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朝日家の次女
しおりを挟む「へえ、じゃあ告白するつもりは無いんだ?」
「なっ、あ、当たり前ですよっ。私ごときが同じ土俵に立てるとは思ってません」
見事カップル成立となった出会いパーティーのあと、私たちは会場近くのホテルのラウンジでコーヒーなんぞ飲んでいた。まあ、カップル成立と言ってもインチキなんですけどね。どこぞの社長から『ぜひ娘の婿に!』と迫られ、それを回避するためだけの恋人役…それが私だ。
目の前に座っている内藤さんという男性は、内藤工務店の跡取り息子とかで。
いやもう、絶対にモテるでしょ、コレ。
大らかで人当たりの良いその性格とか、微かにタレ目になるその笑顔とか、ガッシリしているのに相手を委縮させない体のバランスの良さが『おれーっ、モテモテなんですけどおおおッ!』と全身で叫んでいるようだ。
対する私…コホン、改めて自己紹介しよう。朝日 香奈23歳、三姉妹の真ん中に生まれ、彼氏いない歴=年齢という残念な女である。
好きな男性はいる。
それは1つ年上の真鍋 大介さんだ。
彼との出会いは、高校に入ってすぐ友人に誘われてバスケ部のマネージャーになった時に彼がその部員で。面白くて誰からも好かれる大介さんは何故か私ととても気が合い、買い出しなどもよく一緒に行ってくれたし、プライベートでもカラオケや食事を楽しんだ。
…勿論、2人きりでは無かったが。
私にはコンプレックスが有る。
それは家族が美男美女ということだ。
残念ながら身内の贔屓目では無く、若かりし頃の母はモデルをしていたし、そのお陰で父に見初められて結婚したのだから間違い無いだろう。
ちなみにその父も単なる銀行員のはずなのに、その端正な顔立ちの虜となる女性が後を絶たず。コッソリ盗撮されていたり、妻子がいると公表していたにも関わらず郵便ポストにラブレターが投函されていたりと数々の逸話を残している。
その娘たちも両親の血を濃く継いでいるらしく、姉は高校の文化祭で、妹は大学でミスに選ばれたという折り紙付きの美しさなのだ。
…私以外は。
そう、目も鼻も口もパーツ毎に見れば同じだが、如何せん配置が微妙にズレており。目と目の間が少し離れ気味で、顔の輪郭も祖父に似たのかちょいと丸いのだ。
親戚の中にデリカシーの無いオジさんがいて、この人がある日こう言った。『香奈ちゃんだけ可哀想』と。それは遠回しに不細工だと評しているワケで、いくら宴席で酒に酔っているからってそこまで言う?…というくらいにオジさんは私を完膚なきまでに叩きのめしてくれたのだ。
「いやあ~惜しいっ!これで香奈ちゃんが美人だったら、美人三姉妹で有名になっただろうに。1人だけそんな顔って、神様も残酷だよなああ。
ん?何だよその恨めしそうな顔はッ。このオジさん酷いこと言ってるって今は恨むだろうけど、後で俺に感謝する日が絶対に来るぞ。
世の中な、美人には優しいけどブスには厳しいもんなのッ。お姉ちゃんと妹がチヤホヤされているのに、自分だけ邪険に扱われてる…とかさ、他人を恨む前に肝に銘じておけっての。
何度でも言うぞオ!俺は間違ってない!!お姉ちゃんと妹は真綿にくるまれてヌクヌクの人生で、香奈ちゃんだけが世間の荒波にもまれまくって生きていくことになるだろうなッ」
当時6歳だった私は大号泣。
さすがに父も怒って抗議してくれたが、向こうが随分と年嵩だったせいか態度を改めることは無く、それからもずっとその調子で。
その言葉はそれ以降、私の心に暗い影を落とす。
勉強やスポーツでどんなに一生懸命頑張っても、
所詮美人には敵わないのだと。
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