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私達は絶対に絶対にヨリを戻したりしない
しおりを挟む「マウンティングというのは、自分が優位だと思っているからこそ行なうんだろ?」
「はあ、まあ、そうですね」
「俺と宮丸くんを比べてみろ、どこをどう比べても俺の方が上じゃないか」
「いや、でも若さというかフレッシュさで言うと…ゴニョゴニョ」
あ、睨まれた。
「それじゃあトータルで比較してみろ。スペックはどうだ?」
「そりゃあ廣瀬さんの方が上ですけど…」
コクコクと激しく首を縦に振りながら廣瀬さんは最高のドヤ顔で続けた。
「マウンティングを止めさせるには、彼氏自慢で勝てばいいだけの話だ。どうぞ遠慮なく俺を自慢してくれ」
「はあ…」
そう言われましても。
「でも、あの、廣瀬さんの彼女が私だと広まってしまうワケですが、そこのところは宜しいのでしょうか?」
「いいよ!俺、当分は本物の彼女をつくる時間無いし。半年ほどしたら破局したということにすれば大丈夫だろ」
悪知恵が働く男だな。そう思ってジロジロ見つめていると、突然どこからかひと昔前にヒットしたテイラースウィフトの曲が流れ出した。
「えっと…、もしかしてこれって千脇さんのスマホの着信音で、相手は前田くんだったりする?」
「な、なんで分かるんですか?」
「そりゃあこの曲のタイトルを和訳するとさ」
「『私達は絶対に絶対にヨリを戻したりしない』ですもんね、あは」
そんなことを呑気に話していたら着信はいつの間にか切れていた。…ので、のろのろとサイドボードに置いてある自分のスマホを取りに行く。廣瀬さんの手前、平気そうに振る舞ってみたものの内心バクバクで。あの男、1カ月も連絡して来なかったクセに何を今さら電話なんかしてくるのか。
「掛け直したら?どんな用件か気になるんだろ?」
「う…っ、いえ、ダメです。だってもう彼には婚約者が…」
「もしかして仕事のことかもしれないし、掛け直してみればいいじゃないか」
「この時間に仕事のことで疑問が有れば、私なんかより向こうに同行している迫田さんに訊くと思うんですよね。だからきっとこれはプライベートな電話で、私は出ちゃダメなんです」
「そう言いながらも気になるクセに」
「うっ」
一瞬だけ心が揺れたが、再びテイラー・スウィフトが『絶対にヨリ戻さないってば、コンチクショウ!(※超訳)』とカッコ良く歌ったので私も仁王立ちしたまま耐えた。
「鳴ってるよ、千脇さん。前田くんからの電話だぞ」
「分かってますが、でも出ません!」
「それならいっそ着拒設定にしてしまえばいいんじゃない?」
「いえ、でももしかして仕事の電話が掛かってくるかもなのでッ」
「は?電話に応答しないで仕事の電話かそうじゃないかをどうやって判別するのさ?もしかして千脇さん、エスパーなの?」
「バカ言わないでくださいよ。えっと、日中だと休憩時間以外に掛かってくるのは仕事でしょうし、休憩時間やこんな夜中に掛かってくるのは私用だと思うんです」
『なるほど』と呟きながら廣瀬さんはチラリと私を横目で見て、そしてボソリと言うのだ。
「なんか、いじらしいな」
「は?」
「俺の前ではサバサバしてて、ちっとも女っぽくないのに。前田くんからの着信でアッという間に女の顔に変わっちゃうんだもん。なんかさー、そういうのってグッとくるね」
「う、あ、そん…な、また私を揶揄って!」
必死で強がってみせたのに、なんだか何かが決壊した。
そして慌てまくった私はどうにか話題を変えようとして、廣瀬さんが期間限定の彼氏になってくれるという提案に乗ることにしたのだ。
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