たぶん愛は世界を救う

ももくり

文字の大きさ
28 / 45

愛しているから

しおりを挟む
 
 
 ふわっ。

 鼻腔をくすぐる男性用トワレの香り。シーツの波に漂う私は、彼の背中をそっと指で…

 なぞりません。

 ご安心を!健全な二股ですからッ。この1カ月間、どっちとも寝てませんよ!いくら私でも、そこまで爛れてはいないワケで。どちらとも食事やデートをするけれどそれ以上はしない。とっても清らかな交際なのである。

 ガチで心と心をぶつけ合いどちらともそれなりに打ち解けた気がするが、浦くんとは二股交際開始前に何度も寝ており、富樫先生とは全然寝ていないので、なんとなく不公平な気もする。

 しかも、浦くんとは未だに同棲中だし。というか、出て行けと言っても出て行かないし。加えて富樫先生は1カ月間の作業を終え、明日からは職場でも会うことが無くなるのだ。

「…どう考えても先生の方が形勢不利なのでは」
「そうか?別に俺、平気だけど」

 さすが大人!余裕ッスね!!

 ちなみに現在は、榮太郎様及び秘書課の有志で先生の送別会なんぞ行なっている最中なのだが。主役である先生は勿論、この私にも質問が集中砲火で浴びせられており。それもアルコールの勢いを借りて、ちょこちょこと下ネタが混ざってくる。

 なんかねえ、プライベートでの飲み会だったら答えてたんだけど。職場での飲み会では、ちょっと。どこがどう違うのかと問われれば、上手く説明出来ないのだが、とにかくこの場での下ネタに答える気はサラサラ無いのである。

 今のところ敵は1人だけのようだ。

 システム部から合流した干場課長。30代後半の既婚男性で先日、奥様が出産したばかり。そのため現在は里帰り中なのだと言う。ついでにここ連日、システムを入れ替えるために徹夜していたらしく、ナチュラルハイ状態で。そこにアルコールなんぞ入れたものだから、留まることを知らない無礼っぷりを炸裂中だ。

「いやあ~、俺、『今まで出会った人間の中で、一番賢い人間を1人だけ挙げろと』言われたら迷わずに富樫さんの名前を挙げますわ~。

 ほんと何から何までスゲエし。こっちが一晩かけてバグを探してたっつうのに、それを10分ほどでチャチャッと見つけちゃうんだもん。

 もう天才!!俺、脱帽っすよ。

 そんな富樫さんを手玉に取るとかさァ、なに考えてんの中林さん?どうせそのプリンプリンのオッパイで、富樫さんを陥落しちゃったんだろ~。

 女はズルイよなあ、どんなにバカでもオッパイさえあれば大抵の男は堕とせるしさあ。しかも二股とかさ~、ふざけてんの~。相手の年下男、いいカラダしてんだって~?ウチの新入社員が雑誌で見たってよ~。

 でもさ俺、トイレで用を足すときに富樫さんのアソコ見ちゃったんだあ。んもう、有り得ないほどデッカイじゃん。あんなの入れたらガバガバになっちゃうよね~。あッ、中林さんってもしかして、ガバガバ~?」

 これにはさすがの私もキレてしまい、ジットリと睨んでいたのだが。冷静なはずの先生が怒りを露わにして、干場課長に反論を開始した。

「干場さん、もうそのくらいにしておかないと、セクハラで訴えられてしまいますよ。もし訴えられたら、可愛い二人目のお子さんが生まれたばかりだというのに、最低でも減給…下手をすれば強制解雇コースかもしれません。

 それに、残念ながら中林さんのプリンプリンなオッパイは偽乳ですからね。こう見えてこの人、Aカップだから極厚パッドで誤魔化してまして。だから私がそれで陥落したということは絶対に有り得ませんので、ソコのところは誤解無き様に。

 というか、それ以前に私という人間は、見た目で付き合う相手を選びません。確かに今まで交際してきた女性は皆んな美人で、知性も品格も備えた最高の相手ばかりでしたが。実は中林さんとは大学時代に教育実習生として会っていて、旧知の仲なんですよ。

 …いやあ、当時からその美しさは別格だったな。しかも美しいだけじゃない。この人の真の魅力は外見ではなく中身なんです。強くて賢くて柔軟で、そしてどんな時にも腐らずに清らかな心を持ち続けている。

 この私が、二股をかけられるなどという屈辱を甘んじて受けているのは、それでも尚、この人を欲する気持ちが止められないからでしょうね。実は私、こうして飄々として見せていますけど内心はグチャグチャのドロドロで。

 …早く私1人に決めて欲しいなと。

 ははっ、いいトシしたオッサンが、思春期の少年の様に恋焦がれておりまして。だからお願いだ。その本気の相手に対してこれ以上、辱めるようなことを言わないでください。この人の悲しい顔を見るのは本当に辛いんです。

 私は干場さんの勤務先の会社から仕事を貰っている立場で、本来ならばこうして反論することすらも避けたいのですが、それでも言わずにはいられなかった。

 だって、私は中林コトリさんを愛しているから。
 本当に本当に心の底から愛しているから…」


 わ~ッ!!
 パチパチパチパチ───!!!!

 宴会場が割れんばかりの歓声と拍手に包まれた。

 ここで私も感激の涙を流すところなのだろうが。だって、見てしまったのだ。『愛しているから』と言った後、一瞬だけ先生がペロリと舌を出したのを。

 ていうかさ、Aカップって…。失敬だな!!これでもBカップあるんだよッ。さり気なく私の貧乳をディスってくれちゃって。

 色々と突っ込みどころ満載だったが、この場は大人しくモジモジしておこうと思い。私はひたすら感動しているフリをして、テーブルの下からコッソリと先生の脚を蹴った。

しおりを挟む
感想 1

あなたにおすすめの小説

私が王子との結婚式の日に、妹に毒を盛られ、公衆の面前で辱められた。でも今、私は時を戻し、運命を変えに来た。

MayonakaTsuki
恋愛
王子との結婚式の日、私は最も信頼していた人物――自分の妹――に裏切られた。毒を盛られ、公開の場で辱められ、未来の王に拒絶され、私の人生は血と侮辱の中でそこで終わったかのように思えた。しかし、死が私を迎えたとき、不可能なことが起きた――私は同じ回廊で、祭壇の前で目を覚まし、あらゆる涙、嘘、そして一撃の記憶をそのまま覚えていた。今、二度目のチャンスを得た私は、ただ一つの使命を持つ――真実を突き止め、奪われたものを取り戻し、私を破滅させた者たちにその代償を払わせる。もはや、何も以前のままではない。何も許されない。

熟女愛好家ユウスケの青春(熟女漁り)

MisakiNonagase
恋愛
高校まで勉強一筋で大学デビューをしたユウスケは家庭教師の教え子の母親と不倫交際するが、彼にとって彼女とが初の男女交際。そこでユウスケは自分が熟女好きだと自覚する。それからユウスケは戦略と実戦を重ねて、清潔感と聞き上手を武器にたくさんの熟女と付き合うことになるストーリーです。

愛されないと吹っ切れたら騎士の旦那様が豹変しました

蜂蜜あやね
恋愛
隣国オデッセアから嫁いできたマリーは次期公爵レオンの妻となる。初夜は真っ暗闇の中で。 そしてその初夜以降レオンはマリーを1年半もの長い間抱くこともしなかった。 どんなに求めても無視され続ける日々についにマリーの糸はプツリと切れる。 離縁するならレオンの方から、私の方からは離縁は絶対にしない。負けたくない! 夫を諦めて吹っ切れた妻と妻のもう一つの姿に惹かれていく夫の遠回り恋愛(結婚)ストーリー ※本作には、性的行為やそれに準ずる描写、ならびに一部に性加害的・非合意的と受け取れる表現が含まれます。苦手な方はご注意ください。 ※ムーンライトノベルズでも投稿している同一作品です。

転移先で日本語を読めるというだけで最強の男に囚われました

桜あずみ
恋愛
異世界に転移して2年。 言葉も話せなかったこの国で、必死に努力して、やっとこの世界に馴染んできた。 しかし、ただ一つ、抜けなかった癖がある。 ──ふとした瞬間に、日本語でメモを取ってしまうこと。 その一行が、彼の目に留まった。 「この文字を書いたのは、あなたですか?」 美しく、完璧で、どこか現実離れした男。 日本語という未知の文字に強い関心を示した彼は、やがて、少しずつ距離を詰めてくる。 最初はただの好奇心だと思っていた。 けれど、気づけば私は彼の手の中にいた。 彼の正体も、本当の目的も知らないまま。すべてを知ったときには、もう逃げられなかった。 毎日19時に更新予定です。

あなたがいなくなった後 〜シングルマザーになった途端、義弟から愛され始めました〜

瀬崎由美
恋愛
石橋優香は夫大輝との子供を出産したばかりの二十七歳の専業主婦。三歳歳上の大輝とは大学時代のサークルの先輩後輩で、卒業後に再会したのがキッカケで付き合い始めて結婚した。 まだ生後一か月の息子を手探りで育てて、寝不足の日々。朝、いつもと同じように仕事へと送り出した夫は職場での事故で帰らぬ人となる。乳児を抱えシングルマザーとなってしまった優香のことを支えてくれたのは、夫の弟である宏樹だった。二歳年上で公認会計士である宏樹は優香に変わって葬儀やその他を取り仕切ってくれ、事あるごとに家の様子を見にきて、二人のことを気に掛けてくれていた。 息子の為にと自立を考えた優香は、働きに出ることを考える。それを知った宏樹は自分の経営する会計事務所に勤めることを勧めてくれる。陽太が保育園に入れることができる月齢になって義弟のオフィスで働き始めてしばらく、宏樹の不在時に彼の元カノだと名乗る女性が訪れて来、宏樹へと復縁を迫ってくる。宏樹から断られて逆切れした元カノによって、彼が優香のことをずっと想い続けていたことを暴露されてしまう。 あっさりと認めた宏樹は、「今は兄貴の代役でもいい」そういって、優香の傍にいたいと願った。 夫とは真逆のタイプの宏樹だったが、優しく支えてくれるところは同じで…… 夫のことを想い続けるも、義弟のことも完全には拒絶することができない優香。

王子を身籠りました

青の雀
恋愛
婚約者である王太子から、毒を盛って殺そうとした冤罪をかけられ収監されるが、その時すでに王太子の子供を身籠っていたセレンティー。 王太子に黙って、出産するも子供の容姿が王家特有の金髪金眼だった。 再び、王太子が毒を盛られ、死にかけた時、我が子と対面するが…というお話。

靴屋の娘と三人のお兄様

こじまき
恋愛
靴屋の看板娘だったデイジーは、母親の再婚によってホークボロー伯爵令嬢になった。ホークボロー伯爵家の三兄弟、長男でいかにも堅物な軍人のアレン、次男でほとんど喋らない魔法使いのイーライ、三男でチャラい画家のカラバスはいずれ劣らぬキラッキラのイケメン揃い。平民出身のにわか伯爵令嬢とお兄様たちとのひとつ屋根の下生活。何も起こらないはずがない!? ※小説家になろうにも投稿しています。

人狼な幼妻は夫が変態で困り果てている

井中かわず
恋愛
古い魔法契約によって強制的に結ばれたマリアとシュヤンの14歳年の離れた夫婦。それでも、シュヤンはマリアを愛していた。 それはもう深く愛していた。 変質的、偏執的、なんとも形容しがたいほどの狂気の愛情を注ぐシュヤン。異常さを感じながらも、なんだかんだでシュヤンが好きなマリア。 これもひとつの夫婦愛の形…なのかもしれない。 全3章、1日1章更新、完結済 ※特に物語と言う物語はありません ※オチもありません ※ただひたすら時系列に沿って変態したりイチャイチャしたりする話が続きます。 ※主人公の1人(夫)が気持ち悪いです。

処理中です...