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第七章 天竜国編
第18話 古代竜のゆりかご
しおりを挟む戦闘中はどこかに行っていた白猫が、史郎の肩に乗る。ルルの肩にも黒猫が戻っていた。
俺達は、竜王がいた部屋から、虹色の光が溢れだした部屋に入っていった。ここも、さきほどの部屋と同じくらいの広さがある。
先頭のリーヴァスさんが立ちどまり、上方を見ている。部屋の中央には、巨大な「光る木」があった。根元に顔らしい部分があることを考えると、これが先ほど聞いた神樹様だろう。
部屋の外に漏れでていた光は、この神樹様の輝きだった。そして、その根元の周りをドーナツのような形をした巨大な円筒形のチューブが取りかこんでいる。チューブが発する青い光は、竜王がまとっていたものと同じに見えた。
青い光が満たされたチューブの中には、高さが50cmくらいの黒い卵が並んでいた。卵は、無数に敷かれたバスケットボールサイズの青い球に支えられている。球は緩衝材として働いているのかもしれない。
卵の数は、見えるところだけでも100はありそうだ。竜王が言った通り、これだけの数があれば、種族維持はできるだろう。
問題は、このチューブからどうやって卵を出すかだな。
俺は、チューブの中に手を入れようとした。しかし、チューブは硬い弾力があり、どんなに押そうと手は中に入らなかった。
このゴムのような弾力がある巨大な輪っかを、どうやって神樹様から外すか。しかも、中の卵を傷つけないようにだ。
少し考え、俺は、輪っかと地面の間にボードを差しこむことにした。このボードは、輪っかに合わせ、中心がくり抜かれた円形にしてある。
幸い、青いチューブは、地面と接着されてはいなかった。
俺は一人用のボードを出し、それに乗ると上昇を始める。輪っかを乗せたボードも、俺の目の高さで、ゆっくり上昇させる。
こうして、神樹の先端まで輪っかを持っていくと、慎重に引きぬく。
こうしてみると、この部屋の広さと言うか、高さには驚く。神樹様は、すくなくとも50mはありそうだった。だから、天井の高さはそれ以上ということになる。
神樹から引きぬいた輪っかは、そのままゆっくり降ろしていく。地面から50cmくらいの所で一旦止める。
ここからが、難しい。
俺は、輪っかの両端から弱い重力付与を行い、それが細長い楕円形になるようにした。卵を傷つけないように行うので、これに1時間くらい掛かった。
後は簡単で、開いたままの扉から竜王様の部屋へ運びこんだ。元の形に戻した青い輪っかを竜王様が指さした部屋の隅にそっと置く。
『おお、さすがは、試しの儀を潜りぬけた者じゃ。
感謝するぞ』
竜王はそう言うと、愛おしそうに青いチューブを撫でた。
『お主らが言うだけの数を、この「ゆりかご」から出す。
いくつだ?』
『ああ、それは世話をする天竜達と相談しなければなりませんから、ちょっと待ってください』
『よかろう。
神樹から離れた「ゆりかご」は、竜の命と同じくらいの期間で消えると言われておる。
なるべく早く教えてくれ』
『分かりました』
『では、宝の部屋への扉を開けるぞ』
『お願いします』
さきほど開いた「ゆりかごの部屋」の扉から、かなり離れた所にやや小さな扉が現れる。今度は、中から虹色の光は出てこなかった。
さっきまで「ゆりかご」運搬を退屈そうに眺めていたミミの目がキラリと光る。
「おっ宝♪ おっ宝♪」
変な節回しの曲を歌いながらスキップしている。
その部屋は直径20mほどの円形で、床には様々なものがいくつも小山を成していた。
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