー殿が最初に訪れた後、なぜか彼だけ体から臭いが取れず、いつも鼻を摘まんでおりました。 
 そのため『鼻つまみ者』というあだ名まで付いてしまったのです」

 俺は、シューダという名前と『鼻つまみ者』というあだ名に、笑いをこらえるのに必死だった。なぜか、肩に乗っている白猫が、俺の頭をぺしぺし肉球で叩いている。

「ところで、ジェラード殿からは、書類をお持ちとうかがっておりますが」

「ああ、これですよ」

 俺が渡した封書を開け、それを読んだ長は、一つ頷いた。

「承りました。
 明日から取りかからせて頂きます」

 何に取りかかるのか聞くべきなのだろうが、役所に来てからのあれこれで、全てが面倒くさくなった俺は、そのままにしておいた。
 俺が長と二人で貴賓室から出てくると、机に着いていた人々が、一斉に逃げだした。
 どういうこと?

「平伏できないとなると、彼らにはああするしかなかったのでしょう」

 ああ……これではくつろぎを取りもどせないではないか。

 史郎は、遠ざかるくつろぎに、暗澹たる気持ちになるのだった。
しおりを挟む
感想 6

あなたにおすすめの小説

私の息子を“愛人の子の下”にすると言った夫へ──その瞬間、正妻の役目は終わりました

放浪人
恋愛
政略結婚で伯爵家に嫁いだ侯爵令嬢リディアは、愛のない夫婦関係を「正妻の務め」と割り切り、赤字だらけの領地を立て直してきた。帳簿を整え、税の徴収を正し、交易路を広げ、収穫が不安定な年には備蓄を回す――伯爵家の体裁を保ってきたのは、いつも彼女の実務だった。 だがある日、夫オスヴァルドが屋敷に連れ帰ったのは“幼馴染”の女とその息子。 「彼女は可哀想なんだ」 「この子を跡取りにする」 そして人前で、平然と言い放つ。 ――「君の息子は、愛人の子の“下”で学べばいい」 その瞬間、リディアの中で何かが静かに終わった。怒鳴らない。泣かない。微笑みすら崩さない。 「承知しました。では――正妻の役目は終わりましたね」

莫大な遺産を相続したら異世界でスローライフを楽しむ

翔千
ファンタジー
小鳥遊 紅音は働く28歳OL 十八歳の時に両親を事故で亡くし、引き取り手がなく天涯孤独に。 高校卒業後就職し、仕事に明け暮れる日々。 そんなある日、1人の弁護士が紅音の元を訪ねて来た。 要件は、紅音の母方の曾祖叔父が亡くなったと言うものだった。 曾祖叔父は若い頃に単身外国で会社を立ち上げ生涯独身を貫いき、血縁者が紅音だけだと知り、曾祖叔父の遺産を一部を紅音に譲ると遺言を遺した。 その額なんと、50億円。 あまりの巨額に驚くがなんとか手続きを終える事が出来たが、巨額な遺産の事を何処からか聞きつけ、金の無心に来る輩が次々に紅音の元を訪れ、疲弊した紅音は、誰も知らない土地で一人暮らしをすると決意。 だが、引っ越しを決めた直後、突然、異世界に召喚されてしまった。 だが、持っていた遺産はそのまま異世界でも使えたので、遺産を使って、スローライフを楽しむことにしました。

【完結】スーパーの店長・結城偉介 〜異世界でスーパーの売れ残りを在庫処分〜

かの
ファンタジー
 世界一周旅行を夢見てコツコツ貯金してきたスーパーの店長、結城偉介32歳。  スーパーのバックヤードで、うたた寝をしていた偉介は、何故か異世界に転移してしまう。  偉介が転移したのは、スーパーでバイトするハル君こと、青柳ハル26歳が書いたファンタジー小説の世界の中。  スーパーの過剰商品(売れ残り)を捌きながら、微妙にズレた世界線で、偉介の異世界一周旅行が始まる!  冒険者じゃない! 勇者じゃない! 俺は商人だーーー! だからハル君、お願い! 俺を戦わせないでください!

猫好きのぼっちおじさん、招かれた異世界で気ままに【亜空間倉庫】で移動販売を始める

遥風 かずら
ファンタジー
【HOTランキング1位作品(9月2週目)】 猫好きを公言する独身おじさん麦山湯治(49)は商売で使っているキッチンカーを車検に出し、常連カードの更新も兼ねていつもの猫カフェに来ていた。猫カフェの一番人気かつ美人トラ猫のコムギに特に好かれており、湯治が声をかけなくても、自発的に膝に乗ってきては抱っこを要求されるほどの猫好き上級者でもあった。 そんないつものもふもふタイム中、スタッフに信頼されている湯治は他の客がいないこともあって、数分ほど猫たちの見守りを頼まれる。二つ返事で猫たちに温かい眼差しを向ける湯治。そんな時、コムギに手招きをされた湯治は細長い廊下をついて歩く。おかしいと感じながら延々と続く長い廊下を進んだ湯治だったが、コムギが突然湯治の顔をめがけて引き返してくる。怒ることのない湯治がコムギを顔から離して目を開けると、そこは猫カフェではなくのどかな厩舎の中。 まるで招かれるように異世界に降り立った湯治は、好きな猫と一緒に生きることを目指して外に向かうのだった。

転移特典としてゲットしたチートな箱庭で現代技術アリのスローライフをしていたら訳アリの女性たちが迷い込んできました。

山椒
ファンタジー
そのコンビニにいた人たち全員が異世界転移された。 異世界転移する前に神に世界を救うために呼んだと言われ特典のようなものを決めるように言われた。 その中の一人であるフリーターの優斗は異世界に行くのは納得しても世界を救う気などなくまったりと過ごすつもりだった。 攻撃、防御、速度、魔法、特殊の五項目に割り振るためのポイントは一億ポイントあったが、特殊に八割割り振り、魔法に二割割り振ったことでチートな箱庭をゲットする。 そのチートな箱庭は優斗が思った通りにできるチートな箱庭だった。 前の世界でやっている番組が見れるテレビが出せたり、両親に電話できるスマホを出せたりなど異世界にいることを嘲笑っているようであった。 そんなチートな箱庭でまったりと過ごしていれば迷い込んでくる女性たちがいた。 偽物の聖女が現れたせいで追放された本物の聖女やら国を乗っ取られて追放されたサキュバスの王女など。 チートな箱庭で作った現代技術たちを前に、女性たちは現代技術にどっぷりとはまっていく。

バーンズ伯爵家の内政改革 ~10歳で目覚めた長男、前世知識で領地を最適化します

namisan
ファンタジー
バーンズ伯爵家の長男マイルズは、完璧な容姿と神童と噂される知性を持っていた。だが彼には、誰にも言えない秘密があった。――前世が日本の「医師」だったという記憶だ。 マイルズが10歳となった「洗礼式」の日。 その儀式の最中、領地で謎の疫病が発生したとの凶報が届く。 「呪いだ」「悪霊の仕業だ」と混乱する大人たち。 しかしマイルズだけは、元医師の知識から即座に「病」の正体と、放置すれば領地を崩壊させる「災害」であることを看破していた。 「父上、お待ちください。それは呪いではありませぬ。……対処法がわかります」 公衆衛生の確立を皮切りに、マイルズは領地に潜む様々な「病巣」――非効率な農業、停滞する経済、旧態依然としたインフラ――に気づいていく。 前世の知識を総動員し、10歳の少年が領地を豊かに変えていく。 これは、一人の転生貴族が挑む、本格・異世界領地改革(内政)ファンタジー。

異世界に転移したら、孤児院でごはん係になりました

雪月夜狐
ファンタジー
ある日突然、異世界に転移してしまったユウ。 気がつけば、そこは辺境にある小さな孤児院だった。 剣も魔法も使えないユウにできるのは、 子供たちのごはんを作り、洗濯をして、寝かしつけをすることだけ。 ……のはずが、なぜか料理や家事といった 日常のことだけが、やたらとうまくいく。 無口な男の子、甘えん坊の女の子、元気いっぱいな年長組。 個性豊かな子供たちに囲まれて、 ユウは孤児院の「ごはん係」として、毎日を過ごしていく。 やがて、かつてこの孤児院で育った冒険者や商人たちも顔を出し、 孤児院は少しずつ、人が集まる場所になっていく。 戦わない、争わない。 ただ、ごはんを作って、今日をちゃんと暮らすだけ。 ほんわか天然な世話係と子供たちの日常を描く、 やさしい異世界孤児院ファンタジー。

優の異世界ごはん日記

風待 結
ファンタジー
月森優はちょっと料理が得意な普通の高校生。 ある日、帰り道で謎の光に包まれて見知らぬ森に転移してしまう。 未知の世界で飢えと恐怖に直面した優は、弓使いの少女・リナと出会う。 彼女の導きで村へ向かう道中、優は「料理のスキル」がこの世界でも通用すると気づく。 モンスターの肉や珍しい食材を使い、異世界で新たな居場所を作る冒険が始まる。

処理中です...