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<零>
その44
しおりを挟む……………
そんなワケでホームパーティー当日。
何と言うか、独白で語る元気も無いほど私は疲れ果てていた。
「やあ!お招き有難う。これはウチの奥さんと娘たちだよ」
「相良さん…土曜と言えば美容院は稼ぎ時。それなのに休ませてしまい申し訳ございません。大変お美しい奥様と可愛らしいお嬢様ですね!」
うう…。政親さんの友人、多過ぎ。
反対に私の友人、少な過ぎ。
そこそこ広いリビングとそれに隣接したデッキは、人で溢れ返っており。この中に私の友人が片手にも満たないという衝撃の事実。いや、靖子と高久さんに於いては政親さんも知っている人物なので、私だけの友人とすら呼べない気がする。
結局、何を訴えたいのかと言うと、こんな大量の人間を一気に紹介されても、覚えられないよ~ということだ。メガネを掛けているのが小田さんだと認識したその直後に新たなるメガネが登場する虚しさよ。
なんかもう、あちこちに小田さんが8人くらいいるような気がする…って本当はその中の1人だけが小田さんなんだけど。
「よお、政親!!お前、水臭いぞ。こんな可愛い嫁さん、いつの間に見つけたんだ」
「あはは、久しぶりだなあ、与田!」
メガネ男なのに、オダじゃなくてヨダだと。
もしかして私のことを試しているのか?!
まったく、せっかくの休日に何故こんな…。
そう思えば思うほど、公子さんへの怒りが増す。一目睨んでやろうとその姿を探すと、当の本人は剣持さんから少し離れて立っていた。
へ?どうしてそんなに離れているのか?そしてなぜ剣持さんは高久さんと靖子という意外な組み合わせで歓談しているのか?
「…なんとかして」
「えっ?!なッ??」
瞬間移動したのかと錯覚するほどの素早さで公子さんは私の真横に立ち、耳打ちしてきた。
「あの雑魚2人組を剣持さんから切り離して」
「はあっ?!失礼過ぎですよ、あの2人は私の招待客なんですけどッ」
「ふん、やっぱりね」
「やっぱりって、どういう意味ですか?」
「いいから早く!私と剣持さんをくっつけたくないの?」
「……(ゴニョゴニョ)」
ワザと聞こえない声でこう答えたのである。
『もちろん、くっつけたく無いですよッ!』
あたしゃアンタの召使いかっつうの。
剣持さんは女を見る目が有るから、わざわざ地雷案件を選ばないと思うんですけど。
…そうだなあ。そろそろ剣持さんもモデル風の美女に飽き始めた頃だろうから、一緒にいて楽しい…うん、靖子みたいなコが逆に新鮮でいいかも!
ニヤリと私は笑い、剣持さんの元へと向かう。
公子さんは無言でその後をついて来た。
「そうなんですよ~、月イチの試食会とかが、年配社員メインであまり参考にならなくて~。その意見を元に仕入れの合否を確定するので、もっと年齢層をバラバラにして欲しいんです」
「そうか。となれば試食専用の人員を外部から募るのもいいかもしれないね」
高久さんは茉莉子さんと話し込んでいてせっかく剣持さんと靖子が2人きりなのに、その話題は仕事オンリーのようだ。それよりも剣持さんってお酒飲んでもこの調子?どうしたら崩れるんだ、この人??
「零さん、は・や・く」
「はいはい、分かってますよ」
ええい、公子めッ、うるさいわ!!
聞こえないように舌打ちをして私は一歩前に進む。
「こんにちは、剣持さん!」
「こんにちは、零さん」
まるで保育士さんが幼子に挨拶するかのように、それはそれは優しく微笑まれた。
…認められている。
偽装ではなく、本当の夫婦になったくらいのタイミングで剣持さんが突然私に優しくなった。それは多分、自分が仕えている帯刀家の人間に嫁いだ者として認められたからに違いない。
というか、偽装だった頃には塩対応だったのに。まったくこの人は侮れないぞ。
「…さん、零さん?大丈夫ですか?お疲れのご様子に見えますが」
「いえ、全然大丈夫ですよ。少しだけ人あたりしたみたいです」
よくよく考えてみれば、もしかすると私が帯刀家の跡取りを産むかもしれないワケで。その辺の石ッコロ的な存在だった女が、これで一気に特別待遇になるのも頷ける。
しかし、それにしても心配し過ぎではないだろうか。なぜに人前で喉の奥を覗かれ、下瞼を裏返されているのか。
…ううむ。
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