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第十一章 ポータルズ列伝
異世界通信社編(5) フランスからの招待(3)
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昨日の買い物で疲れきった後藤と遠藤は、朝食に起きてこなかった。
私は彼らを無理に起こすことはせず、リーダーと二人で買い物に出ている。
昨日買ったドレスは、直しが済んだものを、店で受けとってきた。
普通、ドレスの直しには早くとも一週間ほどかかるそうで、リーダーはそのためにかなり余分に支払ったようだ。
「うわーっ!
これ、可愛いわね」
タイミングよく開かれていた蚤の市で、陶器の置物を手に取る。
それは、丸まった白猫をかたどったもので、ちょうど手のひらに載せられる大きさだった。
木の椅子に座り頭にスカーフをかぶったおばさんに、リーダーが話しかける。
「おばさん、これいくら?」
「ああ、これかい、ええと……おや?
あんた、異世界の人じゃないかい?」
「えっ!?
おばさん、俺のこと知ってるの?」
「知ってるも何も、あんた有名なんだろ?
それに、あたいの娘があんたのファンでね。
部屋にポスターが貼ってあるんだよ」
「「ええっ!?」」
それには、私も驚いた。
いつの間に、リーダーのポスターなんてできてたんだろう?
二人で歩いてる時、立ちどまってこちらを見ている人たちがいたのは、そのせいだったのね。
「その猫の置物は、タダで上げるから、そうだね。
これにサイン書いてくれないかい?」
おばさんは、えんじ色の布袋から古びた革の財布を取りだし、それに挟んでいた写真をリーダーに渡した。
写真には、おばさんと恐らくご主人だろう男性、そして二人の間に高校生だろう顔立ちのよい女の子が映っていた。
驚いたことに、彼女は黒人だった。
おばさんも旦那さんも白人だから、きっと里親なのだろう。
「可愛いだろう?
メルってんだよ」
「へえ、メルですか。
俺の娘も同じ名前です」
「えっ、そうなのかい?
娘さんがいる年には見えないけどね。
ええと、これ、これでサインと、それから「メルさんへ」って書いてくれないかい?」
おばさんは、リーダーに古びたボールペンを渡した。
「ああ、書くものは持ってます」
リーダーはそう言うと、懐からペンを取りだす格好をした。
横に並んだ私には彼の手に、突然その銀色のペンが現われたのが見えた。
彼はそのペンで、写真の裏にさらさらと何かを描いた。
銀色のインクで書かれたそれは、丸の上に三角が二つ載った、『ポンポコ商会』のマークだった。
その横に、フランス語らしい文字が書いてある。
「あれ?
リーダー、フランス語書けたの?」
「まあ、なんとか」
リーダーから写真を受けとったおばさんが声を上げる。
「まあ、変なサインだねえ。
でも、娘が喜ぶよ」
お店から離れると、私はリーダーに話しかけた。
「あれって、シローのサインじゃないよね。
『ポンポコ商会』のマークでしょ」
「まあいいんじゃない?
あれでも喜んでくれたんだから」
「ホント、子供の様なことするのね!」
私は笑いながら、彼と腕を組んだ。
「ちょ、ちょっと柳井さん――」
「子供は、お姉ちゃんの言うことを聞きなさい!」
小鳥が鳴く公園の中を歩きながら、私は心から笑った。
◇
その日の夕方、なぜか地味な背広姿のリーダー、燕尾服姿の後藤、遠藤と紅いドレスの上にハーフコートを羽織った私は、ホテルが用意してくれたリムジンから降りた。
目の前には伝統を感じさせる石造りの大きな建物がある。
ここが今日の会見場となる。
リムジンの運転手によると、かつて王族の離宮だったとか。
執事らしき老人が出てきて、ぶ厚い絨毯が敷かれた広いフォイヤー、廊下を通り、広間に通される。
そこにはすでに多くの人が集まっており、みんなフォーマルな格好をしていた。女性たちが身に着けた色とりどりのドレスが、豪奢なシャンデリアが広げる光に輝き、華やかな雰囲気を醸しだしていた。
取りたててきらびやかな衣装を身に着けた若い女性と、彼女をエスコートする、鷲鼻の青年が近づいてきた。
「ふふ、異世界との関係者は、もうちょっとマシなものをお召しになっていると思ってましたわ」
若い女性は挨拶もなく、こちらを見下すようなそぶりで、いきなりそう言った。
彼女は、ダイヤをちりばめたティアラや、親指の先ほどもある大きな宝石をつけたペンダントを身に着けている。
「ははは、東洋の田舎者に、そんなことを期待してはいけないな」
鷲鼻の男性が、肩をすくめる。
「ああ、これは失礼。
申し遅れましたが、私、ルイと言います。
ストーナン家の末席を汚すものです。
そして、こちら、私の婚約者であるマリアです。
彼女は、ブルボン家の血をひく者です。
以後お見知りおきを」
私は、こちらを馬鹿にしてきた彼らに挨拶する必要を感じなかった。
しかし、リーダーは違ったようだ。
「お嬢様、そろそろ用意なさってはいかがかと」
私はリーダーが言っていることが分からなかったけれど、とりあえず頷いた。
「そ、そうね」
彼が小さく指を鳴らすのが見えた。
青年に「マリア」と紹介された娘が、ぎょっとした顔をして、こちらを見ている。
「あ、あなた、それ……」
彼女が、震える指を私へ伸ばしている。
何のことか分からない私は、つっ立ったままだ。
「社長、ティアラとペンダントが――」
右側にいた後藤の声がする。
手で頭に触れると、ティアラが載っている。
見下ろすと、胸にキラキラ光るペンダントがあり、その中心には拳ほどもある赤い宝石が妖しい光を放っていた。
なるほど、リーダーがこの赤いドレスを買うよう言ったのは、この宝石と合わせるためだったのか。
「ふん、そんなでかい宝石があるかっ!
どうせ偽物だろう!」
青年が、私のペンダントに手を伸ばしかけた。
「それ以上は見過ごせませんな」
厳しい声がする。
そちらを見ると、知人の顔があった。
「ハーディ卿!」
ハーディ卿はアメリカに住む大富豪であり、リーダーや私とは旧知の仲だ。
彼はこちらにウインクすると、いつになく厳しい口調で言った。
「ルイ君、相変わらずの不作法ですな。
お婆様がこれを見たら、どれほど悲しまれるか」
「ぐっ、ハーディ卿――」
青年は、悔しさに顔を歪めている。
「それから、その宝石は本物ですぞ。
私がすでに調べてあります」
ハーディ卿のその言葉を聞いた青年が、我慢しきれず声を上げる。
「馬鹿なっ!
それが本物なら、世界最大のルビーだぞ!」
彼の叫び声で、周囲の人々がこちらに注目する。
「その通りです。
まだ、公式には登録されていませんが、間違いなく世界最大のルビーですよ」
「そ、そんな――」
マリアはブルブル震えている。
「それから、そのルビーを囲む石は、『枯れクズ』ですな。
国家単位でしか売ってもらえないという、貴重な異世界素材です」
「「「おおおっ!」」」
周囲の人々から歓声が上がる。
「あれが噂の?」
「綺麗ね、内側から光ってるみたい」
「虹色の光だね」
そこでリーダーが、私の恐れていた言葉を口にする。
「では、お嬢様、ダンスの用意を」
彼は、執事役に徹するようだ。そのため、珍しく頭の布を外している。
「後藤様、よろしくお願いします」
リーダーの声で、後藤が私の手を取る。
「後藤、あなた、ダンスはできるの?」
「社交ダンスをかじったくらいです」
ホールの中央に出てきた私と後藤に、人々の視線が集まる。
なぜか、私たちの隣には、互いに腕を組んだ、ルイとマリアが立っている。
「田舎者め!
目にもの見せてやる」
ルイのそんな声が聞こえてきた。
ホール後ろの演奏スペースに控える奏者たちが、弦楽器を鳴らし始める。
ルイとマリアが、滑らかに踊り始めた。
後藤が、私をリードし踊りはじめる。
私はそのリードについて行くのがやっとだ。
後藤は、「かじったくらい」という彼の言葉を超えて、ダンスが上手かった。
だが、彼が私に合わせていることもあり、私たちの踊りは、ルイとマリアのペアとは比べものにならない。
「なんだ、それは?
猿の踊りか?」
踊りながら近くに来たルイが残した言葉に、思わず悔し涙がこぼれそうになる。
そのとき、リーダーの念話が聞こえた。
『後藤さん、柳井さん、聞こえますか?』
私と後藤は目を合わせ、組んだ手を少し挙げた。
『しばらく体の力を抜いて、俺に任せてください』
「きゃっ!」
私が声を漏らしたのは、後藤の動きが急に早く鋭くなったからだ。
彼は、驚いた顔をしている。
私の身体は、自分の意思とは関係なく、さらに早い動きで後藤の動きに応えた。
回転する視界の端に、驚愕の表情を浮かべたルイの顔が映る。
それを見て、私はやっと体の力を抜いた。
自分の手が足が、素早く動き、円運動を形づくっていく。
私は、まるで蝶になり、空を舞っている気分だった。
いつの間にか、会場にいる人々が全員こちらに注目している。ルイとマリアは途中で踊りを止めていた。
曲が終わり、私と後藤が礼をすると、会場から割れんばかりの拍手が湧いた。
袖に下がると、リーダーが冷たい濡れタオルを渡してくれる。
「二人とも、最高にカッコよかったですよ」
私は、彼の耳元に口を持っていき囁いた。
「シロー君、あれ、どうやったの?」
「ふふふ、噂によると、ルイはアマチュア部門とはいえ、ヨーロッパ選手権で優勝するほどのダンサーだそうです。
だから、こちらは、世界チャンピオンの動きをアレンジして使いました」
「よ、よくそんな事ができたわね!」
「まあ、点ちゃんに掛かれば、こんなものですよ」
リーダーは、蚤の市で自分のサインと偽り『ポンポコ商会』のサインを書いた時と同じ、いたずらっ子の笑みを浮かべていた。
私は彼らを無理に起こすことはせず、リーダーと二人で買い物に出ている。
昨日買ったドレスは、直しが済んだものを、店で受けとってきた。
普通、ドレスの直しには早くとも一週間ほどかかるそうで、リーダーはそのためにかなり余分に支払ったようだ。
「うわーっ!
これ、可愛いわね」
タイミングよく開かれていた蚤の市で、陶器の置物を手に取る。
それは、丸まった白猫をかたどったもので、ちょうど手のひらに載せられる大きさだった。
木の椅子に座り頭にスカーフをかぶったおばさんに、リーダーが話しかける。
「おばさん、これいくら?」
「ああ、これかい、ええと……おや?
あんた、異世界の人じゃないかい?」
「えっ!?
おばさん、俺のこと知ってるの?」
「知ってるも何も、あんた有名なんだろ?
それに、あたいの娘があんたのファンでね。
部屋にポスターが貼ってあるんだよ」
「「ええっ!?」」
それには、私も驚いた。
いつの間に、リーダーのポスターなんてできてたんだろう?
二人で歩いてる時、立ちどまってこちらを見ている人たちがいたのは、そのせいだったのね。
「その猫の置物は、タダで上げるから、そうだね。
これにサイン書いてくれないかい?」
おばさんは、えんじ色の布袋から古びた革の財布を取りだし、それに挟んでいた写真をリーダーに渡した。
写真には、おばさんと恐らくご主人だろう男性、そして二人の間に高校生だろう顔立ちのよい女の子が映っていた。
驚いたことに、彼女は黒人だった。
おばさんも旦那さんも白人だから、きっと里親なのだろう。
「可愛いだろう?
メルってんだよ」
「へえ、メルですか。
俺の娘も同じ名前です」
「えっ、そうなのかい?
娘さんがいる年には見えないけどね。
ええと、これ、これでサインと、それから「メルさんへ」って書いてくれないかい?」
おばさんは、リーダーに古びたボールペンを渡した。
「ああ、書くものは持ってます」
リーダーはそう言うと、懐からペンを取りだす格好をした。
横に並んだ私には彼の手に、突然その銀色のペンが現われたのが見えた。
彼はそのペンで、写真の裏にさらさらと何かを描いた。
銀色のインクで書かれたそれは、丸の上に三角が二つ載った、『ポンポコ商会』のマークだった。
その横に、フランス語らしい文字が書いてある。
「あれ?
リーダー、フランス語書けたの?」
「まあ、なんとか」
リーダーから写真を受けとったおばさんが声を上げる。
「まあ、変なサインだねえ。
でも、娘が喜ぶよ」
お店から離れると、私はリーダーに話しかけた。
「あれって、シローのサインじゃないよね。
『ポンポコ商会』のマークでしょ」
「まあいいんじゃない?
あれでも喜んでくれたんだから」
「ホント、子供の様なことするのね!」
私は笑いながら、彼と腕を組んだ。
「ちょ、ちょっと柳井さん――」
「子供は、お姉ちゃんの言うことを聞きなさい!」
小鳥が鳴く公園の中を歩きながら、私は心から笑った。
◇
その日の夕方、なぜか地味な背広姿のリーダー、燕尾服姿の後藤、遠藤と紅いドレスの上にハーフコートを羽織った私は、ホテルが用意してくれたリムジンから降りた。
目の前には伝統を感じさせる石造りの大きな建物がある。
ここが今日の会見場となる。
リムジンの運転手によると、かつて王族の離宮だったとか。
執事らしき老人が出てきて、ぶ厚い絨毯が敷かれた広いフォイヤー、廊下を通り、広間に通される。
そこにはすでに多くの人が集まっており、みんなフォーマルな格好をしていた。女性たちが身に着けた色とりどりのドレスが、豪奢なシャンデリアが広げる光に輝き、華やかな雰囲気を醸しだしていた。
取りたててきらびやかな衣装を身に着けた若い女性と、彼女をエスコートする、鷲鼻の青年が近づいてきた。
「ふふ、異世界との関係者は、もうちょっとマシなものをお召しになっていると思ってましたわ」
若い女性は挨拶もなく、こちらを見下すようなそぶりで、いきなりそう言った。
彼女は、ダイヤをちりばめたティアラや、親指の先ほどもある大きな宝石をつけたペンダントを身に着けている。
「ははは、東洋の田舎者に、そんなことを期待してはいけないな」
鷲鼻の男性が、肩をすくめる。
「ああ、これは失礼。
申し遅れましたが、私、ルイと言います。
ストーナン家の末席を汚すものです。
そして、こちら、私の婚約者であるマリアです。
彼女は、ブルボン家の血をひく者です。
以後お見知りおきを」
私は、こちらを馬鹿にしてきた彼らに挨拶する必要を感じなかった。
しかし、リーダーは違ったようだ。
「お嬢様、そろそろ用意なさってはいかがかと」
私はリーダーが言っていることが分からなかったけれど、とりあえず頷いた。
「そ、そうね」
彼が小さく指を鳴らすのが見えた。
青年に「マリア」と紹介された娘が、ぎょっとした顔をして、こちらを見ている。
「あ、あなた、それ……」
彼女が、震える指を私へ伸ばしている。
何のことか分からない私は、つっ立ったままだ。
「社長、ティアラとペンダントが――」
右側にいた後藤の声がする。
手で頭に触れると、ティアラが載っている。
見下ろすと、胸にキラキラ光るペンダントがあり、その中心には拳ほどもある赤い宝石が妖しい光を放っていた。
なるほど、リーダーがこの赤いドレスを買うよう言ったのは、この宝石と合わせるためだったのか。
「ふん、そんなでかい宝石があるかっ!
どうせ偽物だろう!」
青年が、私のペンダントに手を伸ばしかけた。
「それ以上は見過ごせませんな」
厳しい声がする。
そちらを見ると、知人の顔があった。
「ハーディ卿!」
ハーディ卿はアメリカに住む大富豪であり、リーダーや私とは旧知の仲だ。
彼はこちらにウインクすると、いつになく厳しい口調で言った。
「ルイ君、相変わらずの不作法ですな。
お婆様がこれを見たら、どれほど悲しまれるか」
「ぐっ、ハーディ卿――」
青年は、悔しさに顔を歪めている。
「それから、その宝石は本物ですぞ。
私がすでに調べてあります」
ハーディ卿のその言葉を聞いた青年が、我慢しきれず声を上げる。
「馬鹿なっ!
それが本物なら、世界最大のルビーだぞ!」
彼の叫び声で、周囲の人々がこちらに注目する。
「その通りです。
まだ、公式には登録されていませんが、間違いなく世界最大のルビーですよ」
「そ、そんな――」
マリアはブルブル震えている。
「それから、そのルビーを囲む石は、『枯れクズ』ですな。
国家単位でしか売ってもらえないという、貴重な異世界素材です」
「「「おおおっ!」」」
周囲の人々から歓声が上がる。
「あれが噂の?」
「綺麗ね、内側から光ってるみたい」
「虹色の光だね」
そこでリーダーが、私の恐れていた言葉を口にする。
「では、お嬢様、ダンスの用意を」
彼は、執事役に徹するようだ。そのため、珍しく頭の布を外している。
「後藤様、よろしくお願いします」
リーダーの声で、後藤が私の手を取る。
「後藤、あなた、ダンスはできるの?」
「社交ダンスをかじったくらいです」
ホールの中央に出てきた私と後藤に、人々の視線が集まる。
なぜか、私たちの隣には、互いに腕を組んだ、ルイとマリアが立っている。
「田舎者め!
目にもの見せてやる」
ルイのそんな声が聞こえてきた。
ホール後ろの演奏スペースに控える奏者たちが、弦楽器を鳴らし始める。
ルイとマリアが、滑らかに踊り始めた。
後藤が、私をリードし踊りはじめる。
私はそのリードについて行くのがやっとだ。
後藤は、「かじったくらい」という彼の言葉を超えて、ダンスが上手かった。
だが、彼が私に合わせていることもあり、私たちの踊りは、ルイとマリアのペアとは比べものにならない。
「なんだ、それは?
猿の踊りか?」
踊りながら近くに来たルイが残した言葉に、思わず悔し涙がこぼれそうになる。
そのとき、リーダーの念話が聞こえた。
『後藤さん、柳井さん、聞こえますか?』
私と後藤は目を合わせ、組んだ手を少し挙げた。
『しばらく体の力を抜いて、俺に任せてください』
「きゃっ!」
私が声を漏らしたのは、後藤の動きが急に早く鋭くなったからだ。
彼は、驚いた顔をしている。
私の身体は、自分の意思とは関係なく、さらに早い動きで後藤の動きに応えた。
回転する視界の端に、驚愕の表情を浮かべたルイの顔が映る。
それを見て、私はやっと体の力を抜いた。
自分の手が足が、素早く動き、円運動を形づくっていく。
私は、まるで蝶になり、空を舞っている気分だった。
いつの間にか、会場にいる人々が全員こちらに注目している。ルイとマリアは途中で踊りを止めていた。
曲が終わり、私と後藤が礼をすると、会場から割れんばかりの拍手が湧いた。
袖に下がると、リーダーが冷たい濡れタオルを渡してくれる。
「二人とも、最高にカッコよかったですよ」
私は、彼の耳元に口を持っていき囁いた。
「シロー君、あれ、どうやったの?」
「ふふふ、噂によると、ルイはアマチュア部門とはいえ、ヨーロッパ選手権で優勝するほどのダンサーだそうです。
だから、こちらは、世界チャンピオンの動きをアレンジして使いました」
「よ、よくそんな事ができたわね!」
「まあ、点ちゃんに掛かれば、こんなものですよ」
リーダーは、蚤の市で自分のサインと偽り『ポンポコ商会』のサインを書いた時と同じ、いたずらっ子の笑みを浮かべていた。
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