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35.頑張るふたり

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 ポツンとホテルのロビーで立ち尽くしていると、絶妙のタイミングでスマホにメッセージが届く。
 
「えっと…キヨちゃん、ウチの主任からなんだけど『どうせ明日は休みだしホテルに泊まって熱い夜を過ごせ』だってさ。あ、先輩からも何かメッセージ届いた。こっちは『御門に彼女が出来たことだし、次はいよいよ俺の時代だ!!モテモテになっちゃうぞ、ゴッメーン』って、なんか妙なテンションになってるな、皆んな…」
 
 そう言いながら、圭くんはフロントに向かって歩いていく。そっか、今からチェックイン可能か確認しているんだな。って、早ッ。もうこっちに向かって戻って来た。んで、手で丸を作ってるから今晩ここで泊まることが決定したのだろう。 

 そんな予定じゃなかったから、えっと下着は…大丈夫、上下揃ってるしまあまあ可愛いヤツだ。それからえっと、クレンジングや化粧水なんかはホテルのアメニティで我慢するとして、メイク道具は有ったっけ?ファンデとアイブロウと…。脳内であれこれ考えていると、強引に手首を掴まれてそのままエレベーターへ。そして入ったのは最上階のツインルームだ。圭くんいわく、この部屋しか空いていなかったらしい。ドアを閉めた途端、圭くんが急に私を抱き上げ、物凄い勢いでベッドまで運び、身ぐるみを剥がされてしまった。
 
「圭くんは山賊なの?」
「へ?なんで…ああ、身ぐるみ剥がしたから!」
 
 そういう鈍くても最後には理解してくれるとこ、嫌いじゃないよ!!
 
「シャワーを浴びさせて欲しいんだけど」
「OK!なるべく早くね」
 
 軽いな、おい。って、なんでもう脱いでるんだ。お前は私の後だろシャワーを浴びるの!!ギュウギュウって、なんで一緒に入って来る?
 
「せ、狭いんだけど」
「じゃあもっと俺にくっつけばいい」
 
 背後から忍び寄る手が、勝手に私の体を洗おうとしている。
 
「圭くんったら、甘えんぼさん。もっと離れようね、ほら、おててはこっち!」
「いや、だって、前回は半分しか入らなかったからさ、今回は前戯をこれでもかというくらいミッチリしようと思っているんだ」
 
 何エロいことを爽やかに言ってんのよ!
 
 キッと睨もうとして振り返ったら、圭くんの顔が超ドアップで。あまりにも真剣なその表情に思わず私も察してしまうのだ。そっか、そうだよな。2人が交際していく上で、セックスが成立しないというのは死活問題なんだよね。
 
「痛くても入れてしまえば慣れるって聞いたよ。あと、バックからも試してみよう」
 
 真面目に私たちは意見を出し合う。
 
「キヨちゃんだけ痛いなんてイヤだ。それなら俺、しないで我慢する」
「長い間していないせいで狭くなってるんだと思うのね。だからきっと痛いのは最初だけだよ」
 
 恥ずかしくない、だってこれは大事な話だから。そしてなんだかんだと試行錯誤の末、無事に私たちは結ばれたのである。
 
 
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