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22.愛しい人
しおりを挟む「…奈緒さん、こ、ここはいったい??」
「見れば分かるでしょうけど、所謂ラブホですよ」
「いや、ラブホテルなのは分かっているが、なぜこんな場所に連れて来たのかと…」
「こういう誰が致したのか分からないベッドで、行為をするのはおイヤでしょうけど、でもこういう所じゃないと2人きりになれないし。普通のホテルだと声を出せないので、仕方なく」
「ぜ、全然イヤじゃない…俺」
「えー、意外です。神経質なクセして、こういうのは大丈夫だと?やっぱり豊さんの基準って難しいかもです」
「だってシーツは毎回洗ってあるし、出張でビジネスホテルによく泊まるが、あれと同じ理屈だろ?」
「ちょっと違うと思いま…きゃあ」
はふはふと鼻息も荒く私の胸に顔を埋めている。犬か?犬なんだな??
「2時間コースを選んでいただろう?早く取り掛からなければっ」
「え、ああ、はい」
私に話し掛ける時だけはいつものクールメガネの顔になるのに、行為に没頭している最中は犬になるんだな。はふはふ、ぶごっ、はふはふ。残念ながら犬と犬との間に豚鼻まで鳴らす始末。必死過ぎてなんだか集中出来ない私に、豊さんは再びイケメンに戻って話し出す。
「…その、すまなかった」
「何がですか?」
「羽村さんから報告を受けたんだ。奈緒さんの気を惹こうとして策を練ったことを、全てバラしてしまったと」
「ええ、ああ。別にいいですよ。むしろ愛されてるなーとか思ったほどなので」
気付けば2人とも一糸纏わぬ姿になっていて。クールメガネは切羽詰まった表情になっている。
「奈緒さん、男という生き物は、幾つになっても構われたい生き物なんだよ」
「そ、そうなんですか?」
「少なくとも俺はそうだ。好きになった人に好きになって欲しい。…あのさ、好きという感情は生き物と似ていて日々、成長していると思うんだ。残念ながら俺の好きはモンスター並みに急成長しているのに、奈緒さんの方は違う。このままではキミを食い尽くしてしまいそうだ」
ああ、愛され過ぎてて怖い。などと思いながらも私はこの夢見がちで情熱的な男性に現実を突きつけるのだ。
「…あの、気持ちはとても良く分かりました。でも、早くしないと2時間コースが終わるかと」
「何?それはマズイ!!あ、でも延長すれば…」
「だってあまり遅く帰ると、ウチの父がまた煩いと思いますよ」
「ああ、そうだった。では本腰を入れて励もうか」
「励むって…。他に言い方ありません?」
「他に?ううっ、難しいことを言うねえ」
「まあ、いいですけど」
「許してくれるのか?」
「ええ、豊さんのすることは大抵許しますよ」
「それは有り難い…さあ、では再び励もうか」
「だ~か~ら~、言い方!」
「さっき許してくれたじゃないか」
「それはそれ、これはこれなんですよ」
「ああ、もうっ、奈緒さんッ!!」
「はい、何ですかっ?」
「…俺のこと、好き?」
急に赤面するから、こっちまで頬が赤くなる。
「すっ、好きに決まってるでしょ」
「うん、ありがと」
「豊さんは?私のこと好き?」
「よくぞ訊いてくれた!俺は好きという概念を超え、奈緒さんが俺の一部となってしまっているというか、人間の身体は数年で全部入れ替わってしまうが、その細胞の中に奈緒さんが徐々に入り込み…」
ああ、まだまだ続くのね、その話。2時間がこのまま終わりそうだと思いつつ、私は愛しいその人をそっとそっと抱き締めた。
--END--
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