ポータルズ -最弱魔法を育てようー

空知音

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第七章 天竜国編

第15話 天竜国のダンジョン8

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 幼いころ可愛がっていた子猫が現れて、史郎は戸惑っていた。

 ただ、子猫の形をしているだけではない。ちょっとした仕草まで、全く瓜二つなのだ。
 点ちゃん、これはどうなってるの?

『(・ω・) ご主人様の記憶からその生き物を作ったみたいだよ』

 しかし、いくらなんでも、これは似すぎてるだろう。俺は恐る恐る子猫を抱き、毛並みを撫でてみた。

 そうそう、こんな手触りだった。

-----------------------------------------------------------------------

 幼い史郎が、コロスケと名づけたその猫は、彼がよく遊んでいた森に捨てられていた。

 俺は、春雨に濡れ、か細い声で鳴く子猫を段ボール箱から拾いあげ、「秘密基地」に連れていった。そこは、廃材などで作った、小屋とも言えないような基地だったが、幼い俺にとっては大切な場所だった。

 小学校から帰る途中で基地に寄り、猫に給食の残りを与えるのが、俺の日課になった。
 土曜日、日曜日は、一日中猫と一緒にいることも多かった。

 普通の猫に比べ、真っ白なねっとりとした毛並みをしていたその子猫により、俺はモフラーとして覚醒したと思っている。手で撫でると、吸いつくようなその手触りが、少年時代の俺を慰めてくれたものだ。
 なぜか、しっぽが2cmほどしかなかったその猫は、秋風が吹きはじめたころ姿を消し、二度と戻らなかった。

 物心ついた俺が涙を流したのは、その時が初めてだった。

-----------------------------------------------------------------------

 俺が今抱いている子猫は、毛並みの手触りから、しっぽが短いところまで、記憶の中のコロスケそのものだ。

 このスライムが、記憶を読みとるというのは間違いない。そして、この形状をとるということは、仲良くしたいというのも本当なのだろう。

「上の階に行きたいんだけど、どちらに行けばいいかな?」

 試しに尋ねてみたが、子猫は首をかしげるような仕草をして「ミー」と鳴くだけだ。

『(・ω・)ノ ご主人様ー、向こうに部屋があるみたいだよ』

 なるほど、点ちゃんとならお話できるのか。
 俺とスライムのやり取りを遠巻きに見ていた仲間が近づいてくる、

「なにっ、その動物! 
 凄くかわいいね」

 コルナが目を輝かせている。そういえば、ポータルズ世界には、猫人はいるのに猫はいないんだよね。

「ちょっとミミに似てるね」

 ポルが、目を細めて子猫を覗きこんでいる。

「シロー、触ってもいいですか?」

 ルルが、恐る恐る子猫に触る。

「うわー、ふわふわですね」

「えっ、どれどれ」

 一番怖がっていたミミも子猫に触りたいようだ。

「なにー、これ! 
 すごく気持ちいいね」

 皆に撫でられ子猫は目を細めている。
 最後にリーヴァスさんが、子猫を撫でる。

「おおっ、この手触りは癖になりそうですな」

 彼もそのうち、モフラーになるかもしれない。

 史郎達は、ひと時、ダンジョンの中で癒されるのだった。
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