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8・図書棟
しおりを挟む四人で試食程度の弁当を摘み。留愛の心は少し浮上したようだ。
「ね、美味しかったでしょ。
これ全部兄ぃが作ったんだよっ。
僕これからも兄ぃのご飯食べたい。」
留愛は、俺のご飯が食べたいと、熱弁している。
必死に俺の加勢をしてくれる留愛は天使だ。
ユースさんがどうします? って伺うようにアージェンさんの方を見ると。
「隊長に伝えて来ますので、厨房に入るのは少々お待ち下さい」
「場を離れます」と一礼して去って行った。
報連相は大事だもんな。
残ったユースさんがトレーを片付けてくれて…自分で片付けると言ったが「こちらで待っていて下さい」と言われた為、任せた。
弁当箱も洗って返すと言われたが、それは使い捨てなので処分してほしい。と頼んだ。
紅茶まで淹れてもらって、何だか至れり尽くせりだ。
食後の紅茶を飲み終えて、ホッとひと息。
さて、この後どうします? って話になり。アージェンさんを待たなくて良いのか? と訊くと、伝達が済んだら俺のところに戻って来るから大丈夫。と言われた。
なんでも、浄化スキルを持つ者は浄化力を感じ取れて、自分より弱い力だと判り難いが、自分と同等。もしくは、強い力程よく分かるから、それを頼りに探す事が出来るんだそうだ。
「へぇー、じゃあ僕達迷子になっても大丈夫だね」
「探し出す事は出来ますが、出来るだけ護衛の側から離れないようにして下さいね」
そうだな、留愛は好奇心が高くて、突発的に動く事があるから、気を付けないとな。
この後、神殿内を軽く案内してもらう事になり。まずは一番近い図書棟に行く事になった。
図書棟は、俺達の部屋や食堂のあった神官棟と渡り廊下で繋がっていて、分かり易かった。
途中。廊下から見える中庭にも、色とりどりの花が咲いていて綺麗だ。
図書棟と呼ばれる場所は。中は広くて、まるでホテルのロビーの様だった。
図書棟は四階建で。今いる一階は、通路や休憩室。二階に一般的な学術書があって、三階は物語等の娯楽本。四階には専門書等が置いてあると話してくれた。
上の階に上がるには昇降機と言って、半透明の筒状で大人が四~五人乗れそうな魔道具を使うらしい。
エレベーターみたいな物だな。
階段は無いのか訊いたが、上下の移動はこれしか無いそうだ。
二台ある内の一台に、ユースさんが触れると、何処に繋ぎ目があったのか分からない扉がスーと横にスライドして開き。中に乗り込むと数字が浮き上がっていた。
え、近未来的だぁ!
ユースさんが数字にポンッと触れた瞬間。
ブワッと身体が無理矢理押し上げられる感覚がして。俺は…、咄嗟に近くにある物を掴んでしまった。
それは一瞬の事だったみたいで。
「うわぁっ、すごーい!」
と留愛ははしゃぎながら昇降機を降りて行った。
「……。 もしかして苦手でしたか?」
何が? とは問うまい。
俺が咄嗟に掴んだ物はユースさんの腕。
正確には腕の辺りの制服だったけど、そこをガッチリ掴んでいた。
そう、俺は急激な上がり下がりが苦手なんだ。
「…いえ、大丈夫です」
と、そっと手を離したけど。もうバレてるよなー。
「ルア様は、どこまで行ってしまわれたんでしょうねぇ」
と、何事も無かったように話すユースさん。
「思った以上に広いですねぇ」
と、何事も無かったように話す俺。
大人の対応が優しい。
俺が知ってる大型本屋の六倍はあるんじゃないか? ってくらい広いフロアを暫く歩いていると、高い本棚を見上げながら歩いている留愛を見つけた。
俺達に気付いて振り返る留愛。
「ねぇ、ねぇ、ユースさん。
ここっていつでも来て良いの?」
「はい、もちろんです。
この図書棟は神殿内で暮らす者達の為に神殿長が建てられたのです。
ですから、ルア様もルキ様も自由に使えますよ」
「レクラムさんが建てたの?」
「ええ、そうですよ。
本殿の向こう側にも、図書館という建て物はありますが、あちらは…一般平民や貴族達が自由に出入り出来きますから。この様に神殿居住者だけが使える図書棟を建てて下さったのです」
「へぇ…、凄いね」
「はい、神殿長はいつも私達を守る為に奮闘して下さっています」
「…守る?」
「こちらに居らしたのですか」
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