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第三章 学園都市世界アルカデミア編
第11話 ミーティング
しおりを挟むタイタニック(待機部屋)の豪華さに呆れていた加藤は、点ちゃん1号に乗ると、開いた口がふさがらなかった。
点ちゃんとの、「なんじゃこりゃー!」も息が合ってきた。
俺達は、短時間だが、点ちゃん1号のくつろぎ空間を満喫しながら、ギルドから借りている住居まで帰った。
既に、コルナ、ミミも帰っており、見知らぬ男も一人いた。
「ラジ! なぜ、お前がここに?」
「ああ、ボスから言われて来た」
加藤と男は、知り合いの様である。
ポルとテコも合わせると、全員で7人の大所帯である。
夕食時だったので、テーブルの上に、タイタニックから持ってきた、山のような料理を出す。
俺と加藤は、タイタニックでは食事せずにおいた。
そのかわり、多めに注文した料理を、点ちゃん収納に入れて運んで来た。
「お兄ちゃん、学園では、いつもこんなもの食べてたの!」
「何、これ!?」
豪華なコース料理を見て、コルナとミミが呆れている。
「「うわー!」」
ポルとテコは、目を輝かせている。
「じゃ、まずは、食べようか」
「「「頂きまーす!」」」
ここのところ、比較的質素なものを食べていた仲間達は、久々のしっかりした食事に舌鼓を打った。
「学園じゃ、こんなもん食べてんのか……」
ラジと呼ばれた男が、驚いている。
食事が終わると、俺達は今後についてミーティングを行った。
眠くなったテコは、ポルが部屋に連れて行った。
「コルナ、司会役を頼めるか?」
「任せて、お兄ちゃん」
獣人会議に比べると、この人数でのミーティングの司会など、たやすいことだろう。
一つ咳払いすると、コルナがミーティングの開始を伝える。
「では、この世界の獣人をどうやって救うか。
議題は、それでいいのじゃな?」
コルナが、日頃にはない真面目な顔で、人族の三人を見る。
言葉遣いまで、変わっている。
「ああ、それでいいよ」
俺、加藤、ラジが頷く。
「問題は、二つある。
一つ、獣人が首輪によって、自主的に奴隷的な立場にあるということ。
もう一つ、この世界の人々は、獣人がさらわれて来たという事実を知らぬこと」
コルナは、ここでいったん言葉を切り、みんなが頭の中で問題を整理する時間を与えた。
「難しいのは、人々に真実を知らせるにしても、時間は掛けておられんということじゃ」
「どうして?」
ミミが質問する。
「たとえ人々が真実を知ったとしても、それに時間を掛ければ、奴らが証拠隠滅を図りかねん」
「証拠隠滅?」
これは、ポル。
コルナが、答える。
「すべての獣人を抹殺し、証拠を消すということよ。
死人に口なしじゃ」
加藤が口を開く。
「いくらなんでも、そこまでするか?」
まあ、人がいい加藤には、こういう発想は無いだろう。
俺は、獣人世界での情報を出しておく。
「必ずやる。 獣人の世界では、家を燃やし、村ごと獣人をさらってるからな」
「あいつら、そんなことまで!」
ラジは、怒りに震えている。
俺は、続けた。
「それにな、奴らは獣人で人体実験している、という証言がある」
「……」
さすがにここまでくると、ラジも言葉を失わずにはおれない。
加藤など、青くなっている。
「問題は、時間を掛けずに、どうやって大多数の住民に真実を伝えるかだが……」
俺は肝心な点を、ラジに尋ねておく。
「この世界で、獣人を攫ったり人体実験していることが知れ渡れば、何が起こる?」
少し考えていたが、彼はきっぱりした口調でこう言った。
「政府は転覆するだろうな。
あと、関わった者は、極刑に処されるだろう」
「俺は、この国が極端な学歴社会だと、目の当たりにしているが、学歴がある者でも処罰されるか?」
「ああ、そこは間違いない。
身分が高い者には、高い倫理も求められるからな。
追及は、余計に容赦ないものになるだろう」
「なるほどな」
コルナが発言する。
「では、いかに効果的に、しかも、短時間で住民に真実を伝えるかということに、問題は絞られるのじゃな」
俺は、頷いて続けた。
「そこさえクリヤすれば、首輪の問題は、この世界の人々がなんとかしてくれるだろう」
加藤が、心配そうな顔をして確認を求める。
「何かあったとき、首輪が爆発したりはしないのか」
まあ、彼は身をもって、それを経験してるからな。
「今のこところ、そういった首輪は確認されていない」
「しかし、村ごとさらうとか、人体実験とか。
ボスに知らせたらどうなるかな」
「おいおい。 パルチザンが、暴走しないようしてくれよ」
俺は、念を押しておく。
「ああ、そこは何とかしよう。
適当な通信手段があればいいんだが」
「通信手段はなんとかするが、そのためにも、俺をボスに会わせてくれるか?」
「ああ。 場所と時間を、こちらで指定することになるが。
それでいいか?」
「任せる」
ラジに、点をくっつけて念話すればいいのだが、点魔法を知る人数は、なるべく絞りたい。
まあ、情報収集のため、すでに点だけは付けてるけど。
場合によっては、パルチザンと事を構えることになるかもしれないからね。
「では、今回の会合は、ここまでとしよう」
コルナが、閉会を告げる。
ダンは、重たいものでも背負ったような顔をして帰っていった。
この日、加藤は、そのまま泊まることになった。
俺達は、明け方までかかり、アリストで別れて以来体験したことを、語り合った。
久しぶりの親友との会話に、心が満たされる史郎であった。
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