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空知音

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第二章 獣人世界グレイル編

第32話 けじめ

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獣人会議が招集した連合軍は、瞬く内に大陸南部を席捲した。


猿人が狐人領攻撃に失敗してわずか一か月後には、大陸南東から南西まで連合軍が制圧してしまった。

獣人会議では大陸南部を東域、中央、西域の三地区に分け、それぞれに総督府を置くことが決まった。

総督には、獣人会議が選出した者が選ばれる。

今は東から、熊人、猫人、犬人が総督を務めている。

連合軍の一部は、中央部に残り、周辺に睨みを利かせる役割を担う。

猫賢者もサポート役として、中央部に常駐することになった。

もっとも彼の場合、食道楽を極めるために、今まで入れなかった土地を食べ歩きたい、という目的が大きかったようだが。

因みに、ワンニャン亭のゴールデン・スライムのレシピも彼の手によるものだった。

猿人はその多くが、彼らの滅ぼした、大陸西部地域の復興に当たることになった。

また、通常の税に加え、家族を失った獣人たちを支えるための基金にも出資することとなった。

高い税と労役の負担で、猿人たちの暮らしは豊かとはいえないものになった。


そんな彼らは、内的にも少しずつ変わり始めていた。

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大陸西部、ある復興地区の一日を見てみよう。


ここは、かつて狸人族が住んでいた土地である。

大陸中に散らばっていた、ほんの数人の狸人族が再び集まり、しっかりした土の家に住んでいる。
その家は、どの地方にも見られない形をしていた。

まだ朝日が昇ってすぐなのに、村では活気のある声が響いていた。

畑では、なぜか遥か遠く大陸東部から移り住んだ猿人たちが働いていた。

若い狸人の領主が通りかかると、皆が作業の手を止めて最敬礼している。

しかし、この領主、少年とでもいった方がよい年に見える。

そして、その傍らには、猫人族の少女がまとわりついていた。

「ポン太。 今日のところは、これくらいでいいんじゃない?」

「また、すぐ遊ぼうとする。 
ミミ、これは僕たちだけのためじゃないんだよ」

「だって、せっかく旅行に来たのに、観光もしてないじゃん」

「あのねー、旅行じゃないの。 
この地の復興を依頼されたんだよ」

「えーっ。 仕事は仕事、遊びは遊び。 
きちんと、区別をつけなきゃ」

猫族の少女が、ヘンテコ理論で少年を説得しようとしている。

「いい加減なこと言っちゃだめだよ」

「でも、シロー見てよ、シロー。 
木陰でゴロゴロしたり、コルナ様の尻尾をモフモフしてばかりいるじゃない」

「あのねえ。 リーダーは、この村の家を全部建てたんだよ。 
井戸も掘ってくれた。
きちんと仕事してるから、君とは違うの」

「えー?  私も働いてるよ」

「ああ、もう、いいからいいから」

何か言っても、謎理論を聞かされるだけだと思ったのだろう。
少年は、少女の言葉に取り合わなかった。


-----------------------------------------------------------------

夕日が照らす広場で、久しぶりの再会を喜ぶ男女の姿があった。

「ジーナ! 生きていてくれたのか」

「ゼロス・・会いたかった」

幼馴染の猿人二人は、抱き合って再会を喜んだ。

互いに、ひとしきり近況を報告し合った後、ゼロスが言いたかったことを告げた。

「ジーナ、俺と結婚してくれ。 
そして、東に帰ろう」

シーナと呼ばれた若い猿人の女性は、そんなゼロスの様子をじっと見ていた。

「ゼロス。 今、幸せ?」

「ああ、もちろんだとも。 
君に会えたんだ。 
幸せに決まってるだろ」

「じゃあ、私は貴方と一緒には行けない。 
ごめんなさい」

「な、なんでだ? 
君は俺のことが好きじゃないのか?」

「大好きよ。 
でもね、だから、一緒に行けない」

「なぜ?」

「ゼロス。  あなたさっき、私がいて今が幸せって言ったわよね」

「言ったけど、それが?」

「ここは、かつて何があった場所か、分かってる?」

「え?  知らないけど・・」

「ここはね、狸人族が住んでいた土地なの」

「狸人族・・あの滅んだ部族か」

「滅んだんじゃないの。 
猿人族が、滅ぼしたのよ」

「そ、それは・・」

「猿人族は、この場所で狸人族の幸せを踏みにじったの」

「・・・」

「私達は北に連れていかれた時、もう少しで他種族の獣人達に殺されるところだった。
それを救ってくれたのが、誰だと思う?」

ゼロスは、言葉も無く黙っている。

「ここの領主をしている、ポルナレフ様よ。
彼は狸人なの。
こうして私があなたと会えるのも、彼のおかげなの」


「ジーナ・・」

「私達は、これまで自分達がやってきたことを知らなくてはいけない。
そして、自分ができることで、償わないといけないの。
たとえ、どんなに時間がかかったとしてもね」

ゼロスは黙り込むと、じっと考え込んでいた。

「お前がいなくなった時、俺は胸を掻きむしるほど悲しかった。
あれが、狸人族の感じたものだったとしたら・・」



暗くなってきた景色の中で猿人族の青年は、悄然と立ち尽くすのであった。
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