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第七章 天竜国編
第12話 天竜国のダンジョン5
しおりを挟む史郎達は、天竜ダンジョンの第2層を進んでいた。
ぼんやり光る通路の壁が、遥か前方まで続いている。光が所々途切れているのは、部屋の入り口だろう。
俺達は、すでにオーガを10体近く倒していた。順調に進んでいるのは、攻略法が定まってきたからだ。
オーガは、叫び声で仲間を呼ぶのが一番厄介だから、そうさせないように、まず俺が闇魔術の「沈黙」を使う。この魔術を付与した点を、最初にオーガの頭部につけておくのだ。こうすることで、たとえ叫んでも、声が響かなくなる。
後は、リーヴァスさん、ミミ、ポルが近接、ルルが中距離で攻撃を加える。コルナが火魔術と治癒魔術で援護すれば、オーガは成す術もない。
ダンジョンに潜る前、リーヴァスさんが攻略法にこだわっていた理由がよく分かる。
「来ます!
オーガではありません」
リーヴァスさんが皆に注意を促す。
前方の左側にある部屋から、大きな角が出てくる。角だけで1mくらいありそうだ。角の後から現れたのは、大きなサイだった。ただ、角が大きすぎて、体のバランスが悪そうに見える。通路に出てきたサイは、頭を下げ、角の先端をこちらに向けると、物凄い勢いで突進してきた。
なるほど、攻撃が突進に特化しているなら、角の大きさはあれでいいのだろう。
リーヴァスさんの姿がブレると、サイの横から斬撃を加えた。
バランスを崩されたサイは、停まることもできず、壁に激突した。角の先端が深く壁に食いこむ。ミミとポルが切りかかるが、皮が固いのか、剣がはじかれている。
「このような場合は、この部分を狙う」
リーヴァスさんが、鎧のようなサイの皮の継ぎ目に剣を突きたてた。そこが急所だったようで、サイは声も立てずに動かなくなった。
「なんて固いの!」
ミミが呆れたように言う。
「わざわざ固いところを攻撃する必要はないのですよ」
リーヴァスさんに突っこまれ、ミミが赤くなっている。
「やっぱり、敵をよく見ないといけないんですね」
ポルが感心したように言う。
「そうですな。
それで八割がた、戦闘は決まります」
リーヴァスさんが、ポルに微笑んだ。いつも力任せに戦っている俺にはできないアドバイスだ。
『(@ω@) あれ?
ご主人様、自覚あったの?』
やれやれ、いつもの点ちゃんだ。
自分に対する点ちゃんの評価がだんだん下がっている気がして、落ちこむ史郎だった。
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史郎達は、第二層の大部屋まで来た。
一層同様、その部屋は、通路の突きあたりにあった。広い空間に、角サイが3頭、オーガが3体いる。俺達は、それだけ確認すると、一旦通路を引きかえした。角サイは、索敵範囲がかなり広いと分かっているので、部屋から30mほど下がる。
「あの構成はやっかいですな」
リーヴァスさんが言う通り、角サイが1、オーガが5や、その逆だと「釣り」がしやすいのだが、この構成だと、それも難しいだろう。
俺は、あるアイデアが閃いたので、それを話してみた。
「うむ、それでいってみましょう」
リーヴァスさんの決断で、俺の策が採用される。上手くいけばいいのだが。
まず、点ちゃんと相談しながら、大部屋の中に、床から天井までのシールドを何枚か張る。
準備が出来ると、部屋の入り口から、全員が中に入った。大声を出したり、地面を踏みならしたり、みなが音を立てる。
当然、部屋の奥にいた6体のモンスターが、こちらに近づいてきた。先頭のオーガが俺達から10mくらいに近づいたとき、そいつは急に進まなくなった。
目の前にシールドがあるからだ。他のモンスターも同様の目に遭う。
見えないシールドを、オーガは棍棒で叩いているし、角サイは角で突いている。しかし、シールドは、そんなことでは、びくともしなかった。
リーヴァスさんが右端のオーガを指さしたので、俺はそいつの前にあるシールドだけ数秒消した。そのオーガは、叩いていたシールドが突然なくなったので、バランスを崩し、こちら側に倒れこんでくる。
その頭部に、コルナの火球とルルのスリングショットが命中する。
「ぐわっ」
オーガがのけ反ったときには、すでにミミとポルが接近していた。それぞれ、奴の足から膝にかけて攻撃する。
火魔術で、すでに目をやられていたオーガは、それだけで、バランスを崩し、倒れてしまった。
その胸をリーヴァスさんの剣が貫く。オーガは、声も無く動かなくなった。
俺達は、この要領で、残り5体のモンスターも片づけていった。
最後に残った角サイが倒れると、部屋の奥壁に通路が開いた。
リーヴァスさんが、部屋にある宝箱の罠を解除し、中身を回収する。
二層目では、いくつか宝箱があったが、中に入ったモノは回収しただけで鑑定せずにここまで来た。モンスターの索敵をかいくぐるため、急いで行動したからだ。
リーヴァスさんは、少し考えた後、ここの宝箱から出た品も、後で調べると告げた。
史郎達は、いよいよ問題の真竜廟ダンジョン第三層に向け、階段を上がるのだった。
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