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4.ランチの乱
しおりを挟むそんなこんなで、1カ月が経過した。
…今日の私はなんとポニーテールだったりする。もちろん、髪を結んだ位置は低めで年齢相応の落ち着きを醸し出しているつもりだが、こんな私ごときに異世界の住人たちは心をときめかせているようで、用も無いのにチラチラ見に来る。
「希代はさ~、俺の気を引こうと必死だよな~。努力は認めるけど、ごめん、お前は俺のタイプじゃないから」
「あははっ。またまたご冗談をッ」
右隣りの席の田島さんは自意識過剰な人らしく、『俺に惚れるなよ』的な忠告をしてくるのが正直ウザイ。いつもの田島節が終わると、今度は左隣りの席の龍が話し掛けて来た。
「希代、このデータをまとめておいてくれるか。あと、こっちのバグは修正済なんで後は頼むよ」
「はい、かしこまり。あ、先にランチ行ってもいいですかね?今日はシステム開発の社員2人と一緒に食べる約束をしているので」
「あー、どうぞ。じゃあ、俺も食べてくっかな」
「もしかしてサカイに行きますか?」
サカイというのは、会社近くの洋食店だ。
「うん、だって水曜は日替わり定食がミックスフライだろ。俺さ、アジのフライが大好きで」
「んじゃあ、一緒に行こうよ」
突然タメ口になったのは、お昼のチャイムが流れたからだ。私の中では、仕事中は敬語、それ以外はタメ口と巧みにONとOFFを切り替えているのである。
「おー、そんじゃもう出るぞ」
「はーい」
財布とハンカチとスマホだけ持って立ち上がる。普段は電話番なども有るので自席で弁当を食べるのだが、事前に伝えておけば外食も自由だ。代わりに事務所にいてくれるという清水さんに会釈して私は足早に龍の後を連いて行く。やはりイケメンは正義なので比較的この男と一緒にいることが多いが、恋愛感情は全くと言って無い。こうして一緒にランチしたり、残業後に飲みに行ったりもするが、話の内容は仕事関連のことだけだ。
「いらっしゃいませ!何名様ですか?」
ドアを開けた途端、恰幅の良い女性従業員からそう訊ねられ、約束している社員の名前で予約されているはずだと伝えると、すぐに確認が取れた。しかし、残念なことに龍の方は満席だと断られてしまったので、相席を薦めてみる。
「じゃあ龍は私達と食べればいいんじゃない?こっちは合計3人だから、一席余るはずなの」
「いや、さすがにそれはちょっと…。だって、積もる話もあるだろう?俺がいたら気まずいよ」
なんてやり取りをしていたら多忙な女性従業員の機嫌を損ねてしまったらしく、『とにかく席に案内します』と言われてしまい。私は、帰ろうとする龍の腕を強引に引っ張って一緒に歩き出す。
「あれっ?!私、山口さんと鹿島さんの2人とランチの約束をしたはずなんですけど…」
「えッ、なんで須賀も一緒なんだよ?!」
戸惑うのも当然だ。先に席に着いていたのは誠一郎1人だけで、誘ってくれた社員2人の姿が無かったのだから。
「お客さん、とにかく座ってくれませんか?ご注文がお決まりでしたらどうぞ!」
女性従業員のド迫力に思わず龍と並んで着席し、『日替わり定食で』と声を揃えて注文する。──気まずい沈黙。そしてようやく誠一郎が意を決したように、ポツリポツリと話し始めた。
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