ポータルズ -最弱魔法を育てようー

空知音

文字の大きさ
335 / 607
第八章 地球訪問編

第46話 ルート66(上)

しおりを挟む

 俺は、ポンポコ商会支店の業務に携わるとともに、林先生が新しく受けもつ、「異世界科」の手伝いに忙しかった。

 畑山さん、舞子、加藤とその家族は、着々と異世界旅行の準備を整えつつある。
 畑山さんが先生になり、家族たちとエミリー、翔太君に教えていた異世界についての「授業」も終了した。
  後は、十日余り後にニューヨークで予定されている行事が終われば、いつでも出発できる。
 
 アメリカ大統領から、安全の保障が出たので、エミリーはニューヨークのハーディ邸に戻してある。
 舞子は「妹」がいなくなって寂しそうだけどね。
 その辺は、俺に考えがあるから。

 日本は、いつの間にか、桜が咲く季節を迎えていた。

 ◇

 俺たちが、地球世界に帰ってきたのが一月の中旬だったから、こちらでの滞在も、すでに二か月半が経過していた。          

 俺たち『初めの四人』は、ニューヨークへ行った時くらいしか、旅行らしい旅行もできなかったので、それを行うことにした。

 イリノイ州シカゴからカリフォルニア州サンタモニカを結んでいたかつての国道、ルート66をバイクで走るというものだ。

 ルート自体は、既に廃線になっていることもあり、道が全て繋がっている訳ではないが、その区間は点ちゃん1号を使えば済むので、俺たちには何の問題もない。
 合計八つの州を通るこの旧道の沿線には歴史的モニュメントが多数あり、それを訪れるのも楽しみだ。

 地元で桜の花が咲くのを見た次の日、『初めの四人』は、俺が点を落としておいた、サンフランシスコに瞬間移動した。
 場所は、遠くにゴールデンゲートブリッジが見える丘の上だ。
 人を驚かさないように、自分たちには透明化の魔術を掛けてある。

 日本は朝方だったが、ここでは太陽が高く昇っていた。
 点ちゃん1号で、空路南へ。二十分もかからずにロサンゼルスに到着した。

 サンタモニカのルート66出発点へ向かう。そこからは、シカゴを目指すことになる。
 エミリーに借りておいた、スマートフォンのマップ機能が活躍する。

 人通りが無い脇道で白銀の大型バイクを出す。
 加藤の後ろに畑山さん、俺の後ろに舞子が乗る。
 俺たちは、点魔法で作ったヘルメットを被っている。

 体温調整を点魔法で行うと旅情が削がれると思い、俺と加藤は黒革のツナギを着ている。
 畑山さんと舞子は、点魔法の温度調節を選んだ。
 出発地点にバイクを並べた俺と加藤は、互いの革手袋をぶつけるとスタートを切った。

 日本ではあまり見ない片側四車線の道を東に向かう。

 タイヤがついていない白銀のバイクに驚き立ちどまる人もいるが、思ったより注意を引いていないようなので、少し安心する。
 俺が乗っているのは、加藤と同じ点ちゃん4号改だ。

 最後まで難航したブレーキシステムは、進行方向の逆に重力を掛ける点の数で調節した。
 ハンドルのレバーを強く引くほど多くの点が反応する。
 一つ一つの点が加える重力は弱めてあるから、ゆるやかな減速もお手のものだ。

『あんたたちが、バイクバイクってうるさいから仕方なくつきあったけど、これ、気持ちいいわね』

『だろ、麗子さんが気に入ってくれると思ったんだ』

 こういう時、念話は本当に便利だね。

『舞子、寒くないか?』

『ううん。
 むしろ、ちょっと熱いくらい』

『それならいいんだが』

『(・ω・)つ ご主人様は、相変わらずですねえ』

 えええっ! ここで点ちゃんから、突っこみですか。
 地球に来てからこんなのばっかりだな。

『(・x・) ご主人様はダメダメですねえ』

 あ、ダメダメミッ〇ィー顔。ええ、よくわからないけど、ダメダメで結構です。

『(*´з`) 開きなおってるよこの人』

『史郎君、どうしたの?』

 舞子には、点ちゃんの声が聞こえないからね。

 こうして、俺たちの「旅らしい旅」が幕を開けた。

 ◇

 旅は順調に進んだ。

 カリフォルニア州からアリゾナ州、そしてニューメキシコ州へと沿道の景色が移り変わるのが興味深い。

 俺達のバイクは、速度制限が無いのでスピードはいくらでも出せるのだが、時速二百キロから三百キロくらいで運転している。
 まだ改造中なので、その程度に抑えているのだ。

 ニューメキシコでは、街道沿いの木陰でキャンプした。

 女性二人がどうしてもと言うので、点ちゃん1号を出し、入浴してもらう。
 ついでに俺たちも入浴した。

 この日はテントに寝たが、最新のテントは本当に寝心地が良かった。
 畑山さんと舞子はコケット、俺と加藤はダウンの寝袋で寝た。

 夜、テントのキャノピーを空け、星を見ながら寝たので、朝の光で目が覚めた。
 これもキャンプの醍醐味だね。

 二日目は、テキサス、オクラホマ、カンザスと抜ける予定だ。
 
 テキサスをもう少しで抜けようかという所で、昼食を取ることにした。
 沿道のいかにも西部劇に出てきそうな店に入る。
 ドアも、バネでギコギコする両開きのやつだ。

 店内には六つテーブルがあったので、壁際のものを選んだ。
 木製の丸テーブルに丸椅子があり、アリストのギルドを思いださせた。

 俺たち四人が、でかいハンバーガーを食べおえ、席を立とうとしたとき、入り口から柄の悪い連中が入ってきた。

「おい、お前ら。
 中国人が、誰に断って俺たちのテーブルに座ってんだ」

 男は首から太いチェーンを垂らし、胸毛だらけの胸元を大きく開いている。
 おいおい、それじゃ、寒いだろう。

「おい、頭に変なの巻いてる、おめえだよ。
 何とか言わねえか」

 俺たちの旅も、順調とばかりはいかないようだ。
しおりを挟む
感想 6

あなたにおすすめの小説

私の息子を“愛人の子の下”にすると言った夫へ──その瞬間、正妻の役目は終わりました

放浪人
恋愛
政略結婚で伯爵家に嫁いだ侯爵令嬢リディアは、愛のない夫婦関係を「正妻の務め」と割り切り、赤字だらけの領地を立て直してきた。帳簿を整え、税の徴収を正し、交易路を広げ、収穫が不安定な年には備蓄を回す――伯爵家の体裁を保ってきたのは、いつも彼女の実務だった。 だがある日、夫オスヴァルドが屋敷に連れ帰ったのは“幼馴染”の女とその息子。 「彼女は可哀想なんだ」 「この子を跡取りにする」 そして人前で、平然と言い放つ。 ――「君の息子は、愛人の子の“下”で学べばいい」 その瞬間、リディアの中で何かが静かに終わった。怒鳴らない。泣かない。微笑みすら崩さない。 「承知しました。では――正妻の役目は終わりましたね」

莫大な遺産を相続したら異世界でスローライフを楽しむ

翔千
ファンタジー
小鳥遊 紅音は働く28歳OL 十八歳の時に両親を事故で亡くし、引き取り手がなく天涯孤独に。 高校卒業後就職し、仕事に明け暮れる日々。 そんなある日、1人の弁護士が紅音の元を訪ねて来た。 要件は、紅音の母方の曾祖叔父が亡くなったと言うものだった。 曾祖叔父は若い頃に単身外国で会社を立ち上げ生涯独身を貫いき、血縁者が紅音だけだと知り、曾祖叔父の遺産を一部を紅音に譲ると遺言を遺した。 その額なんと、50億円。 あまりの巨額に驚くがなんとか手続きを終える事が出来たが、巨額な遺産の事を何処からか聞きつけ、金の無心に来る輩が次々に紅音の元を訪れ、疲弊した紅音は、誰も知らない土地で一人暮らしをすると決意。 だが、引っ越しを決めた直後、突然、異世界に召喚されてしまった。 だが、持っていた遺産はそのまま異世界でも使えたので、遺産を使って、スローライフを楽しむことにしました。

【完結】スーパーの店長・結城偉介 〜異世界でスーパーの売れ残りを在庫処分〜

かの
ファンタジー
 世界一周旅行を夢見てコツコツ貯金してきたスーパーの店長、結城偉介32歳。  スーパーのバックヤードで、うたた寝をしていた偉介は、何故か異世界に転移してしまう。  偉介が転移したのは、スーパーでバイトするハル君こと、青柳ハル26歳が書いたファンタジー小説の世界の中。  スーパーの過剰商品(売れ残り)を捌きながら、微妙にズレた世界線で、偉介の異世界一周旅行が始まる!  冒険者じゃない! 勇者じゃない! 俺は商人だーーー! だからハル君、お願い! 俺を戦わせないでください!

猫好きのぼっちおじさん、招かれた異世界で気ままに【亜空間倉庫】で移動販売を始める

遥風 かずら
ファンタジー
【HOTランキング1位作品(9月2週目)】 猫好きを公言する独身おじさん麦山湯治(49)は商売で使っているキッチンカーを車検に出し、常連カードの更新も兼ねていつもの猫カフェに来ていた。猫カフェの一番人気かつ美人トラ猫のコムギに特に好かれており、湯治が声をかけなくても、自発的に膝に乗ってきては抱っこを要求されるほどの猫好き上級者でもあった。 そんないつものもふもふタイム中、スタッフに信頼されている湯治は他の客がいないこともあって、数分ほど猫たちの見守りを頼まれる。二つ返事で猫たちに温かい眼差しを向ける湯治。そんな時、コムギに手招きをされた湯治は細長い廊下をついて歩く。おかしいと感じながら延々と続く長い廊下を進んだ湯治だったが、コムギが突然湯治の顔をめがけて引き返してくる。怒ることのない湯治がコムギを顔から離して目を開けると、そこは猫カフェではなくのどかな厩舎の中。 まるで招かれるように異世界に降り立った湯治は、好きな猫と一緒に生きることを目指して外に向かうのだった。

転移特典としてゲットしたチートな箱庭で現代技術アリのスローライフをしていたら訳アリの女性たちが迷い込んできました。

山椒
ファンタジー
そのコンビニにいた人たち全員が異世界転移された。 異世界転移する前に神に世界を救うために呼んだと言われ特典のようなものを決めるように言われた。 その中の一人であるフリーターの優斗は異世界に行くのは納得しても世界を救う気などなくまったりと過ごすつもりだった。 攻撃、防御、速度、魔法、特殊の五項目に割り振るためのポイントは一億ポイントあったが、特殊に八割割り振り、魔法に二割割り振ったことでチートな箱庭をゲットする。 そのチートな箱庭は優斗が思った通りにできるチートな箱庭だった。 前の世界でやっている番組が見れるテレビが出せたり、両親に電話できるスマホを出せたりなど異世界にいることを嘲笑っているようであった。 そんなチートな箱庭でまったりと過ごしていれば迷い込んでくる女性たちがいた。 偽物の聖女が現れたせいで追放された本物の聖女やら国を乗っ取られて追放されたサキュバスの王女など。 チートな箱庭で作った現代技術たちを前に、女性たちは現代技術にどっぷりとはまっていく。

バーンズ伯爵家の内政改革 ~10歳で目覚めた長男、前世知識で領地を最適化します

namisan
ファンタジー
バーンズ伯爵家の長男マイルズは、完璧な容姿と神童と噂される知性を持っていた。だが彼には、誰にも言えない秘密があった。――前世が日本の「医師」だったという記憶だ。 マイルズが10歳となった「洗礼式」の日。 その儀式の最中、領地で謎の疫病が発生したとの凶報が届く。 「呪いだ」「悪霊の仕業だ」と混乱する大人たち。 しかしマイルズだけは、元医師の知識から即座に「病」の正体と、放置すれば領地を崩壊させる「災害」であることを看破していた。 「父上、お待ちください。それは呪いではありませぬ。……対処法がわかります」 公衆衛生の確立を皮切りに、マイルズは領地に潜む様々な「病巣」――非効率な農業、停滞する経済、旧態依然としたインフラ――に気づいていく。 前世の知識を総動員し、10歳の少年が領地を豊かに変えていく。 これは、一人の転生貴族が挑む、本格・異世界領地改革(内政)ファンタジー。

異世界に転移したら、孤児院でごはん係になりました

雪月夜狐
ファンタジー
ある日突然、異世界に転移してしまったユウ。 気がつけば、そこは辺境にある小さな孤児院だった。 剣も魔法も使えないユウにできるのは、 子供たちのごはんを作り、洗濯をして、寝かしつけをすることだけ。 ……のはずが、なぜか料理や家事といった 日常のことだけが、やたらとうまくいく。 無口な男の子、甘えん坊の女の子、元気いっぱいな年長組。 個性豊かな子供たちに囲まれて、 ユウは孤児院の「ごはん係」として、毎日を過ごしていく。 やがて、かつてこの孤児院で育った冒険者や商人たちも顔を出し、 孤児院は少しずつ、人が集まる場所になっていく。 戦わない、争わない。 ただ、ごはんを作って、今日をちゃんと暮らすだけ。 ほんわか天然な世話係と子供たちの日常を描く、 やさしい異世界孤児院ファンタジー。

優の異世界ごはん日記

風待 結
ファンタジー
月森優はちょっと料理が得意な普通の高校生。 ある日、帰り道で謎の光に包まれて見知らぬ森に転移してしまう。 未知の世界で飢えと恐怖に直面した優は、弓使いの少女・リナと出会う。 彼女の導きで村へ向かう道中、優は「料理のスキル」がこの世界でも通用すると気づく。 モンスターの肉や珍しい食材を使い、異世界で新たな居場所を作る冒険が始まる。

処理中です...