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空知音

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第七章 天竜国編

第26話 再び竜人の国へ

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 天竜祭が近づいて来たので、俺は一旦、竜人国ドラゴニアへ戻ることにした。

 竜人には、「枯れクズ」の事で苦労を掛けることになるから、この訪問は外せない。
 ただ、古代竜の赤ちゃん達が、まだ母親離れできそうにないから、ルル、コルナ、コリーダは、真竜廟に残ることにした。
 リーヴァスさんも、護衛役として残る。
 だから、今回ドラゴニア訪問は、俺、ナル、メル、ポル、ミミ、イオの六人となった。
 ああ、そうそう、白猫はいつも俺の肩に乗っているので、六人と一匹だね。

 しばらく会えないので、ナルとメルがルルにまとわりついて甘えている。ルルを母親役にしている子竜が、ナルとメルを追いはらうような仕草をするのがほほえましかった。ナルとメルが竜の姿になると、急に追いはらうのを止めたのも、みんなの優しい笑いを誘った。
 イオは、とりあえずここに帰ってくる予定が無いので、子竜に掛かりきりになっている。

 天竜祭は、普通なら若い天竜が出るらしいが、今回は重要な仕事があるので長をはじめ、年長者が参加する。

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 史郎達六人と一匹は、天竜に先駆け、ドラゴニアに戻った。

 天竜国へは天竜モースの背に乗り訪れたが、今回は点魔法の瞬間移動を使う。
 俺達は、イオの家と畑の間に現れた。

 昼前だったので、家には誰もいなかった。ネアさん、加藤、リニア、エンデは店に行っているようだ。
 俺は、家に五人を残し、歩いて商業区へ向かった。驚いたことにポンポコ商会は、元あった場所に加え、両隣に店舗を増やしていた。

「おっ、ボー、おかえり。
 割と長かったな。
 それより、その肩の猫は何だ?」

「ただいま、加藤。
 そんなことより、なんで店が増えてるんだ?」

「ああ、両隣の店が、ぜひポンポコ商会に入りたいって、熱心に頼みこんできてな、しょうがないから、暫定的に商品を扱ってもらってたんだ。
 お客さんが増えて、対応しきれなくなってたからな。
 俺の独断でやったが、構わなかったか?」

「それは構わないが……」

 加藤にそのような能力があったということが何よりの驚きだ。よく見ると、店舗は全て見知らぬ竜人が売り子をやっており、ネアさんは、総監督のようなことをしている。 リニアとエンデは助監督のような立場だ。
 ネアさんが、俺に気づいた。

「あ、シローさん、おかえりなさい。
 ウチの子が迷惑かけませんでしたか?」

「ええ、イオは向こうでも大活躍でしたよ。
 天竜からの加護ももらえましたよ」

 その瞬間、俺の周囲から音が消えた。

「……シローさん、もう一度言ってもらってもいいですか?」

 ネアさんが、やけに真剣な顔で尋ねる。

「えーと、イオが向こうでも活躍しました」

「いえ、その次です」

「イオが天竜から加護をもらいましたよ」

 売り子と並んでいたお客さんから物凄い歓声が上がる。

『(@ω@) なんじゃこりゃー!』

 点ちゃん、俺も全く同感だよ。

「これはいったい、どういうことです?」

 ネアさんに尋ねたが、皆といっしょになって盛りあがっているから聞いていない。少し落ちついてからもう一度同じ質問をした。

「竜人にとって、天竜様のご加護を頂くというのは、最高の名誉なんです。
 今まで、それを頂いたのは初代四竜社の頭だけでした」

 ああ、そういうことか。こりゃ、えらいことになったな。イオを家に残してきてよかった。
 そう思った瞬間、向こうからイオがやってきた。

「お兄ちゃん、一人だけ先に行くなんてズルいー」

 そう話しかけてきたイオは、周囲の盛りあがりが理解できず、戸惑っている。皆がイオを取りかこむと、拝みだしたからだ。

 えらいことになったなこりゃ。イオが生き神様のようになっちゃった。
 そのうち、周囲が店を閉めだした。よく見ると、拝んでいる人達の後ろに店長達が加わっている。
 こりゃ、どうしようもないな。

 俺は、明日詳しい事を話すからと皆に言うと、仲間を連れ店を後にした。

 俺達が家に帰ると、加藤達と遠征組が久しぶりに会ったということでパーティーが開かれた。
 コルナがいれば、向こうであったことを面白おかしく話せるのだが、しょうがないから、俺が天竜の国での出来事を話す。

 天竜からイオが加護をもらった話の所で盛りあがった、ネアさん、リニア、エンデだったが、話が竜王様のことになると、逆にシーンとなった。
 三人が目を閉じ、何かブツブツいいながら俺を拝むのには本当に困った。拝むなら、竜王様や子竜にしてほしい。
 幸い、ポルとミミが蜂蜜回収の仕事から帰ってきたので、その雰囲気は長く続かなかった。

「シローさん、ミミが蜂を一匹指でつついて、えらいことになりました」

 それは言われなくても分かる。彼らに渡していたシールド製の防護服は、べっとり蜂の毒で濡れていた。
 毒がその辺に散ってもいけないので、防護服ごと点収納する。

「あー、気持ち悪かった」

「ミミ、だから、それは君が……」

「ところで、リーダー、店はどうなってたの?」

 ミミが話題を変えようとする。まあ、ここはそれに乗ってやろう。
 俺が店舗が増えたことを話すと、二人とも加藤を尊敬の目つきで見ている。
 君達、リーダーをそういう目で見なさい。

『(・×・)つ ご主人様ー、それはナイナイ』

 なんか点ちゃんの突っこみが切れ味を増してきてる気がするんだよね。

 こうして、史郎達のドラゴニア帰還初日は過ぎていった。
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