ポータルズ -最弱魔法を育てようー

空知音

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第十二章 放浪編

第76話 光明

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 ルル、コルナ、コリーダが『くつろぎの家』屋上にあるジャグジーバスに入った夜。
 ルルとコリーダは早い時間に自室で寝てしまった。
 疲れからか、コルナは、かえって眼が冴え眠れないでいた。

 明日もシローの手がかりを探す事を考えると、今は体を休めなければならない。しかし、そう思えば思うほど、眠りは遠ざかっていった。
 そして、『神樹戦役』の際、特別な魔術を習得するため、猫賢者と洞窟に籠った時の感覚が蘇ってきた。
 それは、無意識が生みだす広大な世界だった。

 久しぶりにその世界に足を踏みいれたコルナは、自分が光の玉となり、何もない空間にふわふわ浮いているを気づいた。
 そして、すぐに別の何かが近くにいるのを感じた。
 それはすい寄せられるようにコルナに近づいてきた。
 それは二つの光る玉だった。
 コルナは、直感でそれがルルとコリーダだと気づいた。

『ルル、コリーダ!』

『コルナ?』
『コルナなの?』 

『やっぱり、二人だったのね』

『これは夢かしら?』

 ルルである光の玉が明滅する。

『夢ではないわ。
 恐らく、無意識の世界ね』

『私たちの無意識の世界が繋がったってことかしら?』
 
『そのようよ、コリーダ』

 コルナは、光の玉となった二つの存在を自分に引きよせた。
 光の玉は、一つとなり、大きさは変わらないが、強い光を放った。

『ルル、コリーダ』
『コリーダ、コルナ』
『コルナ、ルル』

 一つになった彼女たちは、お互いの深い気持ちに気づかされた。

『『『シロー』』』

 そのとき、三人が一つになった光の玉は、何かを感じた。
 そして、一つの玉となったまま、その感じたものの方へふわふわと漂いだした。

 ◇

 俺は、虚無から抜けだせずにいた。
 ここには時間がないため、入ってきてからどれほどたつか、それを考えても無意味だった。
 ただ、すでに短くない体内時間が過ぎているのは、点ちゃんと長い間、話しあってきたから間違いないと思えた。

 点ちゃん、この場所に懐かしい感じがするって本当なの?

『(・ω・)ノ ええ、入ってすぐは分かりませんでしたけどね』

 どういうことだろう?

『(?ω?) うーん、どういうことでしょ』

 そういえば、この”場所”、なんか、嫌な感じはしないんだよね。
 むしろ、なにか温かいものを感じる。これも、ここに入ってすぐは分からなかったんだけどね。
 
『ーーー』

 あっ、点ちゃん、今の聞こえた? というか、感じた?

『(;ω;) ……』

 あれ? 点ちゃん、泣いてるの?

『(;ω;) なんかね、悲しくないのに涙が出ちゃうの』

『ーーーー』

 あっ、また聞こえた! いや、感じられた!
 なんだろう、あれ?

『(・ω・) ---』

 えっ! 点ちゃん、それが分かるの? 
 ていうか、それで話してるし。

『ーーーーー』

『(^ω^)ノ -----』

『ーーー』

『(^ω^)ノシ ---』

 点ちゃん、今の何だったの?
 
『(・ω・) 後で説明します。今は、あちらを見てください』

 あちら?
 視界に青い矢印が出た方向に意識を向ける。
 あっ、何か光ってる!

『d(u ω u)  あの光の方向へ進んでください』  

 進めって言われても、どうやれば……お、進もうと思うだけで近づいていくぞ。もしかすると、光の方が近づいてきているのかもしれないけど。

 やがてその光の玉は、俺と一つになった。
 光から大量の情報が、こちらに流れこんできた。

 ◇ 

 気がつくと俺は木漏れ日の中にいた。
 どうやら、ポータルから聖樹様の根元に「吐きだされた」らしい。

 聖樹様、いや、今はポータルの神樹様となった存在は、話かけても答えてくれない。
 まだ、変身したときの消耗から回復していないのだろう。 

『(・ω・)ノ ご主人様、まずあれやってみないと!』

 俺は、何をすべきかすでに分かっていた。
 セルフポータルを発動する。

 意識の中に、揺れ動く短冊のようなものが見えてくる。
 一つ、二つ、三つ、……。短冊は十枚ある。
 それが一つ一つの世界に対応していることになる。

 まず、『初めの四人』の故郷である地球世界。
 アリストがあるパンゲア世界。
 様々な獣人が住むグレイル世界。
 科学が発達し巨大な学園都市を抱えたアルカデミア世界。
 緑にあふれ、エルフ、ダークエルフ、フェアリスが住むエルファリア世界。
 空に浮かぶ天竜国があるドラゴニア世界。
 ドワーフ族と人族が住むスレッジ世界。
 そして、召喚により訪れた田園都市世界。
 男性だけの国、女性だけの国が争っていた結びの国世界
 魔術がさかんな、ここボナンザリア世界。

『(^▽^)/ やったーっ!』   

 とうとう、ポータルズ世界群への扉が開いたのだ!

 点ちゃん、ありがとう!
 点ちゃんがいたから、なんとかこの世界群が救えそうだよ。

『(・ω・)ノ じゃ、アリストへ帰りましょうか!』

 いや、ちょっと待ってね。
 まず、エルファリアへ行くよ。

『(・ω・) ルルちゃんたち、ご主人様を待ってると思うけど』

 それはそうなんだけどね、この行く先は変えられない。
 それにまずは、この世界にきちんとお別れしないとね。

『(^ω^) そうですね。ご主人様が珍しく常識的な行動を――』

 いや、俺っていつでも常識的だよね。

『(; ・`д・´)つ そんなことあるかーっ!』
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