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愛しているから
しおりを挟むふわっ。
鼻腔をくすぐる男性用トワレの香り。シーツの波に漂う私は、彼の背中をそっと指で…
なぞりません。
ご安心を!健全な二股ですからッ。この1カ月間、どっちとも寝てませんよ!いくら私でも、そこまで爛れてはいないワケで。どちらとも食事やデートをするけれどそれ以上はしない。とっても清らかな交際なのである。
ガチで心と心をぶつけ合いどちらともそれなりに打ち解けた気がするが、浦くんとは二股交際開始前に何度も寝ており、富樫先生とは全然寝ていないので、なんとなく不公平な気もする。
しかも、浦くんとは未だに同棲中だし。というか、出て行けと言っても出て行かないし。加えて富樫先生は1カ月間の作業を終え、明日からは職場でも会うことが無くなるのだ。
「…どう考えても先生の方が形勢不利なのでは」
「そうか?別に俺、平気だけど」
さすが大人!余裕ッスね!!
ちなみに現在は、榮太郎様及び秘書課の有志で先生の送別会なんぞ行なっている最中なのだが。主役である先生は勿論、この私にも質問が集中砲火で浴びせられており。それもアルコールの勢いを借りて、ちょこちょこと下ネタが混ざってくる。
なんかねえ、プライベートでの飲み会だったら答えてたんだけど。職場での飲み会では、ちょっと。どこがどう違うのかと問われれば、上手く説明出来ないのだが、とにかくこの場での下ネタに答える気はサラサラ無いのである。
今のところ敵は1人だけのようだ。
システム部から合流した干場課長。30代後半の既婚男性で先日、奥様が出産したばかり。そのため現在は里帰り中なのだと言う。ついでにここ連日、システムを入れ替えるために徹夜していたらしく、ナチュラルハイ状態で。そこにアルコールなんぞ入れたものだから、留まることを知らない無礼っぷりを炸裂中だ。
「いやあ~、俺、『今まで出会った人間の中で、一番賢い人間を1人だけ挙げろと』言われたら迷わずに富樫さんの名前を挙げますわ~。
ほんと何から何までスゲエし。こっちが一晩かけてバグを探してたっつうのに、それを10分ほどでチャチャッと見つけちゃうんだもん。
もう天才!!俺、脱帽っすよ。
そんな富樫さんを手玉に取るとかさァ、なに考えてんの中林さん?どうせそのプリンプリンのオッパイで、富樫さんを陥落しちゃったんだろ~。
女はズルイよなあ、どんなにバカでもオッパイさえあれば大抵の男は堕とせるしさあ。しかも二股とかさ~、ふざけてんの~。相手の年下男、いいカラダしてんだって~?ウチの新入社員が雑誌で見たってよ~。
でもさ俺、トイレで用を足すときに富樫さんのアソコ見ちゃったんだあ。んもう、有り得ないほどデッカイじゃん。あんなの入れたらガバガバになっちゃうよね~。あッ、中林さんってもしかして、ガバガバ~?」
これにはさすがの私もキレてしまい、ジットリと睨んでいたのだが。冷静なはずの先生が怒りを露わにして、干場課長に反論を開始した。
「干場さん、もうそのくらいにしておかないと、セクハラで訴えられてしまいますよ。もし訴えられたら、可愛い二人目のお子さんが生まれたばかりだというのに、最低でも減給…下手をすれば強制解雇コースかもしれません。
それに、残念ながら中林さんのプリンプリンなオッパイは偽乳ですからね。こう見えてこの人、Aカップだから極厚パッドで誤魔化してまして。だから私がそれで陥落したということは絶対に有り得ませんので、ソコのところは誤解無き様に。
というか、それ以前に私という人間は、見た目で付き合う相手を選びません。確かに今まで交際してきた女性は皆んな美人で、知性も品格も備えた最高の相手ばかりでしたが。実は中林さんとは大学時代に教育実習生として会っていて、旧知の仲なんですよ。
…いやあ、当時からその美しさは別格だったな。しかも美しいだけじゃない。この人の真の魅力は外見ではなく中身なんです。強くて賢くて柔軟で、そしてどんな時にも腐らずに清らかな心を持ち続けている。
この私が、二股をかけられるなどという屈辱を甘んじて受けているのは、それでも尚、この人を欲する気持ちが止められないからでしょうね。実は私、こうして飄々として見せていますけど内心はグチャグチャのドロドロで。
…早く私1人に決めて欲しいなと。
ははっ、いいトシしたオッサンが、思春期の少年の様に恋焦がれておりまして。だからお願いだ。その本気の相手に対してこれ以上、辱めるようなことを言わないでください。この人の悲しい顔を見るのは本当に辛いんです。
私は干場さんの勤務先の会社から仕事を貰っている立場で、本来ならばこうして反論することすらも避けたいのですが、それでも言わずにはいられなかった。
だって、私は中林コトリさんを愛しているから。
本当に本当に心の底から愛しているから…」
わ~ッ!!
パチパチパチパチ───!!!!
宴会場が割れんばかりの歓声と拍手に包まれた。
ここで私も感激の涙を流すところなのだろうが。だって、見てしまったのだ。『愛しているから』と言った後、一瞬だけ先生がペロリと舌を出したのを。
ていうかさ、Aカップって…。失敬だな!!これでもBカップあるんだよッ。さり気なく私の貧乳をディスってくれちゃって。
色々と突っ込みどころ満載だったが、この場は大人しくモジモジしておこうと思い。私はひたすら感動しているフリをして、テーブルの下からコッソリと先生の脚を蹴った。
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