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69.モモ、目覚める
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その日、イシュタールの国境で雄叫びが聞こえた。
「モモオオオオッ」
続けて、軍用宿舎内のあちこちで『えっ』『おっ』という声が上がり。とある部屋に全員集合したのは、僅か5分後のことである。
「目が覚めたのか?!」
「…ノノくん」
そう、あの後モモはひたすら眠り続け。敵国からの報復を警戒するため、こうして宿舎の一角にて皆が交代で面倒を見ていたワケなのだが。周囲の心配も虚しく、どんどこ月日は過ぎていき。
なんだかんだで一カ月が経とうとしていた。
その間、王城の方にはアシュガルドから抗議のための使者が数回訪れたものの、コンスタンティン情報に寄ると知らぬ存ぜぬで貫き通したらしい。まあ、そんな強気な態度で出れるのもあちらが魔力保持者ゼロとなり、戦争をすれば余裕で勝てると分かっているからだ。
「何て無茶するんだよおお、もう、死んだかと思ったじゃないかああ…」
「ごめんなさい。あの、アーサーは無事?」
「今日は警備当番だからココにはいないけど、アイツは大丈夫だよ」
「良かったあ。あと、ほら、あれは?」
「あれ?あ、もしかして第三王子か?」
「うん、それ!」
ノノくんの話に寄れば、第三王子は魔法メインで戦う人だったようで。魔力を失ってしまったことにより、容易くニーニとクロさんに捕縛されてしまったのだと。でも、アシュガルドに対して魔力奪取の件を『知らぬ存ぜぬ』で通している手前、第三王子を返還することは憚られるということになり。なんだかんだで彼も一カ月もの間、この宿舎に併設された牢に閉じ込められているのだという。
「いっそ毒殺しちゃってもいいんだがな」
「ノ、ノノくん?!そんな物騒なこと言わないでッ」
「だが、全部知ってるんだぞ、あの男は。このまま放置するのは余りにも危険だ」
「でも、知っているだけで、悪いことはしてないでしょ?」
このままでは第三王子の毒殺が決定してしまうと焦ったモモは、慌てて話題を変えようとする。
「そ、そうだ!私、すごく魔力が溜まったでしょ?そのせいで不調をきたしているんだから、さっさと異世界召喚して、ガバッと魔力を使った方が良いのでは」
その提案に師匠がコクコクと頷く。
「そうなんじゃよ、実は識者レオンに鑑定して貰ったところ、モモちゃんは一時的な魔力過多の状態に陥っているらしくてのう。いくら器が大きくても、一気に取り込み過ぎたのじゃろ。でな、このままだといつまた眠りこけてしまうやも知れん。手っ取り早い解決法はズバリ、消費することだとワシも思う」
「それじゃあ、再びノノくんが異世界へ行って選定を?」
問いに対して師匠はニンマリ笑いながら答える。
「今度はノノではなく、モモちゃんに行ってもらおうかと思っておるのじゃ」
「ふへ?わ、私ッ??」
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