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しつこい、うるさい、しょぼん
しおりを挟む※再び美玲視点へと戻ります。
──────────
しつこいしつこいしつこい。
「美玲、ほんともう別れろって。鈴木のアホ野郎な、昨夜も杉崎と一緒だったとさ。郊外のクソ高いフランス料理店で、仲良くメシを食ってたらしい。たまたま営業部の久保さんがその近くの客先を訪問してて、俺に教えてくれたんだよ」
「よ、余計なお世話ですし。そんでもって、勝手に他部署の方々へ鈴木さん情報を提供するよう呼び掛けないで欲しいですし」
給湯室で洗い物をしている最中だったので、私の手は泡だらけ。それでもお構いなしに山川さんは続ける。
「美玲はそんな上等な店に連れていかれたこと、無かっただろう?そんだけ杉崎には本気なんだって。もう諦めろ。アイツはお前の手に負えないから」
うるさいうるさいうるさい。
ただでさえ、挫けそうになっているのに。
これ以上、私を誘惑しないで。
まだもう少し信じていたい。
もう少し、もう少しだけ…。
大きな溜め息を吐いて、山川さんは去って行く。その後ろ姿をチラ見しながら、再びマグカップを洗い出す。
きょ、今日は帰って何を食べようかなーっと。
フランス料理なんか全然、食べたくないもん。
堅苦しくて食べた気がしないだろうし、
ちっとも羨ましくなんかないもん。
あは。もう少しで誕生日だな、私。
きっと鈴木さんは知らないはずだから、
後で伝えてみちゃおうかな。
いつもの居酒屋でもいいから
『オメデトウ』と言って貰えたら、嬉しいな。
…などという、ささやかな願いも虚しく。
「え、ああ、その日はちょっと、急ぎの仕事が。いや、俺だけじゃなくて美玲も大残業になるぞ。と、とにかくスッゴイ量の修正がくるはずだから」
「ええっ、そうなんですか?いったいどこの部署からの依頼でしょう」
「うっと、俺も部長からチラッと聞いただけで、詳細は知らないんだよ。まあ、とにかくその心づもりでっ」
「ハァイ。分かりました」
そっかあ、誕生日だったのになあ。
このとき、しょぼんと項垂れていた私は、
鈴木さんの異変に気づくことが出来なかった。
そう、思いっきり挙動不審だったのに、なぜかスルーしてしまったのだ。
………………
「な、なになになに、何なんですかッ?!」
──そして迎えた誕生日当日に、
漸く全てが明かされる。
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