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~ファンタジー異世界旅館探訪~
【第1章】第5話「ファーンラント・アルヴァー」(5)
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猫を追いかけて異界に迷い込んだようだ。
アルヴァーの最初の感想だ。
強力な魔力の霧を抜けると、今までの森林地帯が嘘のように穏やかな村落に立っていた。
稲の水耕栽培だろうか、非常に整った棚田が見える。
興味を惹かれスケッチしようと紙を取り出したが、水を吸って皺が寄っていた。
アルヴァーの蒼いマントは撥水するが、内ポケットに水が入れば意味が無い。
幸いスケッチ済みの紙は濡れていなかった。
『非常に興味深い光景だが、今は不用意な行動は避けるべきだったな……』
スケッチするにしても住人かここの長に話を通さないと、間者と間違われてしまう可能性も有る。
念の為、フードを被り直し付近を散策する風を装い注意深く観察する。
夕暮れ近くなった周囲は鮮やかな赤みを帯び始めた。
緩やかな風が流れ稲穂が靡き、植えてある白い花を咲かせた樹木が揺れ、花弁が僅かに散った。
所々に置かれた石造りのオブジェも周辺に上手く溶け込んでいる。
道端に設置されていた小型の石造を軽く撫でると、表面の劣化具合を確認した。
『改めて見ても大変な手間を掛けて環境を整えてある。少なくとも数百年はここを維持し続けていた筈だ。だが、この地はミラーレ所か今まで見た文化様式のどれとも異なる様に見える』
周辺は複雑な地形になっていて見通しが悪かった。
だが、魔力感知には都合が良かった。
物陰に入り念の為、周辺を警戒しつつ集中力を高める。
『……感知出来る範囲には何も感じられない。もう少し進まないと集落に辿り付けないのか、または隠蔽されているか。いや、もしや先程の様にこの地に満ちた魔力が感知を阻害している? それとも……ん?』
思考と魔力探知を中断すると意識してゆっくり立ち上がり、自分自身の姿を見下ろし不自然さがないか確認した。
そして、同じくゆっくりと物陰から出て道を進む。
先程の魔力感知で認識した人物に接触する為だ。
その人物は大きな箱状の荷物を抱え、多少覚束ない足取りで歩いていた。
黒髪で男性? ……長めで綺麗に艶がある髪。
細身の体型で、肌は日焼けしていないのか白く透明感があった。
警戒させない様、敢えて相手の視界に入るような位置取りで歩き向こうの反応を待つ。
相手がアルヴィーに気付くと少し首を傾げて近付いてきた。
此方から話しかける事にして口を開く。
「すまない、少し良いだろうか?」
「あっ、こんにちは。……変わった格好ですね。外国の方ですか?」
アルヴァーの装いはマントの色が独特の蒼色とはいえ一般的な装いだった。
どちらかというと、相手側が少々変わった格好をしているとアルヴァーは考えた。
『……いや、集落の中でフードを被っている事を指摘されたのか? 外国と言うのは、外の人間に対してのものか、または独立権があるのか……』
目の前の人物からは敵意は感じない。ある程度は胸襟を開く必要があるだろう、覚悟を決め、フードを脱ぎ素顔を晒す。
「私の名は、ファーンラント・アルヴァー。ここへは外からやって来た。不躾だが、ここの代表者か、もしくは何処か宿泊できる所はないだろうか?」
アルヴァーは、赤く染まる空を見上げる。それは結界の影響なのか、不思議な七色の光を湛えて、まるで水中を覗き込んでいるようだった。
アルヴァーの最初の感想だ。
強力な魔力の霧を抜けると、今までの森林地帯が嘘のように穏やかな村落に立っていた。
稲の水耕栽培だろうか、非常に整った棚田が見える。
興味を惹かれスケッチしようと紙を取り出したが、水を吸って皺が寄っていた。
アルヴァーの蒼いマントは撥水するが、内ポケットに水が入れば意味が無い。
幸いスケッチ済みの紙は濡れていなかった。
『非常に興味深い光景だが、今は不用意な行動は避けるべきだったな……』
スケッチするにしても住人かここの長に話を通さないと、間者と間違われてしまう可能性も有る。
念の為、フードを被り直し付近を散策する風を装い注意深く観察する。
夕暮れ近くなった周囲は鮮やかな赤みを帯び始めた。
緩やかな風が流れ稲穂が靡き、植えてある白い花を咲かせた樹木が揺れ、花弁が僅かに散った。
所々に置かれた石造りのオブジェも周辺に上手く溶け込んでいる。
道端に設置されていた小型の石造を軽く撫でると、表面の劣化具合を確認した。
『改めて見ても大変な手間を掛けて環境を整えてある。少なくとも数百年はここを維持し続けていた筈だ。だが、この地はミラーレ所か今まで見た文化様式のどれとも異なる様に見える』
周辺は複雑な地形になっていて見通しが悪かった。
だが、魔力感知には都合が良かった。
物陰に入り念の為、周辺を警戒しつつ集中力を高める。
『……感知出来る範囲には何も感じられない。もう少し進まないと集落に辿り付けないのか、または隠蔽されているか。いや、もしや先程の様にこの地に満ちた魔力が感知を阻害している? それとも……ん?』
思考と魔力探知を中断すると意識してゆっくり立ち上がり、自分自身の姿を見下ろし不自然さがないか確認した。
そして、同じくゆっくりと物陰から出て道を進む。
先程の魔力感知で認識した人物に接触する為だ。
その人物は大きな箱状の荷物を抱え、多少覚束ない足取りで歩いていた。
黒髪で男性? ……長めで綺麗に艶がある髪。
細身の体型で、肌は日焼けしていないのか白く透明感があった。
警戒させない様、敢えて相手の視界に入るような位置取りで歩き向こうの反応を待つ。
相手がアルヴィーに気付くと少し首を傾げて近付いてきた。
此方から話しかける事にして口を開く。
「すまない、少し良いだろうか?」
「あっ、こんにちは。……変わった格好ですね。外国の方ですか?」
アルヴァーの装いはマントの色が独特の蒼色とはいえ一般的な装いだった。
どちらかというと、相手側が少々変わった格好をしているとアルヴァーは考えた。
『……いや、集落の中でフードを被っている事を指摘されたのか? 外国と言うのは、外の人間に対してのものか、または独立権があるのか……』
目の前の人物からは敵意は感じない。ある程度は胸襟を開く必要があるだろう、覚悟を決め、フードを脱ぎ素顔を晒す。
「私の名は、ファーンラント・アルヴァー。ここへは外からやって来た。不躾だが、ここの代表者か、もしくは何処か宿泊できる所はないだろうか?」
アルヴァーは、赤く染まる空を見上げる。それは結界の影響なのか、不思議な七色の光を湛えて、まるで水中を覗き込んでいるようだった。
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