異世界ハニィ

ももくり

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4.村で暮らそう

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 と、いうワケで。

 
 どうやら私は国境近くにある、
 この国最古の神殿に喚び出されていたらしく。

 馬車で2時間ほど揺られれば、あっという間に目的地へと到着したのだが、そこから彼等の元へは直行せず、暫く最寄りの村で過ごすことになった。
 
  なぜかと言うと。
  
 「一応確認しておくけど、高橋モモさんは、残りの人生を全部肉だけ食べて過ごせるのかな?」
 「ええっ、お肉だけ?!」
 
 「そう、肉だけで野菜はナシね」
 「あはは、まさかあ、そんなの無理ですよー」
  
  そっか、やっぱり…とかなんとか呟きながら、野々原くんは淡々と彼等の食生活について説明してくださるのだ。

 食材調達は当番制となっており、当番になった人は野山などで狩りをする。基本、空腹が満たされればそれで良いため、調味料などは使用せず火で炙るだけの簡単クッキング。

「高橋さんは前の世界で満ち足りた食生活を送っていたから、そんな生活は難しいと思うんだよね」
「はい、仰るとおりです」

 村には畑が有り、村民は自分達が食べる程度の野菜をそこで賄っているそうで。町からの商人も月に数回は訪れるので調味料や日用品も買うことが出来るのだと。

「高橋モモさんって、めちゃコミュ力が高いだろ」
「たっ、高いかな。普通じゃない?」
 
「ご謙遜を。いや、それとも自覚していないだけか?あのさ、キミはコミュニケーションお化けなんだよ」
「お、お化けとは…」

「ほとんどの相手を会って数秒で懐柔してしまう。生まれ育った環境も有るかもしれないけど、きっと持って生まれた資質だろうな。頼りないその見た目と、『一生懸命なんです!』といういじらしさ。そこのところが実に卑怯なんだよ」
「ひきょう」
 
 褒められているのか、貶されているのか。

 少しだけモヤモヤしたものの、まあ、その程度でへこたれる私では無い。うん、確かに幼い頃から母の背中を見て育った私は、人に頼ることが平気だ。だって、そうしなければ生き抜けなかったから。

 ひとつずつ、コツコツと学んできた。

 例えば真夏にエアコンが壊れ、熱くて死にそうになれば勤務中のお母さんに電話するより、隣人に助けを求めた方が早い。変な男の人に後をつけられた時だって、誰もいない家へ戻るより近所に住んでいる友達の家で匿って貰った方が安心だ。

 もちろん、御礼はする。それは金銭などではなく、庭の草むしりやお遣い程度の軽いものだが。そしてズルズルと甘えっぱなしにはせず、引き際も弁えている。たぶん私は、同年代の女子達と比べると愛想が多めでプライドがとても低いのだろう。

 それを察知していたとは、さすが賢者様。

「とにかく高橋さんは村人と馴染んで、流通経路を確保しないと食生活が悲惨なことになるからね」
「ハイッ!了解しました」

「キミは本当に前向きだねえ」
「ハイッ!よくそう言われます」
 
 
 
 
 
 
 
 …てな、やり取りをしたのが1カ月ほど前。

「おーい、モモちゃん。今日はお芋さんがたくさん摂れたから持ってきてやったぞ」
「わあ!嬉しいよジョゼフお爺ちゃん。御礼に石鹸を作ったから持っていって」
 
「うほお、これこれ。すごく汚れが取れて助かるんじゃ。そう言えば、もう少しで軍人さんとこに引っ越すんだろ?あっちに行っても、たまにはワシんとこにも顔を見せに来ておくれ」
「喜んで!私、ジョゼフお爺ちゃんとお話するの、だああい好き」

 去っていくその背中にバイバイと手を振っていると、我が家のドアが開き中から出て来た人がボソリと呟く。

「なんかまるで、あっちの世界で見たキャバ嬢みたいだな。それもランク低めで水っぽい酒をガンガン飲ませてくる感じの」
「はあ?っていうか、なんでノノくんがキャバクラのことを知ってるのよッ」

 皆様、どうぞ驚いてください。
 私、なんとノノくんこと野々原くんとこの一カ月、同じ家に住んでいますの。

「社会勉強だと思って、あっちの世界のことをひと通り体験してみただけだよ」
「でも、未成年が飲酒なんか…って、あ、もしかしてこっちの世界では飲酒可能となる年齢が違うのかしらん」

 だけど、ご安心を!
 彼は2階、私は1階で生活していて、食事の時くらいしか顔を合わせていませんからッ。

「えー、俺、言ってなかったっけ?」
「何を?」

 顎をポリポリと掻きながらノノくんは続けた。

「俺、師匠の不老魔力の影響で若く見えちゃうんだけど、実年齢33歳だから」
「ええっ?!」

 
 33さい。
 
 わ、私の倍近い年齢ですと…。
 
 
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