ポータルズ -最弱魔法を育てようー

空知音

文字の大きさ
446 / 607
第十章 奴隷世界スレッジ編

第57話 決戦3

しおりを挟む


 遠くに母親の異変を感じた子竜二体は、幼子から竜の姿に戻ると、里から飛びたち母親がいるだろう方向へ飛翔した。
 途中から猛烈な気だるさが襲ってきたが、二体は飛びつづけた。
 突然、気だるさが消える。前方の草原に横たわる母の姿を見つけた。

 急降下した二体の子竜は、横たわる母の近くで再び幼子の姿となった。
 ぬいぐるみと一緒に母の体にすがりつく。

「マンマー!」
「マーマ!」

 コルナとコリーダが、同時に上体を起こす。

「「あなたたち……」」

 二人の声に、子竜が喜ぶ声が重なった。

 ◇

 点ちゃんからの報告で、コルナとコリーダの子竜が急に里を離れたと知り、俺は彼女たち二人が近くまで来ていると確信した。

『(・ω・)ノ ご主人様ー、ドラゴナイトの効力が消えたみたい』

 そうか、きっとコルナとコリーダが何かしたに違いない。

『バルクさん、聞こえますか?』

『おお、頭の中でシロー殿の声が聞こえる』

『俺の魔術なんです。
 それより、体調の方はどうです』

『里に着くなり楽になったわい』

『よかったです。
 もう一度、こちらに来れますか。
 戦える人は、前線に集まってもらいたいのです』

『しかし、ドラゴナイトがある限り、我らはなにもできぬが』

『仲間がドラゴナイトを無効化してくれました。
 もう、来ていただいて大丈夫ですよ』

『なんと!
 そのようなことができるのか?
 とにかく、それなら、むしろ我らに戦わせてほしい』

『では、こちらに移動させますよ。
 皆さんが驚かないように、声を掛けておいてください』

『分かり申した』

 俺は拡声用クリスタルを持ち、それに話しかけた。

「同盟軍の諸君、もう君たちに勝ち目はない。
 諦めたまえ」

 これには、すぐガーベルが反論する。

「馬鹿を言うな。
 ドラゴナイトの影響で、そちらの戦力は限られている。
 どう見てもお前らに勝ち目などないぞ」

「ははは、ドラゴナイトは、すでに無効化されたぞ。
 勝ち目がないのはお前たちだ」

「ば、馬鹿なっ!
 誰がそんなたわ言を信じる?」

 その瞬間、並んだ神獣の周囲に巨人が多数現れた。
 彼らは手に槍を持っており、勝鬨を上げている。
 その前にマスケドニア、アリストの連合軍が並んだ。
 中心にいる三人、加藤、畑山さん、舞子が身に着けた黄金色の鎧が光る。
 それを見た同盟軍の兵士の多くが、逃走にかかった。  
 
 同盟軍はすでに陣がバラバラで、その数も半数以下に減っていた。
 
「くそう、全軍、突撃ーっ!」

 やけになった、王ガーベルが声を上げる。
 俺が一番恐れていたのがこれだ。
 死を恐れずかかってくる兵士は、消去するしかないからだ。
 
 五十万近い兵が、山岳地帯へ押しよせてきた。
しおりを挟む
感想 6

あなたにおすすめの小説

神は激怒した

まる
ファンタジー
おのれえええぇえぇぇぇ……人間どもめぇ。 めっちゃ面倒な事ばっかりして余計な仕事を増やしてくる人間に神様がキレました。 ふわっとした設定ですのでご了承下さいm(_ _)m 世界の設定やら背景はふわふわですので、ん?と思う部分が出てくるかもしれませんがいい感じに個人で補完していただけると幸いです。

『急所』を突いてドロップ率100%。魔物から奪ったSSRスキルと最強装備で、俺だけが規格外の冒険者になる

仙道
ファンタジー
 気がつくと、俺は森の中に立っていた。目の前には実体化した女神がいて、ここがステータスやスキルの存在する異世界だと告げてくる。女神は俺に特典として【鑑定】と、魔物の『ドロップ急所』が見える眼を与えて消えた。  この世界では、魔物は倒した際に稀にアイテムやスキルを落とす。俺の眼には、魔物の体に赤い光の点が見えた。そこを攻撃して倒せば、【鑑定】で表示されたレアアイテムが確実に手に入るのだ。  俺は実験のために、森でオークに襲われているエルフの少女を見つける。オークのドロップリストには『剛力の腕輪(攻撃力+500)』があった。俺はエルフを助けるというよりも、その腕輪が欲しくてオークの急所を剣で貫く。  オークは光となって消え、俺の手には強力な腕輪が残った。  腰を抜かしていたエルフの少女、リーナは俺の圧倒的な一撃と、伝説級の装備を平然と手に入れる姿を見て、俺に同行を申し出る。  俺は効率よく強くなるために、彼女を前衛の盾役として採用した。  こうして、欲しいドロップ品を狙って魔物を狩り続ける、俺の異世界冒険が始まる。

クラス転移したけど、皆さん勘違いしてません?

青いウーパーと山椒魚
ファンタジー
加藤あいは高校2年生。 最近ネット小説にハマりまくっているごく普通の高校生である。 普通に過ごしていたら異世界転移に巻き込まれた? しかも弱いからと森に捨てられた。 いやちょっとまてよ? 皆さん勘違いしてません? これはあいの不思議な日常を書いた物語である。 本編完結しました! 相変わらず話ごちゃごちゃしていると思いますが、楽しんでいただけると嬉しいです! 1話は1000字くらいなのでササッと読めるはず…

ユーヤのお気楽異世界転移

暇野無学
ファンタジー
 死因は神様の当て逃げです!  地震による事故で死亡したのだが、原因は神社の扁額が当たっての即死。問題の神様は気まずさから俺を輪廻の輪から外し、異世界の神に俺をゆだねた。異世界への移住を渋る俺に、神様特典付きで異世界へ招待されたが・・・ この神様が超適当な健忘症タイプときた。

猫好きのぼっちおじさん、招かれた異世界で気ままに【亜空間倉庫】で移動販売を始める

遥風 かずら
ファンタジー
【HOTランキング1位作品(9月2週目)】 猫好きを公言する独身おじさん麦山湯治(49)は商売で使っているキッチンカーを車検に出し、常連カードの更新も兼ねていつもの猫カフェに来ていた。猫カフェの一番人気かつ美人トラ猫のコムギに特に好かれており、湯治が声をかけなくても、自発的に膝に乗ってきては抱っこを要求されるほどの猫好き上級者でもあった。 そんないつものもふもふタイム中、スタッフに信頼されている湯治は他の客がいないこともあって、数分ほど猫たちの見守りを頼まれる。二つ返事で猫たちに温かい眼差しを向ける湯治。そんな時、コムギに手招きをされた湯治は細長い廊下をついて歩く。おかしいと感じながら延々と続く長い廊下を進んだ湯治だったが、コムギが突然湯治の顔をめがけて引き返してくる。怒ることのない湯治がコムギを顔から離して目を開けると、そこは猫カフェではなくのどかな厩舎の中。 まるで招かれるように異世界に降り立った湯治は、好きな猫と一緒に生きることを目指して外に向かうのだった。

いきなり異世界って理不尽だ!

みーか
ファンタジー
 三田 陽菜25歳。会社に行こうと家を出たら、足元が消えて、気付けば異世界へ。   自称神様の作った機械のシステムエラーで地球には帰れない。地球の物は何でも魔力と交換できるようにしてもらい、異世界で居心地良く暮らしていきます!

大和型戦艦、異世界に転移する。

焼飯学生
ファンタジー
第二次世界大戦が起きなかった世界。大日本帝国は仮想敵国を定め、軍事力を中心に強化を行っていた。ある日、大日本帝国海軍は、大和型戦艦四隻による大規模な演習と言う名目で、太平洋沖合にて、演習を行うことに決定。大和、武蔵、信濃、紀伊の四隻は、横須賀海軍基地で補給したのち出港。しかし、移動の途中で濃霧が発生し、レーダーやソナーが使えなくなり、更に信濃と紀伊とは通信が途絶してしまう。孤立した大和と武蔵は濃霧を突き進み、太平洋にはないはずの、未知の島に辿り着いた。 ※ この作品は私が書きたいと思い、書き進めている作品です。文章がおかしかったり、不明瞭な点、あるいは不快な思いをさせてしまう可能性がございます。できる限りそのような事態が起こらないよう気をつけていますが、何卒ご了承賜りますよう、お願い申し上げます。

治療院の聖者様 ~パーティーを追放されたけど、俺は治療院の仕事で忙しいので今さら戻ってこいと言われてももう遅いです~

大山 たろう
ファンタジー
「ロード、君はこのパーティーに相応しくない」  唐突に主人公:ロードはパーティーを追放された。  そして生計を立てるために、ロードは治療院で働くことになった。 「なんで無詠唱でそれだけの回復ができるの!」 「これぐらいできないと怒鳴られましたから......」  一方、ロードが追放されたパーティーは、だんだんと崩壊していくのだった。  これは、一人の少年が幸せを送り、幸せを探す話である。 ※小説家になろう様でも連載しております。 2021/02/12日、完結しました。

処理中です...