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あちらの事情
しおりを挟むいきなり受けた謂れのない誹りに、戸惑いを隠せない私。
「やっぱり、その男とそういう仲だったんだ?」
「『そういう仲』とは、愛子ちゃんと一緒に冬物バーゲンへ行った帰り偶然にも内藤さんと再会して中華料理を食べた後『美味しかったよねえ、また今度会えるといいなあ』とか約束もしないまま解散しようとしていたことを指しますか?それとも別の意味が含まれますか?」
>香奈ちゃん、息継ぎして。
内藤さんのアドバイスに『すうはあ』と一呼吸入れていると、尚も大介さんが責めてくる。
「そいつは女を平気で弄ぶんだぞ?男慣れしていない朝日なんか平気で騙せるんだ」
「え?でもゴメンナサイ、大介さんだって私を騙してましたよね?人妻である奈々さんと腕を組んだままラブホテルから出て来ておきながら、今さら何も無かったとは言わせませんよ」
いつもは従順な私が反論したため、大介さんは激しく動揺しているようだ。
「俺は…そう、俺は相談を受けていたんだ!奈々さんが結婚生活に悩んでいるからと呼び出しを受けて…その、人目が気になると言うから仕方なくあのテのホテルに入ったんだよ!ほら、料金が安いだろ?…だからだよッ」
「嘘でしょ」
「嘘じゃないッ」
「相談だけなら、腕を組む必要は無いのでは?」
「必要は有る!」
「いったいどんな必要ですかねえ…」
「どんな必要かなんて答える必要は無いッ」
「はいはい、何かもうどうでもイイですけど」
さあ、ここで別れを切り出そうと決意したそのタイミングで、奈々さんが突然口を挟んでくる。
「あの…香奈ちゃん、このことは…ウ、ウチの旦那に言わないでくれる?こんなことに巻き込んで本当に悪いんだけど…」
それは不倫を認めているとも受け取れるのだが、そこを突くのはヤメておこう。
「ちなみに今日、コーチは何してるんですか?」
「…てる」
蚊の鳴くようなか細い声に『はい?!』と問い返すと、大介さんが代わりに返事をしてくれた。
「コーチ、また女子マネに手を出してるんだよ」
「ええっ?!」
「俺らが知ってるだけでもう3人目だ。遠征だとか合宿だとかすぐバレる嘘を吐いてさ、たぶん今晩も浮気相手と一緒だろうな」
「だ、で、もうコーチ40歳でしょ?」
「正確には38歳だよ。ほんと懲りないだろ?」
「そんなの、離婚すればいいじゃないですか…」
再び奈々さんがボソボソと答える。両親の大反対を押し切って結婚したので離婚は出来ないのだと。しかも前妻との間に3人子供がいるため、奈々さんとの間には子供を作らないという約束をコーチと交わしているそうだ。
うわあ…なんか泥沼チックだわ。でもまあ、よくある話よネ…などと、他人事な私に向けて大介さんは再び言う。
「分からないのか、朝日!お前もこの男と付き合っていたら奈々さんの二の舞になるんだぞ?!浮気癖はなかなか治らない…というか、そもそも人の本質なんてそう簡単には変わらないんだッ。こうなった今では俺と別れるつもりだろうが、だからと言ってその男と付き合うのは許さない。近い将来、絶対に泣くことになるからな!!」
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