66 / 111
<靖子>
その66
しおりを挟む「そ、そんなことを考えて…あの…」
人を何だと思っているのか?!と普通なら怒るところなのだろうが。目の前のこの人は、跡継ぎ問題に関して一番逃れられない運命を背負っているのだ。多分、時代の流れと照らし合わせ、抗ったり逆らったりもしてみたのだろう。それでも『帯刀家』としての呪縛から、解放されることは無かったのだ。
この人は大勢の人生を背負っている。
一蓮托生という言葉が脳裏に浮かび、改めて決心した。勇作の妻になるということは、帯刀家と共に生きていくということでもある。
「私に似てアホな子が生まれたら御免なさい。もう、先に謝っておきますね」
「うん、いいよ。メンタルは最強だろうし。とにかく頑張って励んでね」
ハイと言いたいところだが、内容が内容なだけに半笑いで頷くだけにした。
「…あ、社長!やっぱりココにいましたか」
その声に顔を上げてみれば、無表情な勇作が立っていて。私を見つけた途端、分かり易く破顔する。
「ごめんごめん、ちょっと靖子ちゃんに確認したいことが有ってさ。用事は済んだからもう戻ろうとしてたところ」
「行き先を伝えてくれないと、秘書たちが困るでしょう?同じことを何度言わせるんですか!」
「だから謝ってるだろ?そんなことより、昨日3回もしたんだって?初めてなのに辛かったってさ、靖子ちゃん」
「ち、違いますよ、2回ですッ」
…勇作ゥ。
社長の誘導尋問に見事引っ掛かってるし。そんで思いっきり真っ赤になってるし。
「ごめん靖子。もう来させないから!早く連れて帰るから!!」
「うわ…。本当に恋しちゃったのな、剣持さん。トマトみたいになっちゃって、なんか…わあ…」
「う、うるさいですッ。さあ、戻りますよ!」
「うん、じゃあね、靖子ちゃん」
バイバイと手を振る社長につられて、私も同じようにバイバイと手を振る。すると、社長の背後で勇作もニカッと笑ってバイバイしていた。くるりと社長が振り返り、その姿を見て固まる。
「うわ…。恋する剣持勇作、めっちゃ可愛いな。ちょっとだけ見ないフリしてやるから、チュウして来い。ちょっとだけだぞ」
てっきり仕事中だからと断わると思ったのに、勇作は子供のようにコクンと頷いた。
「え?まさか、会社で、嘘、勇作…」
「さ、さすがにキスはしないよ。でも、これはさせてくれ」
真面目な表情でいきなり頭ナデナデをする。
「ふ、ふあああん、最高…」
「よし、これで充電完了!」
キリッと顔を引き締めたかと思うと、社長の袖を掴んで颯爽と彼は去って行く。
ふふっ、可愛い魔王は私のトリコだ。
そう考えるとある意味、
私は世界最強なのかもしれない。
~~靖子編 END~~
───────
※こんにちは!たびたび顔を出す、ももくりです。
零に続いて靖子の話も無事に完結いたしましたが、なんと!このあと3組目の偽装結婚カップルが登場したりするのです。
うすうす察している方もいらっしゃるでしょうが、政親の兄である榮太郎さんと、その妻・茉莉子さんですよう。とにかくクセの強い2人なので、馴れ初めも強烈だったりします。興味のある方は、是非このままお付き合いくださいませ。
2
あなたにおすすめの小説
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
あるフィギュアスケーターの性事情
蔵屋
恋愛
この小説はフィクションです。
しかし、そのようなことが現実にあったかもしれません。
何故ならどんな人間も、悪魔や邪神や悪神に憑依された偽善者なのですから。
この物語は浅岡結衣(16才)とそのコーチ(25才)の恋の物語。
そのコーチの名前は高木文哉(25才)という。
この物語はフィクションです。
実在の人物、団体等とは、一切関係がありません。
極上イケメン先生が秘密の溺愛教育に熱心です
朝陽七彩
恋愛
私は。
「夕鶴、こっちにおいで」
現役の高校生だけど。
「ずっと夕鶴とこうしていたい」
担任の先生と。
「夕鶴を誰にも渡したくない」
付き合っています。
♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡
神城夕鶴(かみしろ ゆづる)
軽音楽部の絶対的エース
飛鷹隼理(ひだか しゅんり)
アイドル的存在の超イケメン先生
♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡
彼の名前は飛鷹隼理くん。
隼理くんは。
「夕鶴にこうしていいのは俺だけ」
そう言って……。
「そんなにも可愛い声を出されたら……俺、止められないよ」
そして隼理くんは……。
……‼
しゅっ……隼理くん……っ。
そんなことをされたら……。
隼理くんと過ごす日々はドキドキとわくわくの連続。
……だけど……。
え……。
誰……?
誰なの……?
その人はいったい誰なの、隼理くん。
ドキドキとわくわくの連続だった私に突如現れた隼理くんへの疑惑。
その疑惑は次第に大きくなり、私の心の中を不安でいっぱいにさせる。
でも。
でも訊けない。
隼理くんに直接訊くことなんて。
私にはできない。
私は。
私は、これから先、一体どうすればいいの……?
ちょっと大人な体験談はこちらです
神崎未緒里
恋愛
本当にあった!?かもしれない
ちょっと大人な体験談です。
日常に突然訪れる刺激的な体験。
少し非日常を覗いてみませんか?
あなたにもこんな瞬間が訪れるかもしれませんよ?
※本作品ではGemini PRO、Pixai.artで作成した生成AI画像ならびに
Pixabay並びにUnsplshのロイヤリティフリーの画像を使用しています。
※不定期更新です。
※文章中の人物名・地名・年代・建物名・商品名・設定などはすべて架空のものです。
旧校舎の地下室
守 秀斗
恋愛
高校のクラスでハブられている俺。この高校に友人はいない。そして、俺はクラスの美人女子高生の京野弘美に興味を持っていた。と言うか好きなんだけどな。でも、京野は美人なのに人気が無く、俺と同様ハブられていた。そして、ある日の放課後、京野に俺の恥ずかしい行為を見られてしまった。すると、京野はその事をバラさないかわりに、俺を旧校舎の地下室へ連れて行く。そこで、おかしなことを始めるのだったのだが……。
肉食御曹司の独占愛で極甘懐妊しそうです
沖田弥子
恋愛
過去のトラウマから恋愛と結婚を避けて生きている、二十六歳のさやか。そんなある日、飲み会の帰り際、イケメン上司で会社の御曹司でもある久我凌河に二人きりの二次会に誘われる。ホテルの最上階にある豪華なバーで呑むことになったさやか。お酒の勢いもあって、さやかが強く抱いている『とある願望』を彼に話したところ、なんと彼と一夜を過ごすことになり、しかも恋人になってしまった!? 彼は自分を女除けとして使っているだけだ、と考えるさやかだったが、少しずつ彼に恋心を覚えるようになっていき……。肉食でイケメンな彼にとろとろに蕩かされる、極甘濃密ラブ・ロマンス!
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる