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第八章 地球訪問編
第9話 秘密公開作戦
しおりを挟む加藤、畑山、舞子、俺の秘密公開作戦が始まった。
まず、どうやって公開するか、その案を各自で出しあうことにした。
小人数に向けて公開したくらいでは、おそらく妄想として片づけられるだけだろう。
できるだけ多くの人に、しかも十分なインパクトをもって知らせなければならない。
かつて、俺は似たような状況に陥った経験がある。
学園都市アルカデミアにおいてだ。その時使った方法も使えなくはないが、できるなら、既存のメディアで済ませたい。
アルカデミア方式は、最後の手段に取っておくことにする。
約束の刻限に三人から念話が入る。念話ミーティングだ。
『公開のいい手段が見つかったかしら』
打ちあわせしなくても、司会役は畑山さんに決まっている。
『私は、あまりいい方法が見つからなかったんだけど……』
最初は舞子の意見だ。
『父の知人がラジオの生放送をやっているから、それに申しこんではどうかってことになったの』
『だけど舞子、ラジオの生放送だと、話したことがそのまま流れるのはいいけど、リスナーから放送事故だって苦情がこないか?』
『史郎君の言うとおりなんだよね。
この方法は、何をどう話すかが難しそうなの』
『舞子、気にすることないわよ。
まだ意見を出しあう段階だから』
『ありがとう』
『次は、私の意見ね』
『で、畑山さんの意見は?』
『朝のニュース番組で、天気予報のお姉さんが、屋外で予報を行うコーナーがあってね』
『あっ、俺、その番組、今朝見たよ。
えーと、「教えて、ドキドキお天気さん」でしょ』
『おしいわね、加藤。
「教えてあげる、ドキドキお天気さん」よ』
どうなってるのかね、その番組は。
俺よりネーミングセンス無いんじゃないか?
『その番組のスタッフに、つてがあってね』
『伝手って?』
『若い衆の弟がADやってるんだって。
だから、その撮影場所が分かるらしいわ』
『それが分かったとしてどうするの?』
『その映像に映るように、ボーが魔法で作った飛行機でも飛ばすのはどうかってこと』
『でも、あのコーナー、すごく時間短いよ。
タイミングよく映れるかな?』
『そういうあんたは、どうなのよ、加藤』
『まあ、俺のも麗子さんのと大差ないんだけど……』
『もったいぶらないで、早く教えなさいよ』
『〇〇放送って、関西限定の放送局があるんだけど』
『そんな放送局、聞いたことないわね』
『まあ、全国放送ではないからね。
とにかく、そこの番組に、「挑戦!となりの太郎君」ってのがあってね』
おいおい、その番組もネーミングセンスおかしくないか?
『どんな番組なの?』
『よくぞ聞いてくれました、麗子さん。
何かね、視聴者の依頼を実現する番組なんだって。
それに依頼を出そうかと思うんだ』
『依頼ったって、そんなにすぐにすぐ採用される訳じゃないだろう』
『ふふふ、驚くなよ、ボー。
ヒロ姉の先輩が番組の関係者なんだ』
『だけど、それで依頼が採用されるかな』
『聞いて驚け!
なんと先輩はプロデューサーなんだぜ』
えっ? 昔からやたらと顔が広い人だったが、ヒロ姉の人脈すごいな。
『オッケー。
じゃ、仮に依頼が採用されるとして、どんな依頼をするのよ』
『今、考えてるのは、「2メートルジャンプしたい」ってやつ』
『2メートルなんて小学生でも飛べるでしょ』
『ああ、言いまちがえた。
2メートル垂直飛びだ』
『そんなの無理に決まってるじゃない』
『だから、周りの人が、手で上に押しあげて依頼を達成するんだよ』
『それってインチキじゃん』
『いや、依頼はとにかく「2メートルジャンプしたい」だから、それでいいの』
『なんか納得できないけど、それでどうするの』
『そのとき10メートルほど飛ぼうかなと……』
『あんた、なに馬鹿な事言ってんの。
そんなの出来るわけないじゃん』
あー、畑山さん、勇者がどれだけジャンプできるか知らないのか。
『俺は加藤が、五階建ての学校の屋上にジャンプするの見たよ』
『えっ!?
あんた、そんなことできるの?』
『おう。
なぜか普通にできるぜ』
『ふん、「できるぜ」じゃないわよ、全く。
かっこつけて』
『す、すみません』
やたらと弱気な勇者ってどうよ。
『じゃ、最後はボーね。
あんたの意見は?』
『うーん、とりあえず、あるにはあるんだが……』
『もったいぶらないで、早く言ってよ』
『加藤、俺がアルカデミアで、ビルに動画を映した話、二人にしてないか?』
『話すも何も、あれってどうやったんだ』
ああ、加藤にも話してなかったか。
『詳しい方法は、また今度にするが、例えば、東京中心部のビル全ての壁に、動画を流すことができる』
『……』
『あれ?
どうしたの?』
『あんた一体、学園都市世界で何やったのよ』
俺は、学園都市、全ての壁に獣人の姿を映したことを話した。
『……もう、呆れるしかないわね。
だけど、そんなことしたら、こっちの世界の人々に与える衝撃が大きくなり過ぎない?』
『そうなんだよ。
だから、まずは普通のメディアを試したいんだ』
『なるほどねえ。
じゃ、とりあえず加藤の意見を採用する方向で考えましょうか』
『私はそれでいいと思う』
舞子も賛成のようだ。
『俺もそれでいい』
こうして、俺たちは、「挑戦!となりの太郎君」に依頼を出すことになった。
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