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<茉莉子>
その95
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「えっ?!私は仕事だと聞いていたのですが」
海外出張から戻って来たお義父様が、榮太郎のことを私に訊いてきて。だから私は、夕方、本人から直接電話が有り『緊急の仕事が入ったので今夜は帰れない』と言われたことを告げたのだが。
「そんな急ぎの用件なんて有ったかな?まあいい、直接電話してみるよ」
という歯切れの悪い返事をされてしまい、混乱してしまう。そう、確かに電話での榮太郎は様子がおかしかった。いつもなら、1人の状態で電話してきて甘ったるい言葉を1つ2つブッ込んでくるのに、今回は最初から最後まで事務的。きっと傍に誰かいたのだろう。
誰かって、誰?
いつだったかは忘れたが、『ちょこちょこ1人になれる時間は有る』と言っていたはずだ。なのに、それさえも困難な状況とは、いったいどんな時だ?
えっと、もしかしてとうとうコトリさんと…。
その…食事の後でホテルへ直行したとか…。
ふるふると首を左右に振り続ける。優しい榮太郎のことだ。わざわざそれとバレるような行動は取らないし、取るとすればそれはもう覚悟を決めた時だろう。なんとなく嫌な予感がしてお義父様の姿を捜す。榮太郎と電話中ならば、その内容を知りたいと思ったからだ。
どうやら2階のバルコニーにいるらしく、1階ポーチに立つと会話がまる聞こえだ。
「そうか、それで今、ホテルにいるんだな?ああ、茉莉子さんにはくれぐれもバレるなよ」
ホテルにいて、私にバレては困ること?
…それって、つまり。
嫌な妄想だけがどんどん広がる。
「コトリさんは大丈夫か?頃合いを見て、帰してやれ」
ほらやっぱり、コトリさんも一緒だって。
待て、落ち着け私。
まだそうだと決定したワケじゃない。
もしかしてコトリさんがストーカーに遭ってるとか、そっちの可能性もまだ捨てきれないから。とにかく直接、榮太郎に訊こう。
それで私がもう要らないのなら潔く離婚届を書いてあげればいいし、必要だと言われれば最後まで役目を全うしよう。うん、この二択だな。
お義父様の電話が終わるのを待ち。その直後だと彼も頭の切り替えが出来ないかもなどと気を遣った私は、30分ほど待ってから震える指で電話を掛けた。
「はい、代理応答・中林です」
すると、応答したのはコトリさんで。悪びれもせずに彼女はこう言うのだ。
「榮太郎様は今、取り込み中です。急用であれば折り返し連絡させますが」
「いえ、あの、大丈夫なのでッ」
信じたくは無かったが本当に今、2人は一緒にいるらしい。トドメを刺すかのように、電話の向こうから微かに榮太郎の声が聞こえて来る。
>ごめん、ちょっとだけ眠るね。
>中林さんは泊まらずに帰っていいよ。
混乱した私は、慌てて電話を切るしかなかった。
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