かりそめマリッジ

ももくり

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<茉莉子>

その83

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 まだテスト段階だと考えれば、全てを受け入れるしか無いのだ。

「あの、でも、大丈夫です。多忙な榮太郎さんのことなので、スケジュールはタイトになるだろうと覚悟だけはしていましたから。逆に私の方は、時間を持て余していますし。結婚式のことでお手伝い出来ることが有れば、何なりと仰ってくださいね」

 長年培われた優等生キャラで、いつでもどこでも満点の回答を出せる自分を褒めてあげたい。

 恐る恐る榮太郎の方を見ると、ついウッカリ妖魔を視界に入れてしまう。すると食事を終えたアピールなのか、ナプキンで口元を拭きながら彼女は目を見開きながらこう言った。

「アナタたち、…してないわね?!私もそれなりに年齢を重ねていますから、そのカップルが事後かどうかなんて雰囲気を見れば分かりますッ!いったいどういうつもり?全部お膳立てしてあげたのに、何もせずに一夜を過ごすなんて有り得ないわ!」

『さすが妖魔!』と感心せざるを得ない。

 一応、それなりにボディタッチはされたし、キスもしまくったのでそこそこエロい雰囲気を醸し出していると思うのだが。

 最後までヤッていないと、なぜ分かるのか?

「分かるに決まってるでしょ?!その微妙な距離感ッ、余所余所しい態度ッ、さっきなんて肘が触れただけで焦ってたものッ。榮太郎、アナタ自分の立場を分かっているの?この結婚の意味を一番よく理解しているのは、アナタ自身のはずよ」
「…ええ、ですが母さん、茉莉子の気持ちも考えてあげたいのです。もっと互いのことを知り、愛情を育んで、自然にそういう行為へと辿り着きたいので、あまり急かさないでくださいよ」

 んもう、カワイイだけじゃない!
 榮太郎ったらシッカリ者!

「でも誰かが急かさないと先に進まないでしょ。私はね、わざわざ悪役になってあげているの。どんなに疎まれても、どんなに嫌われても、まだまだ圧力をかけまくってやりますからねッ」

 その言葉に妖魔以外の全員が苦笑いする。

 それから当たり障りの無い雑談をして、朝風呂が習慣だからとお義父さんが席を離れ、続けて妖魔も支度を手伝うと言って出て行く。

 そんなワケで我らも榮太郎の部屋へと移動し、スーツに着替えた彼と一緒に新聞を読んでいた。

「…あのさ、茉莉子。来週から同居って話、どうしても嫌かな?」
「いえ、あの、…はい」

 残念ながら私は、この愛くるしい男の前で嘘を吐けないようだ。

「本音を言うと俺、早く一緒に暮らしたい。どうしてもイヤなら仕方ないけど、その…、俺はイヤじゃないよ。だって茉莉子、可愛いし」

 か、かかか、可愛い?

 それ、ベッドの上でも言ってたよね?性欲効果が消えた今でも、そう見えるってことなの?しかも真顔でそういう台詞を言うって、榮太郎、アンタという男はいったい…。

 その謎はスグに解けた。いつの間にか背後に人の気配がして、なんとベランダに家政婦さんが潜んでいたのだ。朝、着替えを持って来てくれたサイボーグ高松とは別の、ちょっとポッチャリした女性である。

 新聞で隠しながら榮太郎はスマホでメッセージを入力し、私にその画面を見せてくる。

>隣りの母部屋とベランダが繋がっているんだ。
>俺たちの会話を盗み聞きしているから要注意。

 …ああ、はいはい。だからですよねー。
 私を可愛いと言うだなんて、おかしいと思った。

 ちょっぴり卑屈な感情にヤサグレながら再び新聞を読もうとすると、突然ガシッと肩を抱き寄せられる。

「あ、あのさっ、茉莉子は…その、俺のことをどう思ってる?」
「ど、どうって…」

 一瞬だけ榮太郎がベランダを見た気がした。

 そっか、家政婦さんに聞かせる用の答えを求められているんだな。優等生・茉莉子の本領発揮しようじゃないの。

「1人で色々な重圧と闘っているところとか、その立場の孤独さを考えると、本当は物凄く強い人なんじゃないかなと思います。なのにいつも笑顔なところが素晴らしい。えっと、最初は何とも思ってませんでしたが今はかなり好きですよ」
「好き?!本当に俺のこと、好き??」

 もっとですか?欲しがるなあ。

「ええ、勿論。そうでないと結婚しません」

 こんなもので如何でしょう?という意味でチラリと横目で見ると、なぜか榮太郎がフルフルと拳を震わせている。

「うおっ、俺も、俺も好き!」

 演技、上手~。
 …私は心の中で拍手しまくった。

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