ポータルズ -最弱魔法を育てようー

空知音

文字の大きさ
100 / 607
第三章 学園都市世界アルカデミア編

第2話 首輪

しおりを挟む

貴賓室で待つ史郎たちは、やりたい放題していた。


マウシーが出て行った後、ミミはメイド服の女性に、お菓子やらジュースやら大量に持ってこさせた。

まあ、余ったら点ちゃん収納に入れとけばいいけど、ほどほどにね。

ポルは、やってきたお菓子やジュースをお腹いっぱい食べると、フカフカの大型ソファーにうつ伏せに寝そべって「こんなに幸せで、いいのでしょうか~」って言っている。

コルナはソファーの上で俺に胡坐を組ませ、その上に後ろ向きに座ってジュースを飲んでいる。

なんじゃ、この光景は。 
点ちゃん1号に、乗ってるときみたいだな。

点ちゃんは、マウシーが残していった「ノ」の字形の口ひげに夢中である。

1時間ほどすると、やっと獣人保護協会から人が来た。

中年の女性と、若い男性の二人である。 

二人とも、パリッとしたスーツのようなものを着こなしていた。

「失礼します。 
獣人保護協会から来たマーサと申します。
彼は、技術者のトニーです」

俺が挨拶を返すと、トニーは、下げていたアタッシュケースから、輪投げに使う輪のようなものを3つ取り出した。

「ちょっと、調べさせてくれ」

俺はそう言うと、輪っかを手に取る。

点ちゃん、何か分かる?

『・・・脳の働きを、制御しちゃうみたい。
時間をかけて、記憶を書き換えるようになってる。
位置情報発信や、音声情報発信の機能も付いてるー』

なるほどね。 じゃ、シールドで覆っておくかな。

『ご主人様ー。 着けた後で、外しちゃう方が簡単だよ』

お、それもそうだ。
そっくりなものを、点魔法で作って着けておけばいいんだもんね。

「では、お願いしていいかな」

俺は輪っかを若い男に返した。

彼は、それをコルナの首元に持っていくと呪文を唱える。
カチリという音を立てて、首輪がはまる。

その後、ミミとポルにも首輪を着けると、二人はそそくさと帰っていった。

ハンカチで口元を押さえた、マウシーが入ってくる。

部屋の中をきょろきょろ見回しているのは、片方の口ひげを探しているからだろう。

「心ばかりのお詫びに、ギルドから宿泊施設を提供いたします」

彼はそういうと、地図と小さな布袋を渡してくる。

「ご用の際は、何なりと申しつけください。
では、失礼します」

彼は去り際まで、きょろきょろ辺りを探していた。


史郎たちは、お菓子やジュースを点ちゃんの中にしまい込むと外へ出た。

---------------------------------------------------------------------

外から見たギルドの建物は、全体が白い素材でできていた。

町は、驚くほど地球の都会に似ていた。

違うのは、まずビルの高さである。

遥か上方までの高層建築が林立している。

しかも、そのビルには、窓らしきものが無い。
ただ、のっぺりした白い壁面があるだけである。

文明でいうと、明らかに地球より進んでいそうだ。

通りを歩く人は少ない。
長さ2mくらいの卵型のカプセルが、道路の少し上を音もなく移動している。

移動用の魔道具だろう。

俺たちは、ギルドでもらった地図に沿って、目的地に向かった。
通行人の半分くらいは、色違いだが形が同じ服を着ている。

色違いのローブを羽織っている者も多い。

男女問わず、同じ形の様だ。

地球の町に比べて、驚くほど静かである。

地図が示す場所には、庭付きの大きな平屋があった。

シンプルな箱型で、やはり窓は無い。
途中、ほとんど庭がある家を見なかったので、この家は高級な住宅なのだろう。

もらった布袋の中に入っていたのは、二つの指輪だった。
一つをドアにかざすと、壁にパッと穴ができる。

中に入ると、一段下がって大きなワンフロアーがあり、その奥に扉がいくつかあった。

後ろを振り返ると、外の庭が見える。 
どうやらマジックミラーになっているらしい。

茶色い、落ち着いた色の内装になっている。

天井全体が、光っている。
これが、照明器具だろう。

俺たちは、床と一体となったソファーに座った。

俺が指を立てて口に当てたので、皆黙っている。

点ちゃん、調べてくれる?

『おっけーでーす』

10秒もせずに調べ終わったようだ。 
さすが点ちゃん。

『盗聴用が10、映像用が4、用途不明が2あったー』

じゃ、全部消しちゃってね。

『はーい』

指を口から話して頷くと、みんな、ほっとした顔をした。

「ぷはーっ」て言ってるのはポルか。 息止めてたんだね。

「とりあえず、盗聴なんかの機械は全部はずしといたよ。
首輪の効果で、ぼおっとしてないか?」

「大丈夫だよ、お兄ちゃん。 ありがとう。 
でも、なんともえげつないわね、この世界は」

コルナが指摘する。

盗聴器と一緒に、三人の首輪も外しておいた。
これは壊さずにおいて、点魔法の箱に入れて管理することにした。

「まあ、獣人をさらっている時点で、かなりやばい世界っていうのは分かってたけどね」



史郎は、この世界で一人の少年を探し出す困難に、改めて気づくのだった。
しおりを挟む
感想 6

あなたにおすすめの小説

私の息子を“愛人の子の下”にすると言った夫へ──その瞬間、正妻の役目は終わりました

放浪人
恋愛
政略結婚で伯爵家に嫁いだ侯爵令嬢リディアは、愛のない夫婦関係を「正妻の務め」と割り切り、赤字だらけの領地を立て直してきた。帳簿を整え、税の徴収を正し、交易路を広げ、収穫が不安定な年には備蓄を回す――伯爵家の体裁を保ってきたのは、いつも彼女の実務だった。 だがある日、夫オスヴァルドが屋敷に連れ帰ったのは“幼馴染”の女とその息子。 「彼女は可哀想なんだ」 「この子を跡取りにする」 そして人前で、平然と言い放つ。 ――「君の息子は、愛人の子の“下”で学べばいい」 その瞬間、リディアの中で何かが静かに終わった。怒鳴らない。泣かない。微笑みすら崩さない。 「承知しました。では――正妻の役目は終わりましたね」

莫大な遺産を相続したら異世界でスローライフを楽しむ

翔千
ファンタジー
小鳥遊 紅音は働く28歳OL 十八歳の時に両親を事故で亡くし、引き取り手がなく天涯孤独に。 高校卒業後就職し、仕事に明け暮れる日々。 そんなある日、1人の弁護士が紅音の元を訪ねて来た。 要件は、紅音の母方の曾祖叔父が亡くなったと言うものだった。 曾祖叔父は若い頃に単身外国で会社を立ち上げ生涯独身を貫いき、血縁者が紅音だけだと知り、曾祖叔父の遺産を一部を紅音に譲ると遺言を遺した。 その額なんと、50億円。 あまりの巨額に驚くがなんとか手続きを終える事が出来たが、巨額な遺産の事を何処からか聞きつけ、金の無心に来る輩が次々に紅音の元を訪れ、疲弊した紅音は、誰も知らない土地で一人暮らしをすると決意。 だが、引っ越しを決めた直後、突然、異世界に召喚されてしまった。 だが、持っていた遺産はそのまま異世界でも使えたので、遺産を使って、スローライフを楽しむことにしました。

【完結】スーパーの店長・結城偉介 〜異世界でスーパーの売れ残りを在庫処分〜

かの
ファンタジー
 世界一周旅行を夢見てコツコツ貯金してきたスーパーの店長、結城偉介32歳。  スーパーのバックヤードで、うたた寝をしていた偉介は、何故か異世界に転移してしまう。  偉介が転移したのは、スーパーでバイトするハル君こと、青柳ハル26歳が書いたファンタジー小説の世界の中。  スーパーの過剰商品(売れ残り)を捌きながら、微妙にズレた世界線で、偉介の異世界一周旅行が始まる!  冒険者じゃない! 勇者じゃない! 俺は商人だーーー! だからハル君、お願い! 俺を戦わせないでください!

猫好きのぼっちおじさん、招かれた異世界で気ままに【亜空間倉庫】で移動販売を始める

遥風 かずら
ファンタジー
【HOTランキング1位作品(9月2週目)】 猫好きを公言する独身おじさん麦山湯治(49)は商売で使っているキッチンカーを車検に出し、常連カードの更新も兼ねていつもの猫カフェに来ていた。猫カフェの一番人気かつ美人トラ猫のコムギに特に好かれており、湯治が声をかけなくても、自発的に膝に乗ってきては抱っこを要求されるほどの猫好き上級者でもあった。 そんないつものもふもふタイム中、スタッフに信頼されている湯治は他の客がいないこともあって、数分ほど猫たちの見守りを頼まれる。二つ返事で猫たちに温かい眼差しを向ける湯治。そんな時、コムギに手招きをされた湯治は細長い廊下をついて歩く。おかしいと感じながら延々と続く長い廊下を進んだ湯治だったが、コムギが突然湯治の顔をめがけて引き返してくる。怒ることのない湯治がコムギを顔から離して目を開けると、そこは猫カフェではなくのどかな厩舎の中。 まるで招かれるように異世界に降り立った湯治は、好きな猫と一緒に生きることを目指して外に向かうのだった。

転移特典としてゲットしたチートな箱庭で現代技術アリのスローライフをしていたら訳アリの女性たちが迷い込んできました。

山椒
ファンタジー
そのコンビニにいた人たち全員が異世界転移された。 異世界転移する前に神に世界を救うために呼んだと言われ特典のようなものを決めるように言われた。 その中の一人であるフリーターの優斗は異世界に行くのは納得しても世界を救う気などなくまったりと過ごすつもりだった。 攻撃、防御、速度、魔法、特殊の五項目に割り振るためのポイントは一億ポイントあったが、特殊に八割割り振り、魔法に二割割り振ったことでチートな箱庭をゲットする。 そのチートな箱庭は優斗が思った通りにできるチートな箱庭だった。 前の世界でやっている番組が見れるテレビが出せたり、両親に電話できるスマホを出せたりなど異世界にいることを嘲笑っているようであった。 そんなチートな箱庭でまったりと過ごしていれば迷い込んでくる女性たちがいた。 偽物の聖女が現れたせいで追放された本物の聖女やら国を乗っ取られて追放されたサキュバスの王女など。 チートな箱庭で作った現代技術たちを前に、女性たちは現代技術にどっぷりとはまっていく。

バーンズ伯爵家の内政改革 ~10歳で目覚めた長男、前世知識で領地を最適化します

namisan
ファンタジー
バーンズ伯爵家の長男マイルズは、完璧な容姿と神童と噂される知性を持っていた。だが彼には、誰にも言えない秘密があった。――前世が日本の「医師」だったという記憶だ。 マイルズが10歳となった「洗礼式」の日。 その儀式の最中、領地で謎の疫病が発生したとの凶報が届く。 「呪いだ」「悪霊の仕業だ」と混乱する大人たち。 しかしマイルズだけは、元医師の知識から即座に「病」の正体と、放置すれば領地を崩壊させる「災害」であることを看破していた。 「父上、お待ちください。それは呪いではありませぬ。……対処法がわかります」 公衆衛生の確立を皮切りに、マイルズは領地に潜む様々な「病巣」――非効率な農業、停滞する経済、旧態依然としたインフラ――に気づいていく。 前世の知識を総動員し、10歳の少年が領地を豊かに変えていく。 これは、一人の転生貴族が挑む、本格・異世界領地改革(内政)ファンタジー。

異世界に転移したら、孤児院でごはん係になりました

雪月夜狐
ファンタジー
ある日突然、異世界に転移してしまったユウ。 気がつけば、そこは辺境にある小さな孤児院だった。 剣も魔法も使えないユウにできるのは、 子供たちのごはんを作り、洗濯をして、寝かしつけをすることだけ。 ……のはずが、なぜか料理や家事といった 日常のことだけが、やたらとうまくいく。 無口な男の子、甘えん坊の女の子、元気いっぱいな年長組。 個性豊かな子供たちに囲まれて、 ユウは孤児院の「ごはん係」として、毎日を過ごしていく。 やがて、かつてこの孤児院で育った冒険者や商人たちも顔を出し、 孤児院は少しずつ、人が集まる場所になっていく。 戦わない、争わない。 ただ、ごはんを作って、今日をちゃんと暮らすだけ。 ほんわか天然な世話係と子供たちの日常を描く、 やさしい異世界孤児院ファンタジー。

優の異世界ごはん日記

風待 結
ファンタジー
月森優はちょっと料理が得意な普通の高校生。 ある日、帰り道で謎の光に包まれて見知らぬ森に転移してしまう。 未知の世界で飢えと恐怖に直面した優は、弓使いの少女・リナと出会う。 彼女の導きで村へ向かう道中、優は「料理のスキル」がこの世界でも通用すると気づく。 モンスターの肉や珍しい食材を使い、異世界で新たな居場所を作る冒険が始まる。

処理中です...