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39.龍の後悔
しおりを挟むああ、そうさ。聞こえていたけど、敢えてもう一度言わせてみるのさ。
「えっ、なんですって?」
「…華が…好きだ」
「何~?聞こえなーい」
「おいこら、ふざけんなよ」
尚も聞こえないフリをする私に対して須賀さんは、苛立っている。
お、おかしい。
こんな私が好きなんだよね?
「やだもう、イラッとしないでよお」
「うるせえ、だって悔しいじゃないかッ」
悔しい?いったい何が??
間抜け面をしているであろう私に向けて、須賀さんは僅かに視線を逸らしながら理由を述べた。
「人が本気で告白してんのに、茶化しやがって」
「あ、えっと、茶化しているつもりは…」
無かったとは言えないな、反省。しかし、照れてしまったのだよ。そんな乙女心を是非とも理解していただきたい。
「あのな、さっきも言ったとおり、俺は臆病になってんの!騙されて、裏切られて、女なんかクソだと思ってたけど、それでも未来とならやり直せると思ってた。未来って女は、不器用で、真っ直ぐで、駆引きとかそういうのが苦手で、とにかく放っておいても勝手に楽しそうに生きてる、そういう女だったんだよ!」
「あのう…、私はいったい何を聞かされているのでしょうか?」
いでっ。
今度は私の方が須賀さんに唇を掴まれてしまった。そのせいで言葉を発することが出来ない。
「暫く黙って聞いてろ!」
「ふごふご(※分かりましたの意)」
「どん底の精神状態だった俺が、未来に拒絶されて更に落ち込んで。もう一生恋なんかするもんかって、そう思ってた。だって、誰だって傷つくのは怖いじゃないか。信じて裏切られるのはもう真っ平御免だ。深く関わらなければ、…そう、軽くて当たり障りない恋愛をしていれば、傷つくことも無いと思ってたんだ」
「……」
『好き』と言われてニマニマしていた私だったが、あまりにも真剣な須賀さんの表情に、その笑みが消えていく。
ああ、この人は。
明るく器用に生きているかと思えば、実は暗くて面倒臭い男だったのだ。きっと自分は普通じゃない家庭で育ってきたと思っていて、だから周囲の反応を伺い、適度に距離を保ちながら敢えて普通に溶け込もうと努力してきたのだろう。
「女なんて嘘ばっかり吐く生き物だけど、…華は、華だけは信じられる。お前、俺には全部曝け出して何もかも見せてくれるから。なあ、気付いてるか?お前、大勢でいても、そうじゃなくても、必ず俺の隣りにいるって。宴会とか社内イベントでさ、撮影した画像を確認したら、俺の隣り、全部お前でやんの。分かるか?俺が何処にいようと、いつの間にかお前が隣りで笑ってるんだよ」
「…うん、知ってた」
いつの間にか、須賀さんの指は私の唇から離れていた。
そんなの、言われなくても知ってたよ。だってその場所はいつでも居心地が良かったから。絶対に優しく受け入れてくれると分かってたから、だから私は無意識にそこへ向かってしまうんだ。
「俺達は相思相愛だって、そう確信していたからこそ、華が郷田さんと付き合うと言い出した時は本当に驚いた。情けないことにあの頃の俺はメチャクチャ臆病で、それを聞いても何も行動を起こせなかった。その結果、死ぬほど後悔することになったんだけどさ」
「す、須賀さん…」
いでで、肩!そんなにグイグイ掴んだら骨が砕けますってば!!
「くっそ、華の初めてをッ。俺が貰うはずだったのにッ」
「ぐぐ、痛い、痛いよ!」
「本気でッ、鈍いんだよお前はッ。自分が誰を好きかよく考えてみろ!俺だろ?!俺しかいないじゃん!あんなに目からスキスキ光線を出しまくっておいて、何で他の男に走っていくんだ?!あ~、もう、これ以上迷走すんなッ、大丈夫、俺も好きだからもう何も考えずに俺の傍で大人しくしてろッ」
「ん、む~」
えと、あの、キス…されてます。
それもすっごい濃厚なの。
ふ、あああ、
もしや私、すっごく愛されてる??
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よろしくお願いします。
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