自己中心主義勇者 egoistic hero

バード・ポー

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八つ当たり

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次の日カズマは朝からメイとマリと訓練をしていた。

メイとマリはカズマの微妙な変化に気付いていた。

何かカズマらしからぬあせりが感じられた。

メイはカズマのただならぬ緊張感に怯えている。



メイ:「パーパ、怖いよ・・・」

マリ:「カズマ、落ち着け。何をそんなに苛立っている?」



メイとマリの反応にカズマは我に返る。



カズマ:「ああ、悪い・・・」



カズマはタオルで汗を拭い、訓練所の床に座り込む。

あぐらをかいて頭にタオルをかぶり下を向いているカズマ。

マリはさすがに心配になり声をかける。



マリ:「カズマ、どうした?私達でよければ話をしてくれ。」



カズマは観念したように自分の不安を話し出した。



カズマ:「不安なんだ。とても・・・あの鎧兜の男・・・俺にそっくりだと言ったな?」

マリ:「ああ、オマエにそっくりだが違うな。あの男には何かこう・・・魂がないというか・・・」

カズマ:「俺にそっくりで魂がない。そしたら思いつくのは一つしかないんだよ・・・」

マリ:「それは何なんだ?」



マリの質問にカズマは答えず訓練所を離れようと立ち上がる。

マリはカズマを制するように呼び止めた。



マリ:「待てカズマ!一人で抱え込むな!私達にも話すんだ!」

カズマ:「ちょっと新しい武器作る。午後のチーム会議までコンピュータールームにこもるよ。」



そう言うとカズマは訓練所を出ていった。



マリ:「カズマ!」



マリは再びカズマを呼び止めたがカズマはそれに応えなかった。

その頃シュウは単独で斥候に出ていた。

モンスターの軍勢はまた深夜に襲ってくるかもしれない。

シュウは出来るだけ早く襲来を察知できるようにしておきたかった。

大きな木を登り、双眼鏡で周囲を見渡す。



シュウ:「あの辺にもトラップ仕掛けたらいいべか・・・」



シュウはトラップを仕掛ける場所に行き罠を手早く作る。

傭兵時代に何度もやっている作業で手慣れていた。

モンスターが罠にかかれば花火が上がるようにしてシュウは城に戻った。



シュウ:「腹減っただな。」



そう呟きながら城に向かうとマリから通信が飛んできた。



マリ:「ドグマ、シュウ。今大丈夫か?」



マリはドグマとシュウに通信しているようだ。



シュウ:「今ちょうど城戻って飯食うっす。」

ドグマ:「こちらドグマです。何かありましたか?」

マリ:「カズマの様子がおかしい。何か追いつめられているみたいで緊張している。」

ドグマ:「開戦前だからじゃないですか?私も含め皆ピリピリしています。」

シュウ:「んだね。それはオラも感じる。」

マリ:「違うんだ。それとは違う・・・」



その時カズマからチームメンバーに通信が飛んできた。



カズマ:「あーカズマだ。昼食後チーム会議を開く。各自時間とってコンピュータールームに集合してくれ。」

ドグマ:「ドグマ了解だ。」



シュウはマリにだけ通信をつなぎ質問する。



シュウ:「今のはいつものカズマさんだがマリさんが見たカズマさんの異変はどんな感じですだ?」

マリ:「私とメイを相手に訓練をしていたんだ。ピリピリしていてメイも怯えていた。カズマは何か一人で抱え込んでいる。自分で不安だと言っていた。」

シュウ:「何が不安なんだべ?アレクの事だべか?」

マリ:「和平交渉の映像に映っていた鎧兜の男に関係しているみたいだ。」

シュウ:「ああ、カズマさんそっくりの男け。昨日は気にしてねぇ様子だったけんどやっぱり何かあるだな・・・」

マリ:「カズマは詳しい話をせずに逃げた。一人で抱え込んでいるんだ。」

シュウ:「本当にあの人は水くせぇべ。」

マリ:「シュウ、会議中カズマを見ていてくれ。何か気づいたらその場で言ってくれ。私には上手い事できない。」

シュウ:「ん~オラも似たようなもんだけんどやってみるだよ。」

マリ:「ありがとうシュウ」



シュウは通信をカズマに合わせ昼食後会議に向かうと伝えた。



『カズマさんに瓜二つの男・・・不安・・・自分自身を敵に回す不安?』



シュウは最悪の状況を考え眉をひそめた。
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