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第十章 奴隷世界スレッジ編
第18話 皇女のわがまま2
しおりを挟む翌朝、世話役のネリルが俺と加藤の部屋に来て、その日の予定が全てキャンセルされたと告げた。
昼前に、グラゴー伯爵のカバ車が宿舎に到着した。
車から降りてきた彼は、ものすごく機嫌が悪かった。
理由もなく、ネリルや役所の長官に怒鳴りちらしている。
しばらくして、皇女のカバ車が着くと、彼の顔は一層不機嫌に歪んだが、何も言わなくなった。
俺と加藤は、恐らく貴賓室だろう内装の整った部屋に案内された。
部屋には、グラゴー伯爵と役所の長官、皇女シリル、その侍女ローリィがいた。
「おお、シロー、昨日振りじゃな」
「皇女様、こんにちは」
「今日は、お前に話があってな」
「なんでしょう?」
「お前たちをわらわの闘士にすることにしたぞ」
「えっ!?」
「一般闘士から、いきなり特級闘士じゃ。
わらわに感謝せい」
「……そういうことだ。
シロー、カトー、君たち二人は、これから姫様について都に登ることになる」
長官が説明する。
「「……」」
都に行く計画は立てていたが、いきなりそれが実現してしまい、俺と加藤、二人とも驚いていた。
「お前たちは、ただ姫様についていくのではないぞ。
護衛役も兼ねるのだ。
くれぐれも、失礼がないようにな」
グラゴー伯爵が、能面のような顔で言う。
「分かりました」
「では、すぐに用意をしろ」
「「えっ!?」」
「姫様は、すぐに発たれるそうじゃからな」
こうして、皇女シリルのわがままで、都行きの切符を手に入れた俺と加藤だった。
◇
『(・ω・)ノ ご主人様ー、この街を離れるんだよね』
お、点ちゃん。
うん、すぐに出発するよ。
ブランはどこ?
『(・ω・) ブランちゃんは、調査が終わったから、お部屋に戻ってるよ』
竜人たちは、どこに連れていかれてたの?
『(・ω・) この街に来るとき、通った門があったでしょ』
あったね。
『(・ω・) あれと反対側の出口から外に出ていったみたい』
俺は上空から見た街の地形を思いだしていた。
やはり、リニアたちは、王都に連れていかれたようだ。
『(・ω・) あとね、一つお願いがあるの』
点ちゃんからのお願いか、珍しいね。
『(・ω・) ゴライアスちゃんも、連れていくんでしょ』
まあ、点ちゃんにとっては、巨人も「ちゃん」だよね。
うん、連れていくよ。
『(・ω・) それならね、ポポちゃんも、連れていってほしいの』
ポポちゃん? 誰かな、それは?
『(・ω・) ご主人様、もうお話ししてるでしょ』
えっ!? 誰だろう。
『(・ω・) グラゴーさんの馬車を牽いている子だよ』
ああ、ピンクのカバか。でも、おしゃべりなんかしたかな。
あ、もしかして、グラゴー邸に着いた時、俺にウインクしてたから、あれを「お話しした」って言ってるのかな。
あれ?
それより、点ちゃん……ポポちゃんと話せるの?
『(^ω^)ノ うん、なぜか普通にお話できたー♪』
えっ!? そうなの?
『(・ω・)ノ もう、ブランと一緒におしゃべりしてるお友達』
うへ、ブランともおしゃべりしてるのか。あのカバ、すごいな。
『(・ω・) あそこを逃げだしたいけど、なんか鞍に悪い石がくっついてるから、こっちに来られないんだって』
俺は、ピーンときた。「悪い石」って、きっとドラゴナイトだな。
そうすると、竜、竜人、ピンクのカバには、何か不思議な関係があるのかもしれないね。
とにかく、出発まで忙しくなりそうだぞ。
俺は、これからすることを考え、ちょっとワクワクしていた。
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