自己中心主義勇者 egoistic hero

あきらめが肝心

シューティングスター城にアレクが帰って来た。

孔明がアレクを出迎える。



孔明：「アレク様お疲れ様でした。」

アレク：「うむ、留守中変わりはないか？」

孔明：「はい、こちらは何事もありませんでした。そちらの勇者はいかがでした？」

アレク：「フッ、わしが赴くこともなかったわ。」



アレクはニヤリとしながら答えた。



アレク：「ひどく臆病なのか兜で顔を隠しておった。うちにいるあの奴隷人形のようにな。」



孔明はアレクとは対照的に眉をひそめている。



孔明：「アレク様に情報を与えないようにその様な真似をしたのでは？」

アレク：「ハハハ、孔明。そんな奴に勇者という資格はなかろう！そんな臆病者恐れるに足りんわ！」

孔明：「だとしてもオークとゴブリンの混合部隊を退けたのは事実です。用心するにこしたことはないと思いますが・・・」

アレク：「黙れ孔明。リザードマン100体をサンライト城へ向かわせろ。指揮官はレムだ。」



孔明は何か言いかけ、あきらめた。



孔明：「御意に・・・」



アレクはスタスタと城の部屋へ入っていった。

一礼をしていた孔明がつぶやく。



孔明：「リザードマンでは情報が得られないな・・・アイツを使うか・・・」



孔明はレムを呼び出しアレクの指令を伝える。



孔明：「レム、リザードマン100体を率いてサンライト城へ向かえ。あとその闘いの様子をコイツに記録させるのだ。」



そう言うと孔明は後ろにいる一人の女性を呼んだ。

その女性はとても美しい白い肌とグリーンの瞳をしていた。

ただ耳がややとがっている。



レム：「この女に戦闘を見せるんですかい？人間がモンスターに引きちぎられる様子を記録できますかね？」

孔明：「心配ない。コイツはエルフだ。普通の女とは別物だよ。感情は切り離してある。」



孔明が女の髪をわしづかみにする。

しかしエルフの女の表情は全く変わらず、瞬き一つもしなかった。

その無感情の美貌にレムは背筋が凍っていた。



ーその頃サンライト城でー



カズマはＡシェルターとＢシェルターの戦闘の映像を分析を終えた後夕食を取りにエレベーターを昇った。

エレベーターから宮殿を抜けていく途中で後ろからメイがカズマに飛びついた。



メイ：「パーパ、つかまえた～」

カズマ：「グェッ！メイ・・・くるしい・・・」



メイがカズマの首にしがみついているのでカズマは苦しそうだ。

二人の様子をマリが笑いながら見つめている。

カズマはメイをふりほどいて下におろす。



カズマ：「ホラ、降りろ。バカ娘。」

メイ：「パーパ、ご飯一緒に食べよ。」

カズマ：「オウ、飯食うぞ、飯。」



夕食を持って三人はメイの部屋に行く。

カズマ、マリ、メイの三人は家族のような雰囲気で楽しく過ごしている。

食事の後も三人で他愛もない遊びを楽しんでいた。

そして渋るメイに本の音読をさせるのだが、メイは一時間もしないうちに眠ってしまう。

メイを布団に入れるとマリと二人きりになり、カズマは急に居心地が悪くなった。



カズマ：「あ～じゃあ俺ももう寝るよ。」

マリ：「そうか・・・私は今日はここでこの子と寝るよ。」



マリはカズマと距離をとらなければならない状況がひどく寂しかった。

それを埋めるようにメイと過ごすうちにマリにとってメイは大事な存在となっていたのだ。

カズマはそれを察し、速やかに部屋を離れる。



カズマ：「そうか、じゃあまた明日。おやすみ。」

マリ：「おやすみ。」



メイの部屋から出て扉を閉めるとカズマはため息をついた。



カズマ：「男だろ？カズマ・・・」