ポータルズ -最弱魔法を育てようー

空知音

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第二章 獣人世界グレイル編

第35話 しばしの別れ

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ポータルを渡る前日、ワンニャン亭で、パーティー解散の宴を開いた。


ミミがお店を貸し切りにしてくれて、アンデを含めギルドの主要メンバーも参加している。

聖女舞子とピエロッティ、コルナとコルネもいる。

種族を越えた、にぎやかな打ち上げとなった。

「ああ、アンデ。  正式に、犬人族の族長になったんだって?
 おめでとう」

俺は、アンデの族長就任を祝った。

「ああ、族長って言っても、次が決まるまでの繋ぎみたいなもんだ。
だから、ギルマスは続けるぞ」

裏切り者のキャンピーは、前族長の血縁者だった。
前族長は、その責をとって辞任した。

「コルネ様も、獣人会議議長就任おめでとうございます」

「ありがとう。 お姉ちゃんに負けないようにがんばる」

食事が美味しいこともあって、みんな上機嫌である。

「ミミ、ポル、今までありがとう。
『ポンポコリン』は今日で解散だけど、君たちのことは忘れないよ」

「他人行儀なこと言わないの。 
それより、シローは出発の準備で忙しいでしょ。
解散の手続きは、私とポン太でやっておくからね」

「ミミ、ありがとう。 
それに、今日の食事、すごくおいしいよ。
お母さんとお父さんに、お礼を言っておいて」

「うん!」

まあ、湿っぽくなるより、元気な方がいいよね。

「シローさん。 僕を助けてくれてありがとう。
冒険者になれたのも、シローさんのおかげです。
小さいながら狸人の村が再興できて、本当に夢のようです。
僕、僕・・・」

ああ、湿っぽくなっちゃったよ。

俺は涙が止まらないポルの頭を撫でながら、こう言ってやった。

「冒険者になれたのも、村の再興も、君自身の力だよ、ポル」

俺の言葉で、彼の涙は、ますます止まらなくなった。

「あー、もう。 男の子なんだから、泣かないの」

ミミがポルの頭を撫でている。
俺がいなくなっても、この二人なら大丈夫だろう。


その後も、みんなの楽しい笑い声に包まれた宴会は深夜まで続いた。

------------------------------------------------------------------

出発の朝、史郎は舞子が宿泊している屋敷まで迎えに来た。


街はずれにある庭付きの大きな屋敷は、前族長が聖女に譲渡したものである。

獣人世界での舞子の家は、これからここになる。

「史郎君、おはよう」

後ろにピエロッティを従えた舞子が出てくる。
フリル付きの白いドレスが彼女に似合っており、俺は眩しかった。

ギルドで手配した四頭立ての馬車が屋敷の庭に入ってくる。

御者は、なんとアンデである。
いつもと違い、フォーマルな黒服に身を包んでいる。

「聖女様。 お迎えに上がりました」

彼は、舞子のために客車のドアを開ける。

「シロー。 お前はこっち」

舞子とピエロッティが客車に乗ると、俺はアンデの隣に腰掛けた。

これって、二人の扱い、違い過ぎない?


馬車なんて大げさだな、と思ったのは屋敷を出て町に入るまでだった。

町の入り口には大きな横断幕があり、そこにはこう書かれていた。


  聖女の町、ケーナイへようこそ


町に入ると、ものすごい数の獣人が道を埋め尽くしていた。

「来たぞ! 聖女様だ!」

「聖女様、万歳!」

「聖女様ー!」

お爺さん、お婆さん達は、すでに平伏している。

群衆が投げる白い花が舞う中を、馬車はゆっくり進んでいく。

舞子は、窓から手を振っている。

馬車は、ポータルを地下に持つ建物の前で止まった。

そこには、演台がしつらえてあった。

ピエロッティの介添えで馬車を下りると、舞子は演台に上がった。

辺りがシーンとする。

「みなさん。 私は自分では意図せず、この世界へやって来ました。
そんな私を犬人族の方々や他の獣人の方々が助けてくれました。
だから、こうして生き延びることができました。
そして、この世界で獣人の方々と触れ合ううちに分かったのです。
この世界こそ、私の居場所であると」

物凄い拍手と歓声が町を包む。

少ししてそれが収まると、聖女が再び話し始める。

「今日、私は元の世界に帰りますが、近いうちに必ずここに戻ってきます。 
なぜなら・・」

舞子は、ここで一拍置いた。

「なぜなら、ここが私の故郷なのですから」

群衆の興奮は、最高潮に達した。
皆の気持ちが、一つになっている。

「大変な時にあるこの大陸を、種族の違いを乗り越えて、皆さんが良い場所にしていくとこを私は信じています。
では、しばしの別れを。
また、お目にかかりましょう。」

そこには史郎に頼るだけの、か弱い少女はもういなかった。


少女の殻をやぶり、美しい女性へ成長した、本物の聖女がいた。

------------------------------------------------------------------

史郎、舞子、コルナは、ポータルのある部屋で、最後の別れを惜しんでいた。


見送りは、アンデ、コルネの二人だ。
俺はせめて最後に、ミミとポルには声をかけたかったが、彼らは姿も見せなかった。

獣人の長たちは、全員が見送りを望んだが、部屋が狭いという理由で却下された。

アンデは、思い出したように紙包みを渡してきた。

「これは、アリストのギルマスへ渡してくれ。
ギルドの機密が入ってるから、覗くなよ」

おいおい、紙包みに機密ですか。
まあ、これなら気づかれないだろうけどね。

「じゃ、元気でやれよ。 
お前は、ずっとケーナイのギルメンだぜ」

俺とアンデは、固く握手した。

横では、コルネがピエロッティに話しかけていた。

「陰陽の従者様、聖女様をよろしくお願いいたします」

コウモリ男、いや、すでにピエロッティとなった男は、それに深く頷いた。

「お姉ちゃん、シローさんと仲良くね」

「もちろんよね、お兄ちゃん」

「史郎君、どういうこと?」

おいおい、ここにきて揉めるのは止めてくれ。

俺が左手をコルナ、右手を舞子と繋ぐと、二人は静かになった。

ここに来た時に手続きをしてくれた、犬人の男性が声を掛けてくる。

「では、どうぞ」



史郎たち三人は、ポータルに足を踏み入れた。
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