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第四章 聖樹世界エルファリア編

第48話 恩賞

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 前々から史郎が恐れていた時が来た。

 エルフ王が、恩賞をくれるというのだ。しかも、公式の場で行うとのこと。
 こういうくつろげないイベントは極力避けてきたのだが、今回はリーヴァスさんを通しての話でもあり、断れないだろう。
 エルフ王も、それを見越してリーヴァスさんを利用している節がある。困った事である。

 だいたい、そんなことになったら、礼服の用意からしなければならない。そして、礼服というものは、大抵窮屈でくつろげないと相場が決まっている。

 俺は、頭を抱えていた。

「パーパ、王様からプレゼントもらえるってホント?」

 ナルの言葉で驚く。子供達にも恩賞? 何だろう。

「シロー、二人が楽しみにしていますから……。お願いできますか?」

 ルルは、娘達の事でもないと、俺がそういったものに興味を示さないと分かってるんだね。

「ははは。それじゃ、仕方ないな。ナルとメルが喜ぶんなら、まあいいか」

「ありがとう」

「いや、お礼を言うのは俺の方さ、ルル。
君の言葉が無かったら、もう少しでナルとメルを悲しませるところだったよ」

 こうして、史郎達はエルフ王から恩賞をもらうことになった。

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 どこから聞きつけたのか、恩賞に向けての礼服は、史郎が助けた城の薬師、ジールさんが全て準備してくれた。

「やっと少しだけ、ご恩が返せますな、ははは」

 まあ、それで薬師さんの気が済むならいいけどね。俺は、丁寧にお礼を言って彼の好意を受けいれた。

 靴や、服に付ける飾りは、マーシャル卿からもらった。

「サーシャの可愛さが、世界に広まったお礼ですよ」

 本当は、異世界にまで広がってるんだけどね。

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 こうして、王の前には、他人の好意で全身を固めた史郎がひざまずいている。

 その後ろには、リーヴァスさん、ルル、コルナ、ミミ、ポルに加え、着飾った女性に付きそわれたナルとメルもいる。

「リーヴァス殿。
前回に続き、この度もこの国の国難を救うてくれた。まさに救国の英雄だの。
名誉侯爵位と領地を与える」

「は、有難き幸せ」

 騎士達から拍手が起こる。

「コルナ殿。
そなたの働きが無ければ、この国の厄災は防げなかったと聞いておる。
名誉子爵位と領地を与える」

 獣人の叙勲に、貴族からどよめきが起こる。

「ありがとうございます」

 コルナは、全く表情を変えずに見事な礼を返した。

「ミミ殿、ポルナレフ殿。
パーティ・ポンポコリンの一員として、大陸をまたにかけての活躍、感謝する。
武器と防具の目録から好きなものを選ぶとよい」

 ミミとポルは、場慣れしていないからオドオドしている。

「は、はい」 「あ、ありがとうございます」


「ルル殿。そして、ナル殿、メル殿。
その方らが100ものグリフィン部隊に対処してくれたからこそ、この城は無事じゃった。
先だって魔獣の大群を撃退してくれたことと合わせて、我らは二度も救われたことになる。 
宝石の目録から一人一つずつ好きなものを選ぶとよい。
それから、ナル殿とメル殿には、これをつかわそう」

 つきそいの二人の女性が、ナルとメルを陛下の前に連れていく。
 陛下は、手ずから二人の首にペンダントを掛けた。

「これは、エルフ国王が、『魔獣大使』として認めた証じゃ。
この国では、好きな魔獣に自由に乗るがよい」

「わーい!」「お馬さん!」

 最後の所は二人にも理解できたのだろう。
 ナルとメルは、ニコニコ笑って元の位置に戻った。


「最後に、シロー殿。 
 人族の身でありながら、よくぞエルフ王族の命を救ってくれた。それも、1度ならず、数度にわたってだ。
 また、ダークエルフ大侵攻の際には、獅子奮迅の働きで、双方が被害らしい被害も出さずにすんだ。 
 エルフ国はその功労に報いて、そなたに名誉騎士位を授ける。
また、禁書庫への立ちいりも、期限を設けずに許そう。他にも目録が用意してある。ぜひ受けとってくれ」

「はっ!」

 名誉騎士位が何かよく分からないが、くつろぎに必要な物じゃないことは確かだ。

『相変わらず、何かもらっても、ご主人様はありがたみがないねー』

 点ちゃん、ここは譲れないよ。

「最後になったが、シロー殿にはワシから願いがある。娘の一人を嫁にもらってくれ」

 がーん!

 来ちゃったよ、厄介なのが。どうするかな、これ。断ったら斬首だよね、きっと。俺が断れないように、公式の場を使ったな。
 汚いなー、大人って汚い。

 ま、ここは、やり返すかな。

 俺は立ちあがると、こう言った。

「私が選んでもよろしいので?」

「おお、そうせい」

 俺は、陛下の後ろに控える王女達の目を一人ずつ見ていった。

 幼いポリーネは俺の視線が怖かったのか、シレーネのスカートにしがみつき、その後ろに隠れた。

 俺はゆっくりと歩いていき、一人の王女の前で立ちどまった。
 両手をパンと合わせる。

 目の前にいるコリーダ姫の肌が、白から褐色に変わった。

「な、なにを!」「シロー!」

 陛下とお妃が叫び声を上げる。
 俺は、おもむろにコリーダの手を取り、こう言った。

「では、『鳥かご』を出て大空に羽ばたきましょうか」

 王と王妃は、その皮肉が骨身に染みて分かったのだろう。俺から目を背け、うつむいた。

「ええ、一緒にね」

 コリーダがニッコリ笑って俺の手を引き、王族のいる上座から下に降りた。
 今この時、彼女は自分を縛りつけていたしがらみから解きはなたれたのだ。


 史郎達とコリーダは、王に向けて頭を下げると、控室へと下がった。
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