異世界ハニィ

ももくり

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6.ごたいめーん

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 その後、ノノくんが師匠に代わって話し出す。
 内容は若者Cからの疑問に対する答えだ。

 ──なぜ、召喚された女が1人だけなのか。

 ふむふむ。
 異世界人を召喚するには、メッチャたくさんの魔力が必要で。その魔力を溜めておける魔導具が存在しますよと。ちなみにその魔導具は、初代の王が母国アシュガルドから持ち逃げしてきた国宝なのね。

 ほうほう。
 しかも、溜めておいた魔力を一度でも使用すると再注入不可となるから、満タンにして最後まで使い切るしかないのですよと。なるほど、使い捨てかあ。んで、召喚の儀式は定められたタイミングで一気に魔力を放出しないといけないのに、その1回分が現在この国に存在する魔法士の魔力を全部集めても足りないのですかあ。

 つまり、その魔導具が使えなければ召喚自体、出来なくなるってこと?

 …ここで師匠が、補足として過去に召喚したその経緯を説明する。

「あの頃、王都では男性が罹患すると子が出来なくなるという厄介な疫病が発生しての。皆も知っているとおり、国境の軍人は3人編成じゃ。生まれてスグに国境に送られてきて、15歳で漸く一人前、35歳で引退となる。ということは、当代の年長が20歳の時には次代の育成にかかっておらにゃならん。

ところが、その疫病がいつまで経っても終息せず、国境に送る子も生まれていなかった。そんななか年長が26歳になってしもうて焦った当時の陛下が、国境に異世界人の女性を直接送れとの命を下したワケじゃ」

 ん?
 思わず私は挙手をする。

「なんじゃ、モモちゃん」
「あの、どうして異世界人のことを知ったのですか?というか、異世界人が魔力を多く持っていると、どうやって知り得たのでしょう?」

「ああ、実は召喚せずとも、異世界の方からこっちの世界へ落ちて来た人間がごくごく稀にいたのじゃよ。その人物は『落ち人』と呼ばれてな、ほれ、ここにいるノノもその子孫じゃ。だからアホみたい魔力を持っておるのだぞ」
「へあっ、ノノくんが?!」
 
「ふおっふおっふぉ。ノノの祖先はな、モモちゃんと同じ国の女性らしいのじゃ。だからアチラでも自然と溶け込むことも出来たんだろうて」
「はっ、ま、ほんと溶け込んでましたわ!」

 動揺が動揺して動揺を隠せない私。

 なんで先にそれを教えてくれなかったのか。
 アンタほんと、ミステリアスが過ぎるよ!

 そんな私を一瞥しながらも、
 しれ~っとノノくんは説明を再開する。

 へええ。
 結局、例の2人しか召喚出来なかったものの、最初に予定していた高位貴族の方々が国境へ送る子を無事に産んだのでヨシということになり。溜めておいた魔力が勿体ないから、召喚は当分ナシにしましょうという話になったのですね。

 ハイハイ。
 ところが、ここ最近は2人以上の子を産むことが忌避される傾向に有ったので、もしもの為に準備をしておけと陛下から直々に言われ。そして王都での婚約破棄事件によって、それが確定しましたよと。

 ここで私に倣ったのか、若者Bも挙手をした。

「まさかとは思うけど、魔導具に溜めてあった魔力を使い切った…なんてことは無いですよね?」
「なんでまさかと思うんだ?今回で使い切ったぞ」
 
 つかいきった、
 つかいきっ…
 つか…

 師匠とノノくんを除く全員が、
 ガ──ンという表情をしている。
 
 ノノくん曰く、魔導具に溜めてあった魔力は合計5回分しか無くて。女子3人の片道分と、ノノくんの往復分ですべて消化してしまったらしい。

 思わず顔を見合わせる、若者3人と私。
 
 
 
 
 
 あ。
 
 
 ここで漸く気付いた。
 やっと御尊顔を拝めたかも。

 これが、初顔合わせだよ!


「あ」
「うおっ」
「はッ」

 若者3人もそのことに気付いたようで、三者三様に奇声を上げた。

 慌ててカワイイ表情を作りながら彼等を観察してみる私。って、ムリムリムリ、直視出来ないんですけどっ。なんだこれ、こんなの有り得なくない?!

 まず、若者A。
 とんでもない美形!
 ふんわりと透き通るような金髪を揺らめかせ、真っ青な瞳がキラキラと音を立てて輝いている。もともと口角が上がった顔のつくりらしく、それが一層、柔和な雰囲気を醸し出す。まさに王子様そのものという感じ。

 続けて、若者B。
 これまたベクトルの違う美形!
 黒髪にグリーンアイで冷たい感じがするのに、一瞬だけ笑った時の破壊力ったら。あ、目が合った。死ぬ、このまま死ぬかもしれない。クール男子は好きですか?ハイ、私は大好きですっ!あうう、ズキュンって胸を撃ち抜かれましたっ。

 最後に、若者C。
 ちょいちょい三枚目っぽい雰囲気を漂わせていたから、てっきりそっち系の顔なのかと思えば。くそう、こっちもワイルド風イケメンなんですけど。情熱的な赤髪と、冷たそうな水色の瞳。その相反する色合いが何時間でもずっと見ていられそうなほど奥深くて、なんだかクセになりそう。

 
 この世の美をすべて集結させた3人と、
 れ、恋愛しろですって…。


 あー、意識が遠のいてくる。
 もう、ダメ。


 …あ、鼻血でた。

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