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40.だ、大団円?
しおりを挟む「私、須賀さんのことが…好き?」
「疑問形にすんな、言い切れ!!」
何故ここで、高校野球部に所属する男子生徒みたく鬼コーチから指導を受けなければならぬのか?
「私、須賀さんのことが好き!!」
「おう!俺も好きだぞ!!」
ざわざわ…。
ざわざわ…(※『カイジ』では無い)。
傍観者2名が何やらヒソヒソと内緒話を始め、暫くして郷田さんが発言する。
「あのさ、ひょっとして俺達フラれたのかな?」
「ハイ、そうですね!」
即答しておきながら、慌てて『ごめんなさい』と付け加えてみた。
「ふうん、そっかあ…」
そう呟いたまま郷田さんは黙り込み、その隣りに座っているニョロ野もテーブルに置いた自分の手をジッと見つめている。そんな重苦しい空気に耐え切れず、考えが纏まらない状態で口を開く。
「回り道をしてしまったけど、でもあの、こうして3人を並べてみると何かこう、磁石みたいに須賀さんにばかり意識が吸い寄せられてしまうというか」
「…だよな!もっと言ってやれ、華!」
「須賀さんは本当に素敵な男性だよ!人の痛みが分かるから、上辺だけじゃなく心の奥まで染み入る様な優しさをくれるというか」
「いいぞいいぞ!華、その調子だ!」
威勢よく須賀さんが応援してくださるのは、きっと照れ隠しに違いない。
「加えて頭もイイ!それは勿論、地頭がイイという意味でッ」
「そうだそうだ!…って、ジアタマってなんだ?」
「知らないの?!地頭っていうのはねぇ、学力云々じゃなくて、…ん?もしかしてそれも含まれるのかもしれないけど、とにかくその人本来の能力というか、生きていくための知識とか、コミュニケーション力とかそっち系を全部ひっくるめた能力のことを言うんだけど」
「へえ、なるほど」
んもう、途中でそんな質問を挟んでくるから、勢いが逸れちゃったじゃないの!
「えっと…何だっけ…」
「俺を選んだ理由、ほら、もっと挙げてみろ!」
そう、ソレ!!
「酔うとたまに赤ちゃん言葉になっちゃうところとか堪らないし、この前なんかパンツのことを『ぱんちゅ』って。普段はこんなにクールでカッコイイ須賀さんが『ぱんちゅ』だよ、『ぱんちゅ』!!」
「…ヤメロ。きっとそれは赤ちゃん言葉じゃなくて、呂律が回らなかっただけだ」
嘘つけ!!
「ええっ?!だって須賀さんは酔って覚えてないのかもしれないけど、『華、チュッチュして』って言ったことも有るんだよ?!あれは絶対、呂律が回らないとかじゃないでしょう」
「…頼む、ヤメてくれ」
シーン。
再び沈黙が訪れて、郷田さんとニョロ野が遠い目をしている。ん?どうしてこの人達、まだいるんだろう?私、ハッキリキッパリ断ったよね?もう解散しても良いのではなかろうか。
なあんてことを考えていたら、何故か彼等はウエイトレスを呼び寄せ、オムライスなんぞ注文し始めた。そして、驚く私に向かってこうアドバイスしてくださる。
「どうせ今から2人でイチャイチャするんだろ?きっと暫く食事に有りつけないと思うからさ、ココで早目に晩御飯を食べておきなよ」
「そっか、そうだな」
おいこら須賀さん、すんなり肯定するな。
…でもまあ、両想いになったんだから、この後にすることなんて決まってる。あらぬ妄想にモジモジしていると、意味深な笑みを浮かべながら須賀さんが囁いた。
「華、いっぱい食べて、体力つけておくんだぞ」
「ふがっ?!」
…ああ、こんな色気の無い返事しか出来ない自分が、ただただ憎い。
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よろしくお願いします。
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