異世界ハニィ

ももくり

文字の大きさ
10 / 72

10.モモからの提案

しおりを挟む
 
 頑張ろう。
 って、何を?
 
 そもそも私は恋愛方面に疎い。
 初恋だって、散々だったし。
 
 あれは忘れもしない、中2の春のこと。仲良しグループのなかで初カレが出来た子がいて、そこから初恋はいつだったかという話題になり、それで漸く気付いたのだ。

 あ、もしかして私、
 委員長のことが好きだったかも…と。
 
 しかもその委員長って、
 小3の時に同じクラスだった男の子だからねっ。

 当時の私は副委員長だったから、共に行動する機会が多く。彼は穏やかな上に言葉遣いも丁寧で、ヤンチャでおバカな他の男子とは一線を画していたように思う。

 それ故に、女子からの人気がハンパなかった。

 ハンパなさ過ぎて、嫉妬にかられた女子から陰口を叩かれた私は、心がポッキリ折れてしまう。

 今まで知らなかっただけで私は皆んなから嫌われているんじゃないか、これまで良かれと思ってしてきた行為がもしかして有難ありがた迷惑だったのではないか。…そんな疑念にかられ、自分で自分がどんどん嫌いになっていき。
 
「でもね、ある日ふとこう思ったんですよ」
「へ?あ、なんかいきなり語るね、モモ嬢」

 語らいでか!

 打ち解けるには、まずお互いを知ること!
 これ基本ね。
 
 
 ──超能力者じゃあるまいし、無言のままで分かり合えるなんて有り得ない。例えば、自分が悪者だと思っていた人が、実はその人から見れば自分が悪者だったりするかもしれないのよ。全てを分かり合うことは難しいけど、分かり合おうと努力することは、止めちゃいけないわ。不思議よね、相手を知ると、自分のことも知ることが出来るの。

 …って、お母さんが言っていたもの!

「ニーニ、話はまだ続きますよ。人間って、いろんな要素が集まって成り立っていると思うのです」
「はあ、要素ねえ…」

「そうです。例えば、優しい、陽気、世話好き、几帳面、セッカチ…それらをひっくるめて1人の人間が出来上がっているとします。で、大抵の人は、相手の全部が嫌いなのではなくて、どれか1つの要素が嫌いになってしまうのではないかと」
「なるほど」

 ちなみに私とニーニは、村の仮住まいで野菜を袋に詰めている最中だったりする。

「ぎゃ、この菜っ葉、青虫がついてる!えいっ、えいっ、って、あと、そう、まだまだ話しますよ」
「はいはい、気が済むまでどうぞ」

「多種多様な人間がいますからね。世話好きな部分を鬱陶しいと思ったり、几帳面なところが息苦しいと感じたり。逆にそこが良いと言う人もいるのかもしれない。だから、その人の全部が嫌いなのではなくて、ひと部分だけが好きになれない…なんてことがあるのは当然なのです」
「ふんふん、それで」

 青虫を外へ逃がしてから、私はギュウギュウと野菜を入れた麻袋の紐を縛った。

「多分、それは相性の問題で。だからそんなに落ち込むことも無いのかな、なんて」
「そっか。って、なぜ今その話を?」

 意を決して私は伝えてみる。鼻血を出して倒れた際に、3人の会話を聞いてしまったことを。人間には相性というものが有るので、どうしても私が嫌ならば無理をしなくていいですよ、と。先ほど話に出た、魔力の多い彼ならば私が嫌では無いみたいなので、そちらと頑張ってみますよ、と。

 とっても良い提案だと思ったのに、
 あら、どうしたのかしら?

「あのう、ニーニ?何か言ってくださいよ」
「くっ…う、あれ、聞いてた…のか」

 私がコクコク頷くと、目の前のその人は何やらブツブツ呟き始める。なのでなんとなく気まずくなり、ムリヤリ初恋話に戻してみた。

「そ、それで委員長の話ですけど。あの、とにかく心が折れたせいで私は、彼に近づかないようにして、そのまま疎遠になってしまったんですね。でも、14歳の時に改めて振り返ってみれば、好きになった人は彼しか浮かばなかったって、そんなの切なくないですか?」

 おやおや?相槌すら打ってくれなくなったわ。
 
「お~い、ニーニ、起きてますか?えっと、もっと自分をしっかり持って、次こそは好きになった人と…ううん、正確には、誰かを好きになった自分ときちんと向き合っていこうと思う所存です。えへへ、頑張るぞ!オー!」

 上手に話を纏めたつもりだったのに。
 なぜかその後もニーニは、無言のままだった。
 
 
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

一級魔法使いになれなかったので特級厨師になりました

しおしお
恋愛
魔法学院次席卒業のシャーリー・ドットは、 「一級魔法使いになれなかった」という理由だけで婚約破棄された。 ――だが本当の理由は、ただの“うっかり”。 試験会場を間違え、隣の建物で行われていた 特級厨師試験に合格してしまったのだ。 気づけばシャーリーは、王宮からスカウトされるほどの “超一流料理人”となり、国王の胃袋をがっちり掴む存在に。 一方、学院首席で一級魔法使いとなった ナターシャ・キンスキーは、大活躍しているはずなのに―― 「なんで料理で一番になってるのよ!?  あの女、魔法より料理の方が強くない!?」 すれ違い、逃げ回り、勘違いし続けるナターシャと、 天然すぎて誤解が絶えないシャーリー。 そんな二人が、魔王軍の襲撃、国家危機、王宮騒動を通じて、 少しずつ距離を縮めていく。 魔法で国を守る最強魔術師。 料理で国を救う特級厨師。 ――これは、“敵でもライバルでもない二人”が、 ようやく互いを認め、本当の友情を築いていく物語。 すれ違いコメディ×料理魔法×ダブルヒロイン友情譚! 笑って、癒されて、最後は心が温かくなる王宮ラノベ、開幕です。

中身は80歳のおばあちゃんですが、異世界でイケオジ伯爵に溺愛されています

浅水シマ
ファンタジー
【完結しました】 ーー人生まさかの二週目。しかもお相手は年下イケオジ伯爵!? 激動の時代を生き、八十歳でその生涯を終えた早川百合子。 目を覚ますと、そこは異世界。しかも、彼女は公爵家令嬢“エマ”として新たな人生を歩むことに。 もう恋愛なんて……と思っていた矢先、彼女の前に現れたのは、渋くて穏やかなイケオジ伯爵・セイルだった。 セイルはエマに心から優しく、どこまでも真摯。 戸惑いながらも、エマは少しずつ彼に惹かれていく。 けれど、中身は人生80年分の知識と経験を持つ元おばあちゃん。 「乙女のときめき」にはとっくに卒業したはずなのに――どうしてこの人といると、胸がこんなに苦しいの? これは、中身おばあちゃん×イケオジ伯爵の、 ちょっと不思議で切ない、恋と家族の物語。 ※小説家になろうにも掲載中です。

【完結】乙女ゲーム開始前に消える病弱モブ令嬢に転生しました

佐倉穂波
恋愛
 転生したルイシャは、自分が若くして死んでしまう乙女ゲームのモブ令嬢で事を知る。  確かに、まともに起き上がることすら困難なこの体は、いつ死んでもおかしくない状態だった。 (そんな……死にたくないっ!)  乙女ゲームの記憶が正しければ、あと数年で死んでしまうルイシャは、「生きる」ために努力することにした。 2023.9.3 投稿分の改稿終了。 2023.9.4 表紙を作ってみました。 2023.9.15 完結。 2023.9.23 後日談を投稿しました。

【完結】そして異世界の迷い子は、浄化の聖女となりまして。

和島逆
ファンタジー
七年前、私は異世界に転移した。 黒髪黒眼が忌避されるという、日本人にはなんとも生きにくいこの世界。 私の願いはただひとつ。目立たず、騒がず、ひっそり平和に暮らすこと! 薬師助手として過ごした静かな日々は、ある日突然終わりを告げてしまう。 そうして私は自分の居場所を探すため、ちょっぴり残念なイケメンと旅に出る。 目指すは平和で平凡なハッピーライフ! 連れのイケメンをしばいたり、トラブルに巻き込まれたりと忙しい毎日だけれど。 この異世界で笑って生きるため、今日も私は奮闘します。 *他サイトでの初投稿作品を改稿したものです。

幼女はリペア(修復魔法)で無双……しない

しろこねこ
ファンタジー
田舎の小さな村・セデル村に生まれた貧乏貴族のリナ5歳はある日魔法にめざめる。それは貧乏村にとって最強の魔法、リペア、修復の魔法だった。ちょっと説明がつかないでたらめチートな魔法でリナは覇王を目指……さない。だって平凡が1番だもん。騙され上手な父ヘンリーと脳筋な兄カイル、スーパー執事のゴフじいさんと乙女なおかんマール婆さんとの平和で凹凸な日々の話。

異世界ママ、今日も元気に無双中!

チャチャ
ファンタジー
> 地球で5人の子どもを育てていた明るく元気な主婦・春子。 ある日、建設現場の事故で命を落としたと思ったら――なんと剣と魔法の異世界に転生!? 目が覚めたら村の片隅、魔法も戦闘知識もゼロ……でも家事スキルは超一流! 「洗濯魔法? お掃除召喚? いえいえ、ただの生活の知恵です!」 おせっかい上等! お節介で世界を変える異世界ママ、今日も笑顔で大奮闘! 魔法も剣もぶっ飛ばせ♪ ほんわかテンポの“無双系ほんわかファンタジー”開幕!

【完結】異世界召喚 (聖女)じゃない方でしたがなぜか溺愛されてます

七夜かなた
恋愛
仕事中に突然異世界に転移された、向先唯奈 29歳 どうやら聖女召喚に巻き込まれたらしい。 一緒に召喚されたのはお金持ち女子校の美少女、財前麗。当然誰もが彼女を聖女と認定する。 聖女じゃない方だと認定されたが、国として責任は取ると言われ、取り敢えず王族の家に居候して面倒見てもらうことになった。 居候先はアドルファス・レインズフォードの邸宅。 左顔面に大きな傷跡を持ち、片脚を少し引きずっている。 かつて優秀な騎士だった彼は魔獣討伐の折にその傷を負ったということだった。 今は現役を退き王立学園の教授を勤めているという。 彼の元で帰れる日が来ることを願い日々を過ごすことになった。 怪我のせいで今は女性から嫌厭されているが、元は女性との付き合いも派手な伊達男だったらしいアドルファスから恋人にならないかと迫られて ムーライトノベルでも先行掲載しています。 前半はあまりイチャイチャはありません。 イラストは青ちょびれさんに依頼しました 118話完結です。 ムーライトノベル、ベリーズカフェでも掲載しています。

巻き込まれて異世界召喚? よくわからないけど頑張ります。  〜JKヒロインにおばさん呼ばわりされたけど、28才はお姉さんです〜

トイダノリコ
ファンタジー
会社帰りにJKと一緒に異世界へ――!? 婚活のために「料理の基本」本を買った帰り道、28歳の篠原亜子は、通りすがりの女子高生・星野美咲とともに突然まぶしい光に包まれる。 気がつけばそこは、海と神殿の国〈アズーリア王国〉。 美咲は「聖乙女」として大歓迎される一方、亜子は「予定外に混ざった人」として放置されてしまう。 けれど世界意識(※神?)からのお詫びとして特殊能力を授かった。 食材や魔物の食用可否、毒の有無、調理法までわかるスキル――〈料理眼〉! 「よし、こうなったら食堂でも開いて生きていくしかない!」 港町の小さな店〈潮風亭〉を拠点に、亜子は料理修行と新生活をスタート。 気のいい夫婦、誠実な騎士、皮肉屋の魔法使い、王子様や留学生、眼帯の怪しい男……そして、彼女を慕う男爵令嬢など個性豊かな仲間たちに囲まれて、"聖乙女イベントの裏側”で、静かに、そしてたくましく人生を切り拓く異世界スローライフ開幕。 ――はい。静かに、ひっそり生きていこうと思っていたんです。私も.....(アコ談) *AIと一緒に書いています*

処理中です...