ポータルズ -最弱魔法を育てようー

空知音

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第十一章 ポータルズ列伝

銀髪の少女編 第6話 ナルとメル、人気者になる

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 学校に行ったら、公園であったことをキャシーが皆に話したの。
 あ、キャシーっていうのはキャサリンのことね。
 これからはそう呼んでちょうだいって言ってたから、そう呼ぶことにしたの。

 キャシーの話を聞いた男の子が、大きな声で言ったの。

「おーい、みんな!
 ナルちゃんとメルちゃんが、テンペのやつらをやっつけてくれたんだって」

 そうすると、みんなが集まってきたの。

「ナルちゃん、本当? 
 私、いつもあいつにイジワルされてたの」
「ボクもいつもお菓子とられてた」
「私なんかママが買ってくれたばかりの服をよごされたのよ」

 あの三人は、みんなにイジワルしてたみたい。
 みんなは、自分がどんなイジワルされたか、いっぱい話してくれたの。
 ファーグス先生が来ても、しばらく私とメルの机から離れなかったんだよ。

 ◇

 その日、キャシーと三人で帰っていたら、公園の所で、また三人が待ってたの。

 私を木の棒でたたいてきた男の子は、手に包帯を巻いてたわ。
 公園の木から生えてた二人の男の子は、顔が傷だらけになってた。

 そして、三人のほかにも、もっと大きな男の子が三人いたの。
 背が大人ぐらいあるかしら。

「で、お前たちがやられたってやつは、どこにいる?」

 大きい方の男の子がケガをしている子供たちに尋ねてる。

「こ、こいつです」

「えっ!? 
 この白い髪の子か?」

「は、はいっ」

「お前らなんで、こんなちっちゃな女の子に負けてんだ!」

 なんか、小さい三人がしかられているみたい。

「で、でも、すごく強くて……」

「馬鹿を言うな! 
 こんな子が強いわけないだろ」

「でも……」

「ほれ、こうやってちょっと押しただけで――」

 その大きな男の子は、メルを軽く押そうとしたんだと思う。
 メルは、今朝の事があるから攻撃されたって思ったんでしょう。
 その手をつかむと、ぽいって投げたの。

 大きな足が、公園の木から生えた。

「な、なんだこいつっ!」

 隣の大きな男の子が、メルを突きとばそうとしたの。
 こうなると、私もだまっていられないわね。
 その男の子の手を取って、ひょいって、木から生やしてあげたわ。

 最後の一人は、ブルブルふるえていたけど、「わーっ!」て言って、急に走っていっちゃった。

 その子がそういうことをしたのが、一番のナゾだったわ。

 ◇

 次の日学校に行くと、体の大きな女の人や男の人がいっぱい教室にいたの。

「君たちがブロワをやっつけてくれた子かい?」

「ええ、ナルとメルがやったのよ」

 いつもは小さな声のキャシーが、胸をはって大きな声を出したから、少し驚いたの。

「君たち、本当にありがとう。
 いつもあいつらにイジワルされてたんだよ」
「私からもお礼を言わせてちょうだい。
 嫌なヤツらをやっつけてくれてありがとう」

 それからもたくさん大きな人がお礼に来たの。
 キャシーによると、『じょーきゅーせー』って言うみたい。

 いろんなお菓子をいっぱいもらっちゃった。
 これ食べてもいいのかしら。
 あら、メルはもう食べちゃった。

 その日は、たくさんの人と一緒に家に帰ったの。
 ワイワイおしゃべりして、とても楽しかったのよ。

 ◇

 次の日は、学校に行く途中、誰も出てこなかったわ。
 でも、お菓子がもらえてメルが喜ぶなら、一人くらい出てきてもよかったけど。

 そのかわり、帰りに公園を通るとき、たくさん大きな人が待ってたの。

「おい、ブロワ坊ちゃんにケガさせたってのはお前たちか?」

「だけど、ジークさん、こんな小さな娘っ子が本当に坊ちゃんをやっつけたんですかい?」

「それはそうだが、髪が銀色の女の子っていや、そうそういねえだろ」

 この人たちは、もう子供じゃないわね。 
 あごにおヒゲが生えてるもの。
 騒いでいたから、たくさんの人が公園に集まってきたの。

「おい、そんな小さな子に何かするつもりか?」

 そう言ったのは、いつかマンマが連れて行ってくれたパン屋さんね。

「年は関係ねえんだよ。
 坊ちゃんがやられたからにゃ、ただじゃおかない」

 ヒゲのおじさんが、言いかえしてる。

「あんたたち!
 いい年して、なに寝ごと言ってんだい。
 こんな小さな子に何かしようなんて、女王様が許さないよ!」

 この人は、最近食事に行ったカラス亭のおばちゃんね。
 赤い柄がついたお玉をヒゲのおじさんの方に突きだしているわ。
 あれ? 学校でそうじしてた、じーじによく似たおじいさんも近くでこちらを見てるわね。

「うるせえんだよ。
 おい、そいつらも一緒にやっちまえ」

 ヒゲのおじさんが、後ろに並んでた男の人たちにそう言ったの。

 ココココーン

 なに? この音?

 あ、ヒゲのおじさんや、その後ろにいた男の人たちが、頭を抱えてうずくまってる。

 そうじのおじいさんが、手に赤いお玉を持ってるわね。
 もう片方の手にあるのは、ヒゲのおじさんたちが持っていた武器ね。

 おじいさんは、それをパン屋のおじさんに渡すと、うなずいたの。
 それからみんなは、うずくまったままのおじさんたちは放っておいて、おウチに帰ったんだよ。

 あのおじさんたち、一体どうしてうずくまってたのかしら。
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