ポータルズ -最弱魔法を育てようー

空知音

文字の大きさ
175 / 607
第四章 聖樹世界エルファリア編

第40話ダークエルフ侵攻3

しおりを挟む
ダークエルフに投降を呼びかける声は、城の前面に展開したエルフの軍勢にも届いた。

両手を上げたダークエルフの兵士達が、森から次々に現れる。
エルフ軍からは、歓声と勝鬨が上がった。

史郎が予想していた通り、若いエルフの指揮官に率いられた一団が、投降したダークエルフ達へ駆け足で近づいていく。

「奴らに、目にもの見せてやれ!」

ヨレヨレで泥まみれの軍服を着たダークエルフの兵士達は、武器も無く、抗える術は無かった。

勢い勇んで駆けよるエルフ兵の前に白髪の老人が現れた。


「貴様、人族だな! 奴らの味方をするなら、生かしてはおかんぞ」

若い指揮官が、目を吊りあげて老人に詰めよる。

「やれやれ。馬鹿な若者は、どこにでもいますな」

老人は、苦笑いしている。
落ちつきはらったその態度に、若い指揮官は一瞬ひるんだが、剣を抜いて叫んだ。

「こいつもろとも、殺してしまえ」

若い指揮官の剣が老人を袈裟懸けにした、と見えたが、それは彼が動いた後の残像に過ぎなかった。

剣を抜いていた者、全員の手首から先が、宙を舞った。
剣を抜いていなかった者も、あっというまに見えない何かに取りおさえられた。

エルフの軍勢から、騎乗した一人の文官が駆けつける。

「リーヴァス様、お手数をおかけします」

「ははは。まあ、彼らには良い教訓になるでしょう」

利き手を失った者は、突然姿を現した三人の獣人が応急手当している。

「なんか、面倒を押しつけられてる気もするけど……」

「ミミ、何言ってるの? リーダーは、二万人の兵士を無力化したんだよ。
ぐずぐず言わずに手を動かす」

「はいはい。もー、ポン太ったら、偉そうなんだから」

リーヴァスの所に、ダークエルフの武人が近づく。彼だけは、腰に剣を差したままである。
胸に手を当て、軽く礼をする。

「名のあるお方とお見受けする。部下の命を助けていただき、感謝する。
私は、プーダと申すもの。是非、お名前をお聞かせねがいたい」

リーヴァスも、軽く会釈をする。

「リーヴァスと申します。部下の方々のことは、お礼には及びませんぞ。
彼らを守るのが、エルフ王からの依頼ですからな」

「依頼……冒険者ですか。冒険者でリーヴァスという名前……。もしや、『雷神リーヴァス』殿では?」

「ははは。誰かが付けた二つ名ですが、確かに私の名ですよ」

「リーヴァス殿、あなたを見こんで頼みがある。是非、私と手あわせ願いたい」

「手あわせ? なぜですかな?」

「わが軍は、既にエルフ軍に降った。しかし、私はどうしても戦ってから身を処したい。
愚か者のたわごととお笑いください」

「私が受けねば、どうするおつもりで?」

「エルフ軍に切りこんで、彼らを一人でも倒します」

「うむ。分かりました。お相手しよう」

「おお! 受けてくれるか。雷神殿ならば、相手にとって不足は無い」

二人は、5mくらいの距離を取って対峙した。

「リーヴァス様、無駄なことは止めてください」

ミミが叫ぶ。

「ミミ、これは彼の武人の血から止められぬもの。黙って見ていなさい」

二人の手が、剣の柄にかかる。

一瞬、二人の姿がぶれたと思ったら、それぞれの位置が入れかわっていた。

「見事!」

ダークエルフの将軍は、そう言うと前のめりに倒れた。

「コルナさん、頼めるかな」

コルナが、プーダに駆けよって治癒魔術を掛ける。

「……大丈夫です」

彼女には、リーヴァスが急所を避けて剣を振るったのがすぐに分かった。

こうして、王城付近で行われた戦闘は全て終わった。

----------------------------------------------------------------------

どうして、戦闘があのようなことになったか、知りたいって?

最初、城に向けて襲いかかった魔獣の群れを闇魔術から解き放ったのは、俺の点魔法だった。
聖属性の魔術を点に付与し、それを魔獣に付けた。
魔獣を操っている闇魔術を、その魔術が打ち消したのだ。

グリフォン隊の上空に現れた飛行獣は、ナルとメルだ。
透明化の魔術をかけたボードにルルが乗りこんでサポートしていた。
ナルとメルがグリフォンのコントロールを奪うとすぐに、俺は彼女らとルルを、『西の島』フェアリスの集落にある、「土の家」の二階に転送した。点魔法の「連結」と「付与 空間」の合わせ技である。

この合わせ技は、『メテオ』を地面に誘導するときにも使った。
一つの点で魔術を吸いこみ、もう一つの点から出したのだ。

ダークエルフには、吸収した『メテオ』を使うと脅したが、実のところ、点に収納した魔術が時間をおいて再び使えるかどうかは、定かでない。
だから、あそこでダークエルフが降参しなかったら、いろいろ面倒な手順が必要になっていた。
結局、その手順は不要になったんだけどね。

点ちゃん、今回も大活躍だったね。

『(^▽^)/いっぱい遊べて楽しかったー』

まあね。いつもの点ちゃんだね。

俺は1号機の中でコケットに横になりながら、明日から、いかにゴロゴロするか、その計画を練っていた。


いつもごろごろする計画を練っている、この史郎という少年、実のところ勤勉なのでは?
しおりを挟む
感想 6

あなたにおすすめの小説

私の息子を“愛人の子の下”にすると言った夫へ──その瞬間、正妻の役目は終わりました

放浪人
恋愛
政略結婚で伯爵家に嫁いだ侯爵令嬢リディアは、愛のない夫婦関係を「正妻の務め」と割り切り、赤字だらけの領地を立て直してきた。帳簿を整え、税の徴収を正し、交易路を広げ、収穫が不安定な年には備蓄を回す――伯爵家の体裁を保ってきたのは、いつも彼女の実務だった。 だがある日、夫オスヴァルドが屋敷に連れ帰ったのは“幼馴染”の女とその息子。 「彼女は可哀想なんだ」 「この子を跡取りにする」 そして人前で、平然と言い放つ。 ――「君の息子は、愛人の子の“下”で学べばいい」 その瞬間、リディアの中で何かが静かに終わった。怒鳴らない。泣かない。微笑みすら崩さない。 「承知しました。では――正妻の役目は終わりましたね」

莫大な遺産を相続したら異世界でスローライフを楽しむ

翔千
ファンタジー
小鳥遊 紅音は働く28歳OL 十八歳の時に両親を事故で亡くし、引き取り手がなく天涯孤独に。 高校卒業後就職し、仕事に明け暮れる日々。 そんなある日、1人の弁護士が紅音の元を訪ねて来た。 要件は、紅音の母方の曾祖叔父が亡くなったと言うものだった。 曾祖叔父は若い頃に単身外国で会社を立ち上げ生涯独身を貫いき、血縁者が紅音だけだと知り、曾祖叔父の遺産を一部を紅音に譲ると遺言を遺した。 その額なんと、50億円。 あまりの巨額に驚くがなんとか手続きを終える事が出来たが、巨額な遺産の事を何処からか聞きつけ、金の無心に来る輩が次々に紅音の元を訪れ、疲弊した紅音は、誰も知らない土地で一人暮らしをすると決意。 だが、引っ越しを決めた直後、突然、異世界に召喚されてしまった。 だが、持っていた遺産はそのまま異世界でも使えたので、遺産を使って、スローライフを楽しむことにしました。

【完結】スーパーの店長・結城偉介 〜異世界でスーパーの売れ残りを在庫処分〜

かの
ファンタジー
 世界一周旅行を夢見てコツコツ貯金してきたスーパーの店長、結城偉介32歳。  スーパーのバックヤードで、うたた寝をしていた偉介は、何故か異世界に転移してしまう。  偉介が転移したのは、スーパーでバイトするハル君こと、青柳ハル26歳が書いたファンタジー小説の世界の中。  スーパーの過剰商品(売れ残り)を捌きながら、微妙にズレた世界線で、偉介の異世界一周旅行が始まる!  冒険者じゃない! 勇者じゃない! 俺は商人だーーー! だからハル君、お願い! 俺を戦わせないでください!

猫好きのぼっちおじさん、招かれた異世界で気ままに【亜空間倉庫】で移動販売を始める

遥風 かずら
ファンタジー
【HOTランキング1位作品(9月2週目)】 猫好きを公言する独身おじさん麦山湯治(49)は商売で使っているキッチンカーを車検に出し、常連カードの更新も兼ねていつもの猫カフェに来ていた。猫カフェの一番人気かつ美人トラ猫のコムギに特に好かれており、湯治が声をかけなくても、自発的に膝に乗ってきては抱っこを要求されるほどの猫好き上級者でもあった。 そんないつものもふもふタイム中、スタッフに信頼されている湯治は他の客がいないこともあって、数分ほど猫たちの見守りを頼まれる。二つ返事で猫たちに温かい眼差しを向ける湯治。そんな時、コムギに手招きをされた湯治は細長い廊下をついて歩く。おかしいと感じながら延々と続く長い廊下を進んだ湯治だったが、コムギが突然湯治の顔をめがけて引き返してくる。怒ることのない湯治がコムギを顔から離して目を開けると、そこは猫カフェではなくのどかな厩舎の中。 まるで招かれるように異世界に降り立った湯治は、好きな猫と一緒に生きることを目指して外に向かうのだった。

転移特典としてゲットしたチートな箱庭で現代技術アリのスローライフをしていたら訳アリの女性たちが迷い込んできました。

山椒
ファンタジー
そのコンビニにいた人たち全員が異世界転移された。 異世界転移する前に神に世界を救うために呼んだと言われ特典のようなものを決めるように言われた。 その中の一人であるフリーターの優斗は異世界に行くのは納得しても世界を救う気などなくまったりと過ごすつもりだった。 攻撃、防御、速度、魔法、特殊の五項目に割り振るためのポイントは一億ポイントあったが、特殊に八割割り振り、魔法に二割割り振ったことでチートな箱庭をゲットする。 そのチートな箱庭は優斗が思った通りにできるチートな箱庭だった。 前の世界でやっている番組が見れるテレビが出せたり、両親に電話できるスマホを出せたりなど異世界にいることを嘲笑っているようであった。 そんなチートな箱庭でまったりと過ごしていれば迷い込んでくる女性たちがいた。 偽物の聖女が現れたせいで追放された本物の聖女やら国を乗っ取られて追放されたサキュバスの王女など。 チートな箱庭で作った現代技術たちを前に、女性たちは現代技術にどっぷりとはまっていく。

バーンズ伯爵家の内政改革 ~10歳で目覚めた長男、前世知識で領地を最適化します

namisan
ファンタジー
バーンズ伯爵家の長男マイルズは、完璧な容姿と神童と噂される知性を持っていた。だが彼には、誰にも言えない秘密があった。――前世が日本の「医師」だったという記憶だ。 マイルズが10歳となった「洗礼式」の日。 その儀式の最中、領地で謎の疫病が発生したとの凶報が届く。 「呪いだ」「悪霊の仕業だ」と混乱する大人たち。 しかしマイルズだけは、元医師の知識から即座に「病」の正体と、放置すれば領地を崩壊させる「災害」であることを看破していた。 「父上、お待ちください。それは呪いではありませぬ。……対処法がわかります」 公衆衛生の確立を皮切りに、マイルズは領地に潜む様々な「病巣」――非効率な農業、停滞する経済、旧態依然としたインフラ――に気づいていく。 前世の知識を総動員し、10歳の少年が領地を豊かに変えていく。 これは、一人の転生貴族が挑む、本格・異世界領地改革(内政)ファンタジー。

異世界に転移したら、孤児院でごはん係になりました

雪月夜狐
ファンタジー
ある日突然、異世界に転移してしまったユウ。 気がつけば、そこは辺境にある小さな孤児院だった。 剣も魔法も使えないユウにできるのは、 子供たちのごはんを作り、洗濯をして、寝かしつけをすることだけ。 ……のはずが、なぜか料理や家事といった 日常のことだけが、やたらとうまくいく。 無口な男の子、甘えん坊の女の子、元気いっぱいな年長組。 個性豊かな子供たちに囲まれて、 ユウは孤児院の「ごはん係」として、毎日を過ごしていく。 やがて、かつてこの孤児院で育った冒険者や商人たちも顔を出し、 孤児院は少しずつ、人が集まる場所になっていく。 戦わない、争わない。 ただ、ごはんを作って、今日をちゃんと暮らすだけ。 ほんわか天然な世話係と子供たちの日常を描く、 やさしい異世界孤児院ファンタジー。

優の異世界ごはん日記

風待 結
ファンタジー
月森優はちょっと料理が得意な普通の高校生。 ある日、帰り道で謎の光に包まれて見知らぬ森に転移してしまう。 未知の世界で飢えと恐怖に直面した優は、弓使いの少女・リナと出会う。 彼女の導きで村へ向かう道中、優は「料理のスキル」がこの世界でも通用すると気づく。 モンスターの肉や珍しい食材を使い、異世界で新たな居場所を作る冒険が始まる。

処理中です...