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ずっとあなたと
しおりを挟む原さんも山辺さんも、私と付き合っていた癖に
平気で他の女性のところへ行ったの。
でも、この人は
『恋人同士になると、他の異性と付き合えない』
…本気でそう言ってるんだよ?
「うう、もうダメ」
「な、なに?!どうした恵麻??」
「長澤、最強…。好き過ぎて、死ぬ…」
「はあん?意味ワカンナイ、何だよそれ?!」
このあと私たちは朝までメチャクチャ愛し合った。
……
数日後。
「恵麻~、これもう運んでいいのか?」
「うん、お願い。あと、コレも」
そう、ただいま引っ越しの最中で。
業者に依頼したから何もすることが無いはずなのに、長澤はなぜか嬉しそうに荷物を運んでいる。
「さあて、あとは向こうに行くだけだな」
荷造りはかなり時間が掛かったけど、トラックに積み入れるのはたったの1時間。私と長澤はこれからバスに乗って移動する。引っ越し先は築23年のワンルームで、長澤のマンションとは目と鼻の先だ。
「あのさ、気づいてないかもしれないけど、恵麻、さっきから鼻歌が漏れてるし」
「え、やだ。無意識~」
だってバスが歩道橋の下を通るたび、なんだか幸せな気分になるの。それが、あの歩道橋じゃなくてもね。それに、なぜかそこを通るたびにあの歌が必ず浮かんでくるんだな。
…HYの『366日』。
失恋ソングのはずだけど、私にはとても幸せな歌に感じちゃう。
「ふふんふ、あなた~のことばかり~」
「なあ、恵麻。照れるから止めてくれ」
なぜ照れる?
まあ、まんざら間違いでも無いけどね。
熱視線を送れば、あっという間に顔が赤くなる。
「発見!長澤って、赤面すると鼻まで赤いよ」
「うるさい、俺で遊ぶな」
などと怒ったフリをしながら私の手を握ってきた。
「両手で吊り革に掴まらないと、急停止したときにコケちゃうかも」
「…ん、分かったよ」
混んでるバスの中。『分かったよ』と言いながら、長澤はその手を離してくれない。コッソリその目を探ると、彼は恥ずかしそうに呟く。
「仕方ないだろ?だって離せないんだもん」
その言い方にキュンときて、照れ隠しで答える私。
「ば、ばあか」
そう、甘くとろけるような声で何度でも。
「もう、ばか、ばか」
…ああ、アナタと一緒にいると、
哀しい歌が幸せな歌に変わり、
混雑したバスの中を至福の時間に変え、
孤独だった心も温かく満たしてくれる。
いったいどんな魔法を使っているの?
ねえ長澤、教えてよ。
ねえ、ねえったら…。
--END--
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