12 / 40
12.金曜深夜
しおりを挟むまったくもう、もう、もう!
郷田さんの大嘘つき!
>一回してみたら『なんだこんなもんか』って思うはずだ
…とか仰ってましたけどね、全然『こんなもんか』じゃなかったんですけどッ。
てっきり、日常生活に自然に溶け込むのかと…そう、ランチで例えるならいつもの定食にヒジキの煮物が一品増える程度の存在になるのかと思えば、むしろメイン…いや、単品メニューになれそうなほどの勢いで。
お陰様で私の頭の中はセックスで埋め尽くされ、他のことを考える余裕すら無いのだが、そんなエロいことばかりを考えている女だと死んでも周囲に悟られたく無いため自己解決を試みたところ、更にドツボに嵌ったという感じだ。
「なあ、何をそんなに悩むことが有るんだよ?」
「そりゃあ、色々と。処女を卒業したばかりの27歳の女として、正しい有り様と言うか…その、セックス時の反応をですね、学ぼうと思うのは当然じゃない?」
──金曜深夜。
ここ2日ほど短納期の仕事に取り組んでいたせいで完徹だったにも関わらず、私は須賀さんと仲良く飲んでいる。それは死んでも周囲に知られたくないと思う反面、こんなに悩むくらいなら誰かに教えを乞うた方がラクだという答えに辿り着いたからだ。
だって『聞くは一時の恥、聞かぬは一生の恥』とも言いますしね、思い詰めるのはカラダに良くないでしょ、うん。
さすが須賀さん、私が処女喪失したことを誰よりも早く察知し、さり気なく労わってくれた時には…死にたくなった。勿論、恥ずかし過ぎてである。ったく、セックス絡みであと何回死にたくなるのだろうか。もしかしてコレ、一度足を踏み込むと死ぬまで悩み続けるとか言わないよね?
脳内で自問自答していると、須賀さんが薄ら寒い笑顔を浮かべながら私に質問してくる。
「で、どうやって自己解決しようとしてたんだ?」
「えーっと、エロ動画とエロ掲示板とAV嬢のブログを見まくりました。…あ、あとAV男優についても色々とリサーチしてみたんですけど。いやあ、エロの世界は奥深いですねえ」
ガクッ
須賀さんは頬杖をついていた手を豪快にテーブル下に滑らせ、幻の珍獣を発見したかの如く私を引き気味で眺めている。
「おいこら、エロエロ煩いよ。…って言うか、そんなもん毎日見てたら、誰でも頭ん中がセックスで一杯になるに決まってる!あのな、あれはビジネス・エロであって真似なんかしたら痛い目に遭うぞ。一般人は地道にコツコツと経験値を重ねていくしか無いということを肝に銘じろ」
「ビ、ビジネス・エロ??じゃあ、もしかして潮吹きは都市伝説なのですか、師匠?!」
ご安心ください、個室をリザーブしておいたのでどんな猥談でもし放題なのですッ。
>ちょ~~っ。
>隣りのカップルの会話、めちゃエロい。
>しかも女が主導みたいだぞ。
>絶対に後で痴女様の顔を拝みに行こうぜ!
って、全然し放題じゃありませんでしたッ!!
今の会話を全部聞かれていたかと思うと、恥ずかしくて死ねる。
…どうやら隣室は若い男性グループらしく、人のことを言えないが、深夜2時に入店するなんて真っ当な職業では無いことは私が保証する。
改めて声を落としてコソコソと会話を続けていたはずなのに、ふと気づけば睡眠不足のカラダにアルコールが染み入り、アッという間に泥酔だ。そしてストッパーになるべき須賀さんまでも酔っていた。いつもの寝落ちではなく、更に進化を遂げた彼は、大声で会話するというスキルを発動したのである。
「性欲がどんどん強くなっていくって?!」
「そおなのよッ。彼の顔を見ると、最早パブロフの犬状態で、すぐにヤリたくなるの!」
「いいじゃん。俺はそういうエロい子、大好きだけどな!」
「私はそういう女が余り好きじゃなかったはずなのに、残念ながら自分がソレになっちゃった!」
「あの男、相当ウマイんだなあ」
「1人しか知らないからよく分かんないけど、テクニシャンなのは確かだよ」
明け透けに悩みを相談して。
いや、明確な答えは出なかったので単に愚痴を聞いて貰っただけという感じだが、とにかく須賀さんと私が帰宅モードに入り、会計をしようとレジに向かうと…ドヤドヤと隣室にいた若者達が姿を見せ、その姿を見て驚きの余り腰が砕けそうになる。
「うわっ、ええっ、まさか隣りの部屋にいたのって、華ちゃん??」
「ご、郷田…さん…」
0
あなたにおすすめの小説
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
一級魔法使いになれなかったので特級厨師になりました
しおしお
恋愛
魔法学院次席卒業のシャーリー・ドットは、
「一級魔法使いになれなかった」という理由だけで婚約破棄された。
――だが本当の理由は、ただの“うっかり”。
試験会場を間違え、隣の建物で行われていた
特級厨師試験に合格してしまったのだ。
気づけばシャーリーは、王宮からスカウトされるほどの
“超一流料理人”となり、国王の胃袋をがっちり掴む存在に。
一方、学院首席で一級魔法使いとなった
ナターシャ・キンスキーは、大活躍しているはずなのに――
「なんで料理で一番になってるのよ!?
あの女、魔法より料理の方が強くない!?」
すれ違い、逃げ回り、勘違いし続けるナターシャと、
天然すぎて誤解が絶えないシャーリー。
そんな二人が、魔王軍の襲撃、国家危機、王宮騒動を通じて、
少しずつ距離を縮めていく。
魔法で国を守る最強魔術師。
料理で国を救う特級厨師。
――これは、“敵でもライバルでもない二人”が、
ようやく互いを認め、本当の友情を築いていく物語。
すれ違いコメディ×料理魔法×ダブルヒロイン友情譚!
笑って、癒されて、最後は心が温かくなる王宮ラノベ、開幕です。
屈辱と愛情
守 秀斗
恋愛
最近、夫の態度がおかしいと思っている妻の名和志穂。25才。仕事で疲れているのかとそっとしておいたのだが、一か月もベッドで抱いてくれない。思い切って、夫に聞いてみると意外な事を言われてしまうのだが……。
JKメイドはご主人様のオモチャ 命令ひとつで脱がされて、触られて、好きにされて――
のぞみ
恋愛
「今日から、お前は俺のメイドだ。ベッドの上でもな」
高校二年生の蒼井ひなたは、借金に追われた家族の代わりに、ある大富豪の家で住み込みメイドとして働くことに。
そこは、まるでおとぎ話に出てきそうな大きな洋館。
でも、そこで待っていたのは、同じ高校に通うちょっと有名な男の子――完璧だけど性格が超ドSな御曹司、天城 蓮だった。
昼間は生徒会長、夜は…ご主人様?
しかも、彼の命令はちょっと普通じゃない。
「掃除だけじゃダメだろ? ご主人様の癒しも、メイドの大事な仕事だろ?」
手を握られるたび、耳元で囁かれるたび、心臓がバクバクする。
なのに、ひなたの体はどんどん反応してしまって…。
怒ったり照れたりしながらも、次第に蓮に惹かれていくひなた。
だけど、彼にはまだ知られていない秘密があって――
「…ほんとは、ずっと前から、私…」
ただのメイドなんかじゃ終わりたくない。
恋と欲望が交差する、ちょっぴり危険な主従ラブストーリー。
届かぬ温もり
HARUKA
恋愛
夫には忘れられない人がいた。それを知りながら、私は彼のそばにいたかった。愛することで自分を捨て、夫の隣にいることを選んだ私。だけど、その恋に答えはなかった。すべてを失いかけた私が選んだのは、彼から離れ、自分自身の人生を取り戻す道だった·····
◆◇◆◇◆◇◆
読んでくださり感謝いたします。
すべてフィクションです。不快に思われた方は読むのを止めて下さい。
ゆっくり更新していきます。
誤字脱字も見つけ次第直していきます。
よろしくお願いします。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる