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第十一章 ポータルズ列伝

銀髪の少女編 第7話 ナルとメル、決闘を申しこまれる

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 次の日、キャシーと一緒に学校に行く途中、公園の中にケガをした大きな子どもが立っていたの。
 今日も三人でいるから、仲がいいのかもしれないわね。
 確かブロワっていう名前だったわね。

 彼が手にお花をもって近づいてきたの。
 今日は、イジワルするつもりはないみたいね。

 私の前に来ると、大きな赤い花をぐしゃって手でつぶしてる。
 なんでそんなことするんだろう。
 お花がかわいそうだから、落ちる花びらを手で受けとめたら、その大きな男の子が急にニヤッと笑ったの。

「これで、決闘成立だな」

『けっとー』? 
『けっとー』って、何かしら。

「俺は、サプライズ子爵家長男ブロワだ。
 今日の放課後、校庭で待ってるぞ」

 変な人ね。
 人の話も聞かないで、どこかへ行っちゃった。
 それから、私たちは学校に行って普通に授業を受けたの。

 大騒ぎになったのは、授業が終わってすぐだったわ。
 この前お菓子をくれたお姉ちゃんたちが、教室に入ってきて、私たちの所に来たの。

「ナルちゃん、メルちゃん、ブロワからの決闘の申しこみを受けたってホント?」

「お姉ちゃん、『けっとー』ってなあに、?」

「ああ! 
 やっぱり知らなかったのね。
 あいつ、あなたの前で花をにぎりつぶさなかった?」
 
「うーん、そういえば、そんなことしてたよ」
「うん、してたー」

「ナルちゃん、花をどうしたの?」

「こうやって、落ちないように手でひろったの」

「まあっ!
 思ったとおりだわ! 
 ナルちゃんたちが何も知らないと思って、決闘をむりやり受けさせたのね」

「だからー、『けっとー』ってなにか教えて」

「よく聞いてね。
 握りつぶした花を受けとると、相手と戦うよって意味になるんだよ」

「ふーん」
「ふーん」

 お姉ちゃんは、私たちが、もっと何か違うことを言うと思ってたみたい。
 呆れたような顔をしてたの。

「ナルちゃん、あいつと戦って勝てると思う?」

「うーん、分かんない」
「戦ったら、お菓子くれる?」

 もう、メルは食べる事ばっかりね。

「ああ、大変! 
 この子たち、何も分かっていないわ。
 どうしよう」

 お姉ちゃんの顔が青くなってる。

「キャシー、校長先生を呼んでくるから、絶対この二人を教室から出しちゃだめよ」

 お姉ちゃんは、キャシーにお願いしたら、走って教室を出ていった。
 それから少しして部屋のドアが開いたから、お姉ちゃんが帰ってきたと思ったらブロワだった。

「おい、お前たち。
 決闘の時間だぞ。
 早く校庭に出てこい」

「なんでそんなことしないといけないの?」
「なんでー?」

 メルも同じ気持ちみたい。

「決闘に来なければ、お前の父親が馬鹿にされるぞ」

 えっ?! そうなの?

「じゃ、行く」
「いくー」

 キャシーが止めたけど、パーパがバカにされるのはいやだから、教室から出た。
 私たちは、ブロワのうしろを歩いて学校にある広場のような所に来たの。
 ブロアにもう一人が近づいて来たんだけど、それは大人だった。
 昨日会ったヒゲのおじさん。

 おヒゲさんは、手にぼうきれのようなものを持ってたの。
 あれって、『わんど』かしら。
 魔術を使う人が持っている道具ね。
 おヒゲさんは、魔術師かもしれないわね。

「立会人はいないが、これだけ多くの生徒が見ていれば問題ないな。
 さっそく始めるぞ」

 ブロワが言った通り、私たちの周りには、生徒がいっぱい集まってきてるの。
 授業が終わってあまり時間がたってないから、みんなまだ学校にいたのね。

 ブロワが一歩前にでようとしたときだったわ。
 私たちの後ろから、きれいな声がしたの。

「待ちなさい」

 女の人の声だったわ。
 大きな声では無かったけど、ブロワとおヒゲは、動けなくなったみたい。

 振りかえると大きな帽子をかぶった女の人が立ってたの。
 すらりとして、とてもきれいな人だったわ。
 帽子で顔がよく見えなくてもそれは分かるの。

 おヒゲのおじさんもローブをつけてるけど、この女の人のローブは全くちがったの。
 風が吹くと、キラキラ光るんだよ。

「私が立会人をやるわ」

 女の人がそう言ったの。

「おい、立会人は子爵以上の爵位が必要だぜ」

 おヒゲのおじさんが、何か言ってる。

「心配ご無用よ。
 それより、立会人無しでそんな小さな女の子と戦えば、まちがいなく罪に問われるわよ」

「け、決闘をこいつが受けたんだから、いいだろ」

「それとこれとは別。
 なんなら法に詳しい人に聞いてみる?」

 ブロワとおヒゲは、目を合わせた。

「しょうがねえ。
 邪魔にならねえように離れたとこに立ってろよ」

「安心して。
 私は、邪魔しないから」

 女の人はそう言うと、みんなが見ているところまで下がったの。
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