自己中心主義勇者 egoistic hero

マナ情報

カズマ：「マナ、アレクに関する情報をオマエの知る限りでいい。俺に教えてくれ。」

マナ：「分かりました。ちょっと待ってくださいね。」



マナは自分のカバンから手帳を取り出した。

ずいぶん年期の入った分厚い手帳をパラパラとめくる。



マナ：「あ、ありました。アレクさんは年齢30歳。体格は中肉中背で髪は長髪、顎髭をたくわえています。出身はシューティングスター城の城下町のスラム街です。幼い頃から親、兄弟の行方はわからず、住まいもない中、盗みなどを働いて生き延びてきたようです。17歳の頃に軍隊に入り、その優秀な戦闘能力により、頭角を現しました。

20代前半には軍隊長まで昇格し、戦争で様々な功績を残しました。

軍内部では彼を慕う者が多く、シューティングスター城の城主は彼を排除しようとしました。

彼はこれを逆手にとってクーデターを起こします。

シューティングスター城の軍隊は完全に彼の支配下にあり、城主は捕らえられた後処刑されました。

その後アレクさんは覇王を名乗り、ヤマト大陸統一に乗り出します。

手始めに隣のAシェルターに攻め入り順調に勝利を重ねていきました。

そこへDシェルターの軍勢がAシェルターの援軍を出した為、一進一退の攻防が続き、戦場は泥沼化しました。

アレクさんはまずDシェルターと和平交渉をします。

長い戦争で疲弊してきたDシェルターはこの交渉を受け入れました。

Dシェルターの援軍がいる間にAシェルターは戦力を回復していました。

Aシェルターの軍勢はシューティングスター城を包囲し、アレクさんも絶体絶命の状況だったのですが・・・

モンスターの軍勢が戦況を一変させました。

モンスター軍はAシェルターの軍勢を退け、再びAシェルターに攻め入り、アレクさんは勝利をおさめます。

私が知っている事といえばこれくらいです。」



カズマは大笑いした。

カズマの欲しい情報の多くをマナが持っていた。



カズマ：「これくらいって・・・十分だよ！ガハハ・・・」



カズマの爆笑の意味がわからず戸惑うマナだったがとりあえずカズマに合わせてニッコリと笑っていた。



カズマ：「オマエはアレクに直接会った事があるのか？」

マナ：「はい。まだアレクさんが覇王になる前の話です。私は8歳でした。シューティングスター城のクーデターの後、アレクさんが城主の葬儀を行ったんです。その時に各国から僧侶が招かれてお祈りをささげたんです。私にも招待状が来たので出席してお祈りをしてきました。」

カズマ：「クーデター起こして相手の葬儀をする？意味がわからねぇな・・・アレクに会った時の印象は？」

マナ：「何か人を観察し分析するタイプのようです。葬儀の時もずっと参列者を観察していました。私も観察されてましたがなんか笑ってました。なぜでしょう？」

カズマ：「オマエを観察してたら笑ってしまうよ・・・」

マナ：「そうじゃないんです。アレクさん葬儀の間ずっと笑っていたんです。うまく言えないんですが歪んだものを感じました。」

カズマ：「歪んだもの？」

マナ：「はい。私達僧侶は人々を喜びや希望などの陽のエネルギーによって癒す事を生業としています。そして病やケガをしている人は心が悲しみや痛みなどの陰のエネルギーに侵されます。この陰と陽のエネルギーを感じる事ができれば僧侶の白魔法を使う準備ができます。私がアレクさんから感じたのは陰のオーラです。笑いながら陰のオーラを発するというのはとても歪んでいるように感じました。」

カズマ：「傾奇者・・・」

マナ：「なんですか？かぶきものって。」

カズマ：「世間一般の常識とは違う生き方を好み、自分の信じる道をいく者達だよ。やはり俺に似てるな・・・」



カズマの胸がまたズキズキとうずく。

なんだこの感覚は・・・

物凄い嫌悪感。

自分に似たものと対峙してカズマは心を乱されていた。