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第四章 聖樹世界エルファリア編
第45話 島でのバカンス
しおりを挟む史郎とその家族、ミミとポルは『南の島』のポータルを渡り、学園都市世界アルカデミアに到着した。
点魔法で作るコケットの引きわたしは、この休暇が終わってからにした。
今回は、『ポンポコ商会』の慰労も兼ねているから、デロンチョコンビ、パリスとロス、メリンダも連れてきている。
話を聞いたエルフ王とモリーネ達も来たがったが、さすがに保安上の問題から許可が出なかった。
学園都市世界で、ポータルがある島は、以前遊んだ島の二つ隣だった。
遊ぶなら、やはり勝手知ったるあの島がいいだろう。泉の位置なんかも分かってるからね。
俺達はクルーザー型の点ちゃん3号に乗りこみ、海上を島に向かう。
みんな甲板に出て青い海と空を満喫している。ナルとメルが歓声を上げている。肌に当たる、朝の海風が心地よい。
この世界に置いてあった点が蘇ったので、行政府の長メラディス首席と友人のダンにも連絡を入れておく。
二三日はこちらに滞在するつもりだからね。
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目的の島は、海の青、ビーチの白、森の緑が相変わらず美しいコントラストを見せていた。
「「うわー!」」
砂浜に立ったナルとメルが喜んでいる。
まあね。この風景は、理屈ではないよね。
俺は、簡単な土の家を建て、そこにシャワー施設と更衣室を作った。シャワーの水は、水魔術付与で対処する。
パリスの水着を見たロスが衝撃を受けている。彼女は体の線が綺麗で、黒いビキニが似合っている。
「あ、あまり見過ぎないの!」
パリスにおでこを叩かれて、ロスは赤くなっている。
デロリンは本人の希望で、さっそく磯辺に食材を拾いに行っている。
チョイスは俺と一緒に、森の奥にある泉に水くみに行く。俺一人でもなんとかなるんだけど、こういうのは気分だからね。
ビーチに戻ると、パリスとロス、ミミとポルの四人は点ちゃんビーチボールで遊んでいた。
「お兄ちゃん」
振り向くと、水着を着たコルナが立っている。
あれ? この水着って前も着ていた紺のワンピースじゃ……。
あっ! 胸に名前が書いてある。白い布を縫いつけた胸のところに、黒い字があった。
こるな ちゃん
その字がなんと平仮名なのだ。見覚えがある字だから、俺にはすぐ犯人が分かった。
舞子だ。聖女様、一体何やってるの?
しかも、「ちゃん」の文字が小さく書いてあるところに、そこはかとない悪意を感じる。
「どう? 必殺の水着は?」
まあ、確かにある種の人々にとっては「必殺」だろうね。
「とても似合ってるよ(?)」
しょうがないから、そう言っておく。
コルナは、それで満足したのか、ピーチボールの輪に加わりにいった。
「シロー」
ルル、ナル、メルも水着に着替え終わった様だ。
ナルはエメラルド色のワンピース、メルはルビー色のワンピースだ。それぞれの目の色に合わせたんだね。よく似合ってる。
ルルは、白いワンピースを着ていた。それは、驚くほど彼女の美しさを引きたてていた。
「ルル……。綺麗だよ」
心の声が漏れてしまう。
ルルは恥ずかしそうにうつむくと、俺の手をとり、海に向かって駆けだした。
「わーい!」
娘達がその後に続く。
史郎達は、波打ち際で水をかけあって遊んだ。
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泳ぎを知らない者が多いので、俺が手を取って教える。
ナルとメルは、すぐに泳げるようになった。
深いところに行かないようには、言ってあるけどね。
なかなか泳ぎが覚えられないのは、意外にもメリンダだった。スポーツなら何でもできそうに見えるけど。ポルとミミが付きっきりで泳ぎを教えている。
パリスとロス、チョイスはかなり沖の方まで出ている。何かの時は点で引っ張り上げるから大丈夫だろう。
メリンダがなんとか泳げるようになってきた頃には、お昼時になっていた。
点ちゃんネットを獲物で一杯にした、デロリンが帰ってきた。
貝、エビ、カニと盛りだくさんだ。
俺は、以前に作ったバーベキュー用の点ちゃんコンロを出した。皆が拾ってきてくれた流木に火魔術を付与して、火をおこす。
調理セットを土魔術で作ったテーブルの上に並べる。
デロリンがさっそく調理を始めた。
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みんなお腹が空いている。
焼けた食材にデロリン特製のタレを塗ると、その香りでみんなのお腹が鳴りだした。
ジュジューッと焼ける音がする。
「もう、我慢できない!」
ミミが叫んでいる。それを見て、みんなが笑った。各自に皿とフォークを配り、料理を盛りつける。
「では、みなさん。ご一緒に」
「「「頂きまーす!!」」」
みんな堰を切ったように料理に手を伸ばす。
「うまっ! 何、これ!」
「はーっ! 幸せだー」
歓声を上げながら食事が進む。
泉の水とエルファリアのジュース、各自が希望する方を冷やしたコップで出す。
「くぅ~。美味しいです」
ポルは、泉の水を選んだようだ。ここの水、俺も大好きなんだよね。
今回は、お茶用に少し多めに持って帰ろう。
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夕日を眺めた後は、花火をする。
これは、日本の線香花火に近いものを点ちゃんに頼んで作ってもらった。
『人間って、不思議なことしますねー』
点ちゃんに言われたが、まあ、風情ですから。
夕闇の中でパチパチ燃える点ちゃん花火をみんなで楽しんだ。
「シロー、ニホンってこんな素敵なものがあるんですね」
ルルは花火を気に入ってくれたようだ。
その日は、みんな自立型のハンモックに寝た。
この島には蚊がいないようなので、防虫対策をする必要がない。
史郎達のバカンス初日は、こうして過ぎていった。
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