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第四章 聖樹世界エルファリア編
第55話 里帰り
しおりを挟む次の日、史郎は王城に今回の依頼達成の報告に行った。
女王陛下(畑山さん)は、俺達のためにいろいろ便宜を図ってくれたからね。フィロとキャロも、女王陛下にお礼を言いに来ている。
実は、もう一つ、畑山さんにだけ話しておくことがあった。彼女は、ちょっと驚いたが、すぐに自分がすべきことを行った。
その後、俺達はフェアリスの二人を連れて、城内の森へ行った。
俺は、久しぶりにウサ子をモフれて満足だった。
驚いたのは、フェアリスの中でも神獣の伝説はあり、二人はウサ子に平伏していた。ウサ子、君はどこまで株が上がるのか。
城には、お礼に『フェアリスの涙』を一樽置いて帰った。
中身を聞いたレダーマン騎士長が、目を丸くしていた。
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史郎の家では、家事が急に楽になった。
掃除洗濯はチョイスが、料理はデロリンがこなしてしまうからね。
チョイスは、家事を担当しているニーナさんというベテランに褒められて、まんざらでもなさそうである。
遊びに来たキツネ達が、デロリンの料理を食べて驚いていた。料理に興味があるモヤシが、デロリンにつきまとってうるさがられている。
食事の後で、コリーダをキツネ達に紹介した。コリーダの美しさに下を向いてしまったキツネ達だが、彼女が元姫君だと分かって、平伏してしまった。
コリーダは旅の疲れも取れ、顔色も良くなり元気そうである。初めて会った時、俺をドキッとさせた瞳の輝きは失われていない。それは、彼女が生来持っている魅力のようだ。
猪っ子コリンはコリーダにべったりだが、時々ナルとメルと駆けまわって遊んでいる。庭がある家にして、本当に良かったよ。
ルルとコルナは、コリーダの世話が無くなってきたので、フィロさんに町を案内してあげている。
キャロが休みの日は、四人で出かけるのが楽しそうだ。
俺はナルとメルと遊ぶほかは、ゴロゴロしていた。
それには、理由があった。
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史郎達がアリストに帰ってから二週間が過ぎた。
俺は家族を集めて話をすることにした。今日はデロンチョコンビも、予備の椅子を出して座っている。
「今日は、私から話があります」
俺の真剣な顔を見て、ナルとメルが不安そうな顔をする。
「エルファリアで、最後に『聖樹の島』を訪れた時、フェアリスを助けたお礼として聖樹様からあるものをもらいました」
俺は点ちゃん収納から、聖樹様にいただいた黒い玉を出した。
「この玉がそれです。これを渡されるとき、聖樹様に二つの道を選ぶように言われました」
普段と違う俺の口調に、ルルやコルナも不安そうである。
「これを使えば、俺は元居た世界に戻ることができるそうです」
発言をみんなが理解するのを待つ。
「ただし、使えるのは一回だけで、元の世界に戻ったまま帰ってこないか、一定時間で帰ってくるかを選ぶように言われました」
「えっ!」
ルルが、悲鳴のような声を出す。
俺は彼女を正面から見つめ、話を続けた。
「俺は、一定時間で帰ってくる方を選びました。
そして、そろそろ、この玉を使おうと思います」
それは、史郎が故郷の世界を捨て、この世界を選んだことを意味していた。
ルルは、不安が少し和らいだようだ。
「俺は他の三人と共にこの世界に転移しましたが、彼らの家族が心配しているに違いないのです。
だから、彼らの家族に会って、近況を知らせてこようと思います」
ルルは、はっと何かに気づいた顔をした。まあ、彼女なら察すると思ったけどね。
「デロリン、チョイス。あまり働きすぎて体を壊さないようにね」
二人が頷く。
「コリーダ。こちらの世界に慣れないうちに、俺がいなくなるけど大丈夫かい?」
コリーダは、落ちついている。
「ええ、全く問題ないわ。だって、あなたはここに帰ってくるんでしょ」
「ああ、帰ってくる」
コリーダは満足そうに頷いた。
「コルナ。ナルとメルを頼めるかな」
「お兄ちゃん、心配しないで。だって私は『こーねー』(コルナお姉ちゃん)だもん」
コルナは、ニッコリ微笑んだ。
「ルル。この家と家族を頼むよ」
「シロー。私達は大丈夫です」
ルルは、少し不安そうだが、そう言いきった。
「リーヴァスさん。いつも頼ってばかりで申しわけないです。皆をよろしく頼みます」
「あなたの家族にも、会うのですかな」
「にも」のところにアクセントをつけてるってことは、リーヴァスさんもルル同様、気づいたようだ。
「ええ、そのつもりです」
彼は深く頷いた。
「こちらは任せて、気兼ねなく行ってらっしゃい」
「ありがとうございます」
最後に、俺はナルとメルの方を向いた。
「パーパが旅行に行っても大丈夫かな?」
「「だいじょーぶー」」
二人は、すぐに答えた。エルファリアへの旅で、俺たちの絆は少し深まったらしい。
史郎は、故郷の世界、地球を訪れると決めた。
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「聖樹世界エルファリア編」終了 「地球一時帰還編」の後、「竜人世界ドラゴニア編」に続く
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