ハニィアタック

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attack6

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[相馬side ~モヤモヤ相馬さん~]


 彼女といると、
 心の中で叫んでしまう。


『なにっ?!』


 それは、かなりの頻度で。
 それも、ほとんどの場合がイイ意味で。




 ファースト・コンタクトで思ったのは、美人で、知的で、服装のセンスも良く。見るからに高慢ちきそうな女だということ。経験上、こういうタイプは非常に面倒臭い。女王様のように扱わなければ機嫌を損ねるし、人の話を聞こうともしないから会話も面白くない。そのくせ、自分のつまらない話は聞けと言う。

 金と時間のムダ。
 …そう思ったから、早々に手を打った。

「いやあ。申し訳ないけど、タイプじゃないな」

 続けて、

「俺、どちらかというと、ふわふわした癒し系の女のコが好きなんだよね。長峰さん…だっけ?残念ながら、すげえ威圧的」

 最初にそうブチかましておけば、時間が短縮出来てしかも今回限りで終わるだろうと。…そう思ったのに。彼女は何故か泣きそうな顔をして、それから申し訳なさそうにこう言った。

「ご期待に沿えず申し訳ありません。なんならもう私は帰りましょうか…」

 なにっ?!

 俺の聞き違いか?
 アンタ、そういうキャラじゃないだろ??

 なんだかものすごく自分が悪人になった気がして、慌ててその場を取り繕い。取り敢えず、仲良く食事することにした。

 ふんふん。

 見た目の派手さとはウラハラに話し方がすごく謙虚で、好感が持てる。俺、自分で言うのもナンだけど女を見る目は結構、厳しくて。例えば小さなレストラン。給仕が2人だけだと分かってて、それを呼びつける女。1人はレジで会計してるし、もう1人は別のテーブルで客から注文を受けてる。来るワケないじゃん。アホなのか?給仕の動きを見て、それからタイミング良く声を掛けてやれよ。…という感じで、その時点でそいつは不合格となる。


 それが。

 なにっ?!


 何から何まで合格。
 なんなんだ、この女??

 人の話をじっくり聞くし、食べ方もキレイ。食べ終わった食器もその都度、片付け易いように移動させるし店員への態度も満点。しかも、しかもだ。途中で俺が仕事の電話で離席したところ、戻ってきた俺を笑顔で迎え、

「相馬さんがオススメだという小説、いまネットで注文しちゃいました。レビューも高評価で、面白そうですね。届くのが楽しみだな」

 なにっ?!

 20分近くも待たせたのに、ブータレることもなく、俺のオススメを購入していただと??

 何が狙いだ??
 俺、そんなに財産持ってないぞ?
 新手の詐欺か?

 じゃなきゃ、こんなデキた女が
 世の中に存在するワケがない。

 キョトンとした顔で、彼女は続ける。

「どうかしましたか?追加でお酒頼みます?あ、残念、いま店員さん、忙しそう。あの対応が終わったら、声を掛けてみますね」

 ご、合格!!!!

 付き合ってやってもいい。
 いや、付き合ってくださいっ。

 このあたりで俺は本腰を入れ、酒をガンガン薦め出す。酔った彼女はこれまた女神のようなエロさを発揮。まんまとホテルで熱い一夜を過ごし、カラダの相性もバッチリってことで俺は決心を固めるのだ。

 長峰満里奈をヨメにする。

 ごめんなさい。
 今まで俺は自分を偽っていました。

 貴女様のようなエロイ顔と、
 悩殺ボディの女は大好物だったんです。

 でも。

 手に入れるにはそれなりの努力が必要で、その時間と労力を惜しんでおりました。だけど貴女様にはそれを費やす価値があります。男の狩猟本能に火を点けてくれて、有難う。男に生まれて良かった。

 いくよ?満里奈さん。

 そう決心し。
 翌日、西田に電話すると、こう言われた。

「あのコ、いいコだろ~?相手によって態度を変えたりしないんだぞ。掃除のオバちゃんたちと異常に仲イイし。宅配業者とかもさ、イケメンの男じゃなくて、冴えないオッサンにもすげえ優しくて」

 聞けば聞くほど、決心が固まる。

 その日、張り切って彼女にその意思を伝えたが何故か乗り気ではなく、しかも逃げるように帰られて。…ごめん、もう狩猟本能に火が点いてるんだ。だから逃げれば、追うよ?

 その直後、西田から電話が入り。内容は『長峰さんを怖がらせるな』というものだったんだけど、お陰で彼女は自宅に戻っているという有り難い情報も入手できたから、すぐに向かったワケだ。

 電話と玄関チャイムのW攻撃。
 渋々、出てきた彼女の姿は…。

 なにっ?!

 これ反則だろ、毛玉だらけのスウェットって。
 しかも化粧落としてて、超可愛い。きゅう。

 俺を殺す気か。
 もう、ムリ。

 こうして俺は、
 どんどん彼女に嵌っていくのである…。

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