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26.やっと元どおり
しおりを挟む昏倒しても、相変わらず意識はあるんですよ。
しかも、今回はコンスタンティン殿下の身体をお借りしておりますのでね。って、さっきから誰なの?頭をコンコン叩きまくっているのは。
>おい、モモ嬢。
へ?声が聞こえたような。
>俺だよ、アーサーヴェルトだ。
なぬ?
ど、どこにいるの?
>師匠がキミの身体を転移させてくれたから、
>すぐ傍にいるんだが。
>そろそろ起きてくれないだろうか?
ぱちり。
瞼を開くと、そこに自分がいるという不思議。しかも自分が自分を心配してくれているという、ややこしい構図に思考が止まってしまうのは仕方ないワケで。
「目を覚ましてくれて、良かった。キミは中庭で昏倒し、医務室に運び込まれたんだ。それから師匠が上手いこと言ってくれて、なんとかキミと2人きりになれたんだけど…って、あっ、もう時間が無いのでとにかく元に戻ろう」
「あの、でも、戻り方が分からないんですが」
ちなみに最初のは男らしい口調だけど声が私で、後のは女っぽい口調なのに声はコンスタンティン殿下なんだな。
「俺が説明するから一緒にやろう。まずは目を閉じて」
「はい」
「後頭部をノックされる感じがすると思うから、モモ嬢もノックを返して」
「うっ、はい、こ、こうですか??」
「うん、その調子」
「ぇ、えあ、あ?」
…で、次に瞼を開けると元どおりになっていた。
「あれっ?なんだか気のせいか身体が軽いような。もしかして俺に何かした?」
「あー、はい。それがですね、例の男爵令嬢の魔力を根こそぎ吸い取りまして」
えっ、そんなに目を剥いて驚かれちゃうのは心外だな。
「キミは固有魔法をコピーするだけだと聞いてたんだが」
「よく分かりませんが、コピーではなく吸い取っていたみたいです」
「吸い取る?」
「はい。通常であれば相手を気付かせることもなく、けれど自分でもその固有魔法が使えるようになるという絶妙な量を吸収しているようです。ところが先ほど、吸い取る量を意識的に増やせることが分かりまして。あの男爵令嬢が魅了魔法を悪用しようとしたので、全部奪い取ってやりましたわ!はっはっはっ」
私ってば、知らない人が聞いたら、まるで悪代官みたいな物言いだな。
「やっぱりサナ嬢は魅了持ちだったのか?」
「サナっていうんですか、あの男爵令嬢。って、はい、そうです。魔導具などは使用していなくて、彼女自身が魅了魔法の保持者でした」
私の返事を聞き、一瞬だけ片眉を上げたアーサーヴェルトは自分の顎を撫でながらこう言った。
「…ん?えっと、もしかしてモモ嬢は…昏倒した際に、意識だけは有るのか?だから、俺とノウゼンノットハルト様の会話を全部聞いていた…と。くそっ、そうか、だから俺と入れ替わっても然程パニックに陥らないし、サナ嬢に対しても冷静に対処出来たんだな」
「へ?」
「あのさ、キミが固有魔法も取り込んでいて、魔力を減らさないためにそれが使えなくなる暗示がかけられているということを知っていたんだろう?」
「ううっ、はい」
こっ、この人、鋭すぎない??
「そっかそっか。えっと、じゃあ、話を戻すよ。固有魔法の吸収については理解したが、魔力の方はどうだ?基本的に1人に対してどのくらいの割合で吸収している?」
「それは私にも分かりません。どうやら自動で取り込むシステムらしく、意識的にその量を調整することは可能かも…としか言い様が無いのです。でも、魔力がカラッポになると魔法が使えなくなりますし、たぶん少量しか吸収していないと思うのですが」
ガチャッ
なんてやり取りを続けていると、ドアが開いて師匠とノノくんが入って来た。
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