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58.モモ、後悔する
しおりを挟むその時の心情を、モモは後にこう語っている。
──ほら、あっちの世界でもよくニュースで『んなバカな!』と驚く事件を紹介していなかった?なんでバレないと思ったのかな、この人…という感じの。だって、誰が見てもミエミエな犯行手口なんだよ?だけどね、きっと当事者にとってその時はそれがベストだったんじゃないかな。たぶん、冷静になってから漸く気付くの。
…やっちまったなって。
うん、そう、私も今がその状態。ごめんねノノくん、バカな娘で。でも、魔力なんてまたすぐに溜まるんでしょ?ねえ、お願い、そう言って。ええっ、私が魅了の力を奪った例の男爵令嬢は、今でも魔力ゼロのまま?!うそ、本当に?いったいどういう理屈なのかな?…今のところは不明?ふうん、そっかあ、そうなんだ。
しおしおと萎びていくモモを後目に、男性陣は険しい表情のまま会議室へと向かって行く。ちなみに、あれからの経緯を説明すると、
1)モモが第三王子の魔力を奪う
2)第三王子、意識を失い倒れる
3)国境軍の宿舎内にある救護室にて介抱
4)第三王子、死んだように眠り続ける
5)翌日、目覚めた第三王子が大騒ぎ←いまココ
てな感じである。そりゃあ、今まで有った魔力が無くなれば気付くに決まっているし、真っ先に疑われるのは大魔法師の一番弟子でもあるノノくんだ。幾ら魔力が多いとは言え、異世界から来た能天気そうな娘が疑われることは無い。そして、後ろ暗い部分が有り過ぎた彼等は身分が明かせないため、国として抗議することも出来ず。苦肉の策として、相談という形で話し合いを求めて来たらしい。
つまり、自分達は普通の商人だけど、珍しいことに魔力を持っていて。それが商談の場で突然消えてしまったみたいなんですと。だから原因を追究し、元に戻して貰えませんかと言っているそうだ。
「ノノくんは会議に参加しなくて良いの?」
「今から行くつもりだ。いいか、モモ。お前は何もしていないことにする。もしアイツらが訊いてきたら知らぬ存ぜぬで通すんだぞ」
そんな高度な演技を要求されるとは、なんたる重責。そして敵とは言え、王子から魔力を奪うということがどれほど罪深いことだったのか、今更ながらに後悔しきりのモモだった。
「敵国で間者をさせられているくらいだし、三番目の王子ってとっても立場が微妙なんだろうな。もしかすると後ろ盾の無い側妃の息子とかなのかも。このまま帰国したら、きっと無能扱いされた上に無慈悲な廃嫡コースも有り得たりして。父王からは言葉の暴力を、兄王子たちからは殴る蹴るの暴力を受けてボロ雑巾のようになってしまう可哀想な第三王子…。うう、なんてことをしてしまったのかしら」
モモは勝手にネガティブな想像を膨らませ、心の底から反省した。そしてもう、こんなことはしないぞと固く決心したのだが。
なんとその数日後に、ノノくんが攫われてしまったのである。
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